- 尾上 雅典
- 行政書士エース環境法務事務所
- 大阪府
- 行政書士
対象:企業法務
- 尾上 雅典
- (行政書士)
- 河野 英仁
- (弁理士)
食品廃棄物の発生抑制策
先日お伝えした、リンゴ大量不法投棄に見る日本の農業問題の続報をお伝えするとともに、食品廃棄物の抑制策に関する私見を述べたいと思います。
まずはニュースの続報から
河北新報 「余剰リンゴ処分困った 不法投棄も表面化 青森」
弘前市は2月末、2008年度予算の予備費約400万円を、堆肥化のための薬剤費助成に充てた。3月初めから半ばまで農家の申請を受け付けた結果、2万箱分の申し込みがあった。
市の推計では、農家在庫の半数に当たる15万箱は流通に乗らずに処分される可能性が高い。市りんご農産課は「まだ売ろうと思っているのかもしれないが、不法投棄などがあると困るので、できれば堆肥化してほしい」と呼び掛ける。
廃棄リンゴの堆肥化は、確かにリンゴのリサイクル手法の一つではありますが、経済効率や資源効率を考えると、もっとも望ましいリサイクル方法というわけでありません。
現代のリンゴ農家は、農薬や堆肥を手間ひまかけて施し、農園に通うためには自動車などを使用せざるを得ません。
そうして丹精込めて作り上げたリンゴを大量に堆肥にするということは
石油を消費して、せっせと堆肥を作り上げるようなものです。
更に、堆肥化のために税金まで投入するわけですので、経済的にも非効率です。
と、外野が批判をするのは簡単です。
リンゴの産地としては、目の前の余剰在庫を速やかに処分する必要があり、
現状としては、堆肥化がもっとも簡易迅速に処分できる方法となっています。
理想論だけで問題を解決することは不可能ですので、私もリンゴの堆肥化を全否定はしません。
ただし、あくまでも堆肥化は最終手段です。
いきなり「切り札」を切る前に、もっと他の手法を増やすことを検討する必要があります。
日本の農政は(農政ばかりではありませんが)、「手元の在庫をとにかく処分」といった、かなり狭い範囲の「局所最適」のみを志向し、「全体最適」を考慮していないように見えます。
今こそ、不法投棄という不祥事を問題解決の端緒とし、「全体最適」のための解決策を検討すべき時期ではないでしょうか。
そのためには、「全体最適の解」とは何かを定義する必要がありますが、
「循環型社会形成推進基本法」でもうたわれているとおり、食品廃棄物の「発生抑制」を第一とし、その次を「有効利用」としたいと思います。
その具体的な手法については、次回ご説明します。
※全体最適について考える上で参考になる書籍
『奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録』
執筆者:尾上雅典 産業廃棄物許可コンサルティングセンター