日経記事;『ソニーの自動運転EVを解剖 スマホ流開発の潜在力』に関する考察 - アライアンス・事業提携 - 専門家プロファイル

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日経記事;『ソニーの自動運転EVを解剖 スマホ流開発の潜在力』に関する考察

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皆様、

こんにちは。グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。

 

3月30日付の日経新聞に、『ソニーの自動運転EVを解剖 スマホ流開発の潜在力』のタイトルで記事が掲載されました。

本日は、この記事に関して考えを述べます。

 

本記事の冒頭部分は、以下の通りです。

『ソニーが、電気自動車(EV)「VISION-S(ビジョンS)」の公道実験に早くもこぎ着けた。スマートフォンの開発手法やソフト資産を存分に生かす。車両の中身に迫ると、自動運転センサー開発の一環にとどまらず、車両全体の統合制御に奮闘する姿が浮き彫りになる。スマホの王者である米アップルがEV開発を模索する中、ソニーが部品メーカーの立場を超えて自動車メーカーの領域に踏み込む狙いを読み解く。。。』

 

何度か本ブログ・コラムでは、自動運転機能付EVの開発・実用化について述べています。これは、この新規自動車が、既存のガソリンエンジン車の事業基盤を急速に破壊・再構築する可能性が極めて高いことによります。

 

このような事業基盤の急速なシフトを予想するのは、私が会社勤務時に、米大手IT企業の事業展開により、既存の家庭向けAV機器の事業基盤を急速に破壊・再構築されて、あっと言う間にアップルやマイクロソフトなどに市場を奪われた経験をもつことによります。

米大手IT企業の中で、グーグルが自動運転機能付EVの開発・実用化で先行しています。ここに、EVの専業メーカーであるテスラモーターズ、アップルが市場参入しようとしています。

 

テスラモーターズは別として、グーグルやアップルは、自動車メーカーになろうとは考えておらず、自動運転機能付きEVを、動く電子端末機器としてとらえています。つまり、動くスマートフォンとしてとらえています。両社のビジネスモデルは、自動運転機能付きEVを新規のプラットフォームにしたサブスクリプション方式、もしくは宣伝広告の売上拡大です。

 

自動運転機能付きEVは、インターネットの新規出口端末として位置付けられます。アップルやグーグルは、スマートフォンを自ら事業化しています。アップルは、iPhoneの本体を自ら開発・実用化しており、グーグルはアンドロイドOSを、スマホメーカーに提供しています。

 

アップルは、自前でスマホ本体の製造工場をもたず、ファブレスでiPhoneを市場に供給しています。アップルが自ら行うのは、iPhoneの商品企画、デザイン、開発、設計です。アップルは、この一連のプロセスから、競争力があり魅力的なスマホを市場に提供しています。

 

従来の日本国内の家電メーカーは、競合商品に対して差別化・差異化をおこなうため、商品企画、デザイン、開発、設計、製造、販売までの一気通貫した垂直統合方式を採用していました。また、ここに強みをもっていました。

 

これに対して、アップルは対照的な水平分業方式を採用して、他社との協業・連携(アライアンス)のやり方で、国内家電メーカーを圧倒しました。アップルの絶対的な強みは、商品企画、デザイン、開発、設計のプロセスから生まれています。

 

グーグルやアップルは、この水平分業方式で自動運転機能付きEVを市場に供給することになります。

 

ソニーが試作品として開発しました自動運転機能付きEVは、この水平分業方式で作られています。ソニーは、2020年12月からオーストリアで公道実験を始めました。ソニーの今までの説明では、ソニーは現時点では、自ら開発しているのは一つの理由として、主力事業である画像センサーを、自動車で使ってもらうための画像センサーの要求性能を見定めることにあるとしています。

 

ソニーが自動運転機能付きEVを、最終的に商品として市場に提供するかどうかは不明です。ソニーが、自動運転機能付きEVを市場投入する場合、アップルと同じようなやり方で市場参入する可能性があります。つまり、ソニーが既存自動車メーカーの事業基盤を急速に破壊・再構築する可能性があります。

 

先日、iPhoneの製造受託を手掛ける台湾・鴻海精密工業がEVプラットフォームの開発に乗り出すと発表しました。これは、鴻海が水平分業方式でEVを製造するための、プラットフォームを市場に提供することを意味します。

 

自動運転機能付きEVを開発・実用化する企業は、自動車メーカーに対してEV本体を提供する企業として協業・連携(アライアンス)先とする必要がなくなります。つまり、より多くの企業が、自動運転機能付きEVの供給先となれます。

 

アップルやソニーが、自動運転機能付きEVを市場投入する場合、徹底的な水平分業方式を採用して、スマホのようにとんがったデザインや性能、機能などで勝負するやり方になると推測しています。

 

この新規競合勢を迎える既存自動車メーカーが、もし垂直統合方式にこだわって自動運転機能付きEVの開発・実用化を行うと、既存事業基盤を急速に破壊・再構築されるリスクがあります。

 

トヨタ自動車の動きをみていると、このリスクを十分に理解して、積極的に水平分業方式を採用した事業展開のやり方を採用しようとしています。

 

トヨタにとって厄介なのは、EVを新規に提供する企業が既存のガソリンエンジン車の事業基盤に左右されないことです。つまり、ケレンミなく新規市場に参入できることです。

 

現時点では、自動運転機能付きEVの勝利者を予測することは難しいです。はっきりしているのは、既存自動車メーカーが大きな影響を受けることです。

 

今後、トヨタ、グーグル、アップル、ソニーなどの動きについて注目していきます。

よろしくお願いいたします。

グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本 雅暁

 

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