- 寺崎 芳紀
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
- 東京都
- 経営コンサルタント
-
03-5858-9916
対象:経営コンサルティング
- 戸村 智憲
- (経営コンサルタント ジャーナリスト 講師)
- 荒井 信雄
- (起業コンサルタント)
こんにちは!介護経営コンサルティング・介護施設紹介「株式会社アースソリューション」の寺崎でございます。
今回は、2021年度介護報酬改定の概要④「介護人材の確保・介護現場の革新」というテーマでコラムを書かせていただきました。
大きなポイントとして、
①介護職員の処遇改善や職場環境の改善に向けた取組の推進
②テクノロジーの活用や人員基準・運営基準の緩和と通じた業務効率化・業務負担軽減の推進
③文書負担軽減や手続きの効率化による介護現場の業務負担軽減の推進
の3つが掲げられています。
①について、特定処遇改善加算について取り上げております。
取得率が6割程度であることを踏まえ、今回の改定では処遇改善加算の加算率を上げないようです。
その代わり、積極的に特定処遇改善加算の取得を推進すべく、活用しやすいルールに改めます。
具体的には、平均の賃金改善額の配分ルールにおける「『経験・技能のある介護職員』は『その他の介護職員』の『2倍以上とすること』から『より高くすること』」に改めることになります。
これにより、随分加算が取得しやすくなる、という算段です。
もう、介護事業所は最低でも「加算Ⅰ+特定処遇改善加算」を取得していかないと、本当に厳しくなります。介護職員を留めておくことができず、他事業所に逃げられてしまうかもしれません。
また、特筆すべき点として、ハラスメント対策の強化が求められます。
以前コラムでも書きましたが、もっぱら利用者からのハラスメント対策がメインとなっているようです。
しかしそれだけでなく、事業所内のパワハラ等の対策も、同時並行で進めないといけないのではないかと、個人的には思います。
さらに、育児や介護との両立を可能とするための環境整備についても、今回改定に盛り込まれました。
育児や介護を行う介護職員が、育児休暇や介護休暇を取りやすくなります。休暇を取得しても、人員基準に影響しにくくなります。具体的には、代替職員の確保や時短勤務となっても、当該職員の雇用が継続される限りは「常勤」として取り扱うことで、離職防止や定着促進を図る形になるようです。
これは非常によいことだと思います。私も過去に、常勤のケアマネさんが産休育休を取得することとなり、その方が大変優秀であったこともあって、代替職員の確保に苦労したことがあります。
産休育休は労働者の当然の権利であるのですが、反面戦力としては期待できなくなってしまうので、経費が余計にかかるだけでなく人員基準のことまで気にしなければならず、本当に頭を悩まされました。
お子様の出産は大変おめでたいことであり、私も管理職として最大限配慮はしたつもりですが、心のどこかで素直に祝福し切れていない自分が、当時いたように思います。
しかし今回の改定では、少なくとも「人員基準」については深く考えなくてよくなるので、それだけでも非常にありがたいことであります。もっとも、新基準の具体的な内容次第ではありますが・・・
②について、テクノロジーの積極活用が推進されます。
特養等で、見守り機器等の導入を行った事業者には、夜勤の人員基準の緩和策が採られます。
今回は新型コロナウイルス感染対策としての側面もあり、テレビ電話等の活用により各種会議の負担軽減についても、恒久化されるようです。
一見すると良いように思えますが、何とも言えませんね。
まだ、サービスごとの報酬単位が出ていないですし、基準を緩和することで報酬を下げてくるかもしれません。それでは意味がほとんどなくなってしまいますから。
基準緩和による人件費削減額と、報酬減があった場合のマイナス部分との比較が必要になります。
それ以上に、人員配置を緩和することで、本当に業務負担が軽減されるのかも、微妙です。
見守り機器は、それなりに役に立つとは思いますが、状況が不明な中本当に業務負担が減り、安全も相応に担保されるか。
もちろん、人の目も完璧ではないわけなので、いろいろ言ってもキリがないのですが、見守り機器を導入することを推進するならば情報提供は必要ですし、事業所も導入を決断する上で情報を入手・検証をしなければなりません。
吟味せずに闇雲に飛びついてしまい、その事業所の現状に合わなければ悲惨な目に遭うだけです。
今回は認知症GHを中心に議論されましたが、GHに入居する方は本当に多様です。
基本的には、認知症GHはADLの自立度が高い方が入居されていますが、ADLが高いから介助が楽ということにはなりません。
また最近では、看取りも行うGHも増えてきています。国も看取りについては求めている部分もあり、施設においても長期にわたって入居されている方を、終末期になったからと言って退居を求めるのは忍びないということで、施設を上げて看取りに取り組まれているというケースもあると聞きます。
看取りは、職員のスキルや経験値を上げる意味でも、大変有意義である反面、相当の努力が必要です。
そういう方が入居されている施設において、夜勤を行う職員の不安たるやいかばかりかと察します。
そういう現場の状況を踏まえての基準緩和であると信じたいです。
間違っても、人員基準の緩和と引き換えに、報酬を下げるというようなことにはならないでいただきたい。
③について、私は笑うしかないです。
こんな程度の取組で、現場の文書負担軽減になると本気で考えているとしたら、頭の中がお花畑だと言わざるを得ません。
申し訳ありませんが、この程度では文書負担は1万分の1位しか軽減されない。全くならないと言ってもよい。何故なら、実際に介護の現場にいる介護職員にとっては、全く関係のない内容だからです、
こんな程度の改定なら、やらない方がマシです。これで「軽減策を講じた」などと言って威張らないでいただきたいです。
少々グチも入ってしまい、申し訳ありません。
本件の概要としては、こんな感じです。
次回は、⑤制度の安定性・持続可能性の確保 について取り上げます。
このコラムの執筆専門家
- 寺崎 芳紀
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- 株式会社アースソリューション 代表取締役
介護事業所の開設から運営まで、オールワンでお手伝いいたします
有料老人ホーム施設長・訪問・通所介護管理者・老健相談員、事業所開発等の経験を活かし、2007年7月に弊社を設立しました。介護施設紹介サービスをはじめ、介護事業所の開設・運営支援等を行い、最近では介護関連の執筆活動にも力を入れております。
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