- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
ゴルフ場不法投棄:県警が支配人逮捕
毎日新聞より記事を抜粋、転載します(このコラムは、実際の事件から廃棄物処理法の問題点を解説することが趣旨ですので、容疑者の氏名を削除しています)。
新発田のゴルフ場不法投棄:県警が支配人逮捕 連盟、処理法勉強会開催へ /新潟
新発田市のゴルフ場の廃棄物不法投棄事件で、県警生活保安課と新発田署は13日、ゴルフ場支配人を廃棄物処理法違反の(不法投棄)の疑いで逮捕した。支配人はゴルフ場の現場トップ。同事件の逮捕者は計6人となった。
逮捕容疑は、ゴルフ場の元大会準備室の工事責任者=同容疑で逮捕=らと共謀し、08年4月上旬、ゴルフ場所有の山林に不要帳簿や廃プラスチック約4立方メートル(1・6トン)を埋めたとしている。
同課などによると、バンカー用砂採取で大きな穴ができていた山林を選手権臨時駐車場として整地するにあたり、工事責任者と大会準備室長=同容疑で逮捕=が廃棄物を埋めることを相談。支配人とも打ち合わせて実行したとみている。
同署によると、支配人は否認しているという。事件発覚時、毎日新聞の取材には「捜査が入るまで廃棄物を埋めたことは知らなかった」と話していた。工事責任者ら5人は容疑を認め「(廃棄物処理の)経費節減のためにやった」などと供述しているという。
一方、事件を受けて県内37のゴルフ場で作る県ゴルフ連盟は今後、廃棄物の処理方法について勉強会を開くことを決めた。城山卓二事務局長は「事件の衝撃は大きい。廃棄物の扱いに認識が甘いところもあるかもしれないので、これを機に、法令順守を確認したい」と話している。
よく誤解をされている方が多いのですが
自己所有地だからといって、廃棄物を燃やしたり*1、埋めたりすることはできません。
どうしても、所有地内で廃棄物を燃やしたり、埋めたりしたい場合は
都道府県知事から、廃棄物処理施設の設置許可を取得する必要があります。
ちょっと燃やしたいだけ、あるいは年に1回埋めるだけ
という場合でも、原則どおり、廃棄物処理施設の設置許可を取得せねばなりません。
逆に、「施設の設置許可を取りさえすれば、焼却や埋立を行うこともできる」と言えなくもありません。
しかし、実際は処理施設の設置許可申請は大変複雑な手続きですので、
「ちょっとだけ燃やしたい」とか、「年に1回だけ埋めたい」という人が、許可を取るのはほぼ不可能です。
もっとも、そんな法律上の義務を知ることなく、ほとんどの人は焼却や埋立をやってしまいます。
法律の罰則を知らなかったとしても
不法投棄の場合は、「5年以下の懲役、または1,000万円以下の罰金」という、廃棄物処理法上最も重い刑罰が予定されています。
廃棄物を絶対に発生させない人・産業はありませんので、「廃棄物処理法」は日本で活動するすべての人・企業に密接な関わりを有する法律なのですが
新潟県ゴルフ連盟のコメントが、日本の現状を雄弁に物語っています。
「廃棄物の扱いに認識が甘いところもあるかもしれないので、これを機に、法令順守を確認したい」
簡単に逮捕されてしまう危険な行為なのに、その危険性を誰も認識せず、運を天に任せて廃棄物の「適当(適切ではなく)処理」をしているのです。
そう考えると、これはかなり根深い問題と言えます。
このコラムを書き続けることで、日本のおざなりな廃棄物管理態勢が、少しでもましになってくれればと思っております。
*1法的には「野外焼却」できる物と条件がありますので、絶対に焼却不可能というわけではありませんが、その具体的な条件等については、後日コラムで解説します