- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
ビジネスの立ち上げを含めた食品廃棄物の発生抑制策
食品廃棄物の発生抑制策の続きになります。
食品廃棄物の発生抑制をするには、廃棄物が発生しないようにする必要があります。
製造業なら製造工程を見直し、材料のロスを減らすなどの対策で、ある程度まで廃棄物の発生抑制を図ることは可能ですが、生きた食品を作る農業の場合はそう簡単にはいきません。
だったらどうするか?
コロンブスの卵的な発想ですが、「食品を廃棄しないようにすれば良い」ということになります。
現在は「廃棄物」として処分されているものが、廃棄物でなくなってしまえば、そのまま廃棄物の発生抑制になります。
そのための方法としては、農産物の廃棄処分を極力減らしていく必要があります。
現状では、コストと労力面を考えると、「廃棄処分」するしかないわけですが、コストと労力面でもっと有利な利用方法が生まれればどうでしょうか?
そうなれば、せっかく作った農作物を好き好んで廃棄処分する人はいなくなるでしょう。
次の課題は、「コストと労力」面で、「廃棄処分」に勝る方法とはどんなものになるかです。
リンゴなどの農産物の場合は、「ホタテの貝殻」とは違い、人間や動物が食することができるものです。*1
そのため、まずは、人間か動物にどうやって食べてもらえるかを考える必要があります。
傷ものや、いびつな形の野菜は、現状では市場に出荷されていませんが、栄養価や安全性は流通しているものとまったく変わりませんので、それをどのようにして食べてもらうかということです。
「もったいないから積極的に食べろ」という精神論では、現実問題の解決にはなりません。
このあたりを仕組みにして社会問題の解決を図ることが「ビジネス」につながります。
今回は、ブレインストーミングとして、「廃棄寸前食品の食品化ビジネス」の一例を示してみたいと思います。
ブレインストーミングですので、産地の現状とはそぐわない面が多々あると思いますが、発想のヒントとしてお読みいただければと思います。
案1
果物の生産地にジュースの加工工場を共同設置し、市場に出荷できない食品を利用したジュースを製造。地域の名産品として全国にアピール。
案2
都市部に住んでいる人に、「就労体験」として、作物の収穫作業を手伝ってもらう。教育事業として、学校単位での事業化も有効。収穫してもらった作物のうち、傷もの(食べられるものに限る)を自由に持ち帰ってもらい、産地直送の味を堪能してもらうとともに、食品のありがたさを実感してもらう機会とする。
案3
人が食べつくせない食品の場合は、案1と同様、産地に飼料製造工場を設置し、飼料の原料として食品を再利用。出来上がった飼料は、周辺の畜産農家の方が有り難く利用。リンゴを食べさせた豚は美味しくなる評判(データも必要)ができ、農家と畜産農家の双方にメリットが発生する
そのほかにも色々な案が考えられると思います。
現在の食における「大量生産、大量消費、大量廃棄」がいつまでも成り立つわけはありません。
この「負のループ」を断ち切る、新しいビジネスアイディアの出現が待たれています。
もし、そういった新しいビジネスアイディアが実現すれば、「農業の在り方」、「食に対する接し方」のすべてが良い方向に変わることでしょう。
このコラムが、そのアイディア実現のきっかけになれば幸いです。
*1ホタテの貝殻の再利用についても、近年事業化がなされ始めたところです