- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
こんにちは!介護経営コンサルティング・介護施設紹介「株式会社アースソリューション」の寺崎でございます。
本日は、2021年度介護報酬改定の概要として、「制度の安定性・持続可能性の確保」というテーマを取り上げます。
年内最後の投稿となります。
社会保障費は膨れ上がり続け、この先も間違いなく増え続ける中、制度自体が持続できるのかという議論は、随分前からされてきています。
国は抜本的な社会保障費の削減をずっと模索し、旧民主党政権時代に可決された「社会保障と税の一体改革」において、社会保障費の財源に充てるという条件で消費増税も行われました。
しかし今年は、新型コロナウイルス感染症拡大が止まらず、各サービス事業者は稼働率の低下や人員確保のますますの深刻化、さらにはかかり増し経費の増大があり、国もそれを臨時的に支援するために緊急包括支援交付金を支給することにもなりました。
財務省は報酬改定時のマイナス改定を本気で進めたかったのですが、結果としてそれもできず、プラス0.7%という形で決定した次第です。
しかし今回の改定は、プラス改定になったといって喜んではいられません。非常に厳しい改定になることは間違いないからです。
先日公表された審議報告の概要において、制度の安定性・自足可能性の確保について、こう記載されていました。
「必要なサービスは確保しつつ、適正化・重点化を図る」と。
大きな改正点についてご紹介しますと・・・
今回、サービス付き高齢者向け住宅等で、自社(かつ、同一建物内)で介護サービスを展開する事業者にとっては、非常に厳しい改定になります。
同一建物減算適用時において、区分支給限度額の計算方法が厳しくなります。通常の区分支給限度額よりも低い額で算定することとなり、結果として通常の限度額の90%以上算定しているような法人にとっては、大幅な減収は避けられないこととなります。
前回の改定においても、同一建物減算の減産率が高くなり、大きなダメージを受けました。今回はそれ以上のダメージを受けそうです。
もう、数年前に高専賃からサ高住に移行した当初のようなビジネスモデルは、成り立たなくなるでしょう。
今年はコロナもあり、実地指導もあまり進んでいないところもありますが、来年度はサ高住への立ち入り検査等が厳しくなることが予想されます。
訪問看護についても、セラピストによるサービス提供について大幅な見直しがかけられます。
具体的には、サービス提供回数の制限を設けたり、単位数を下げたりすることとなりそうです。
また正式に新報酬単位が出ていませんので何とも言えませんが、何らかの制限がかかることは確実です。
介護給付費分科会では、人員基準の見直し(看護師の人数を全体の6割以上とする)の素案について議論されましたが、医師会をはじめとする業界団体の猛反対を受け、今回は見送られることとなりました。
しかし、見送っただけで、その次の改定ではまた議論に諮られることになるでしょう。
リハビリに関連して、介護予防のリハビリテーション(機能訓練ではない)について、長期利用の場合の見直しが図られます。リハビリについて「卒業」という考え方が今後強く求められることとなります。
その人なりのゴールを設定し(すでに行っていますが)、達成した利用者様には利用を終了してもらい、自立した生活を目指すということ。
リハビリといっても、継続することにも十分意味があるわけで、高齢者は現状維持をするのも至難の業。卒業させて本当に自立度が高まれば最高で、それを当然目指すわけですが、現状は理想通りにもいかない。
ですので、急性期や回復期ならともかく、維持期以降は継続と卒業の区分けは困難だと思います。
いくら国がガイドラインを示したところで、利用者様は人間ですし、住環境も家族状況も全く違うわけですから、簡単にはいかないと思うのです。
介護職員処遇改善加算ⅣとⅤは、1年間の経過措置期間ののち廃止となります。
国は、最低でも処遇Ⅰは取ってほしい意向で、特定処遇改善加算の取得も推奨しております。
もう、事業所も最上位の加算を算定していかないと、職員や求職者に選んでいいただけなくなります。
弊社のクライアント様にも、来年度はすべて特定処遇改善加算の取得をするようご案内し、未整備の法人様には必要な支援をするつもりです。
介護療養型医療施設は、随分昔にすることが決まっています。
「介護医療院」や「療養型老健」への転換を促していますが、思いのほか進まない。
そこへ、介護医療院への転換をもっと強化すべく、現状の介護療養型医療施設の報酬単位を見直すこととなります。まあ、下げるのでしょう。
生活援助の訪問回数が多い利用者のケアプランについて、現在は届け出をして検証(当該ケアプランのサービス位置づけが適切か否か)することとなっていますが、事務負担も配慮した上で検証方法や届け出頻度の見直しを図ります。
区分支給限度基準額における当該サービスの割合が高く、かつそれが全体の大部分を占めているケアプランについて、今後さらに狙い撃ちされると思います。
国は今後、要介護1や2の軽度者に対しても、総合事業に移行させようとしています。また、利用回数制限を生活援助だけでなく、身体介助にも目を向けて見直そうとしています。
これが実現してしまったら、私は訪問介護事業の崩壊につながると危惧しています。
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)の補足給付の割合も見直しがかかります。
所得における段階(現状は第一段階~第四段階。実はもっと上もある)を細分化し、所得が少なくてm金融資産の保有額に応じて、補足給付を減らします。
施設の事務負担だけでなく、利用者様の経済的負担も増えてまいります。
本来なら、一刻も早く介護サービスの自己負担割合を2割に増やしたい。
介護保険料は地域保険者が決めますが、増えに増えている。もう、40歳未満の方にも負担していただかないと厳しい。総合事業化も進めたいし、居宅ケアプランの有料化にも踏み込みたい。
これは、厚生労働省の本音です。
しかし、冒頭にも挙げた通り、全部をすぐに進めるのは不可能です。
必要なサービスには報酬を拡充するということも当然必要なので、不満もありますが仕方がない部分もあるのかな、と言ったところです。
以上、5回にわたって連載いたしましたが、報酬改定の概要については今回で終了となります。
最後に、本日にで2020年も終了となりますが、本コラムをお読みいただきありがとうございました。
2021年も厳しい1年なることと思いますが、ますます邁進してまいります。
コロナで大変な状況ではありますが、何とか乗り切っていきたいと思います。
皆さまにとって、2021年がよき1年となりますことを祈念申し上げます。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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