- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
(Developmental Psychology: Infant, children and adolescentsより)
親友のDarrylとの待ち合わせ場所、高校の建物を見渡せる丘でLouisは物思いにふけっています。 二人の少年は、昼休みに会い様々な話をすることが特に最近多くなりました。 この丘からは、何百人もの高校生が学校の建物から芝生のグランドにあふれ出て来るのがよく見えます。
今日、Louisが考えていることは、政治の授業で学んだことです。
ーもし、自分がカナダではなく中国で生まれ育っていたら。。。?
やはり、この丘に座っていたとしても、使っている言語は中国語、名前も違う、世界の出来事を考えるのも全く違う見地から。
Wow!
Louisは深く考え込んでしまいました。
ー自分が”Who I am” (自分であること)は奇妙な運命のいたずらによって決まるんだ。
気がつくとDarrylが目の前に立っています。
ー丘のふもとからずっと呼んでいたのに!
最近何かぼんやりと上の空になっていることが多いね。
どうした?
Louis
ーうん、色んなことを考えてる。
自分が誰で、何を信じているか、とか。 “what I want” “what I believe in”
将来何がしたいかなど漠然としていて形がないし、何を考えてもはっきりした答えがない。Darryl, 君はどう?
Darryl
ーしょっちゅうだよ。
自分でどんな人間? “I wonder what I am really like.”
将来誰になるのかな? “Who will I become?”
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この場面が如実に現しているのは、脳が最終発達段階に差しかかった10代の高校生の日常です。
“The development of identity” (自分が誰か?)の理解が大きく変わる脳の大切な時期を経過中の人類共通の葛藤です。
身体的にも劇的な変化を経験し、この世界での自分の場所、行き先を真剣に考えるようになるのが高校時代です。
遠い未来で自分がどうなっているかも、クリティカルシンキング思考の出来るカナダの高校生たちは、仮定し(Hypothetically) 考える能力を使い心に浮かぶ多くの悩みを言葉にして考え、親しい友人と共有しながら成長します。
その葛藤を同様の価値観で共有出来るのが「友達」です。
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高校留学でカナダ人の友達がいっぱい出来て、「え?日本から来たの?」と人気者になる留学生活を夢見てしまったみなさんへ。 (大間違いでしたよね)
上のような話を留学先現地の高校生と語れますか?
クリティカルシンキングを使い”Who I am”を、同級生と英語で普通に語れますか?
いや、もっと何歩も戻りましょう。
今までに自分でLuoisやDarrylのように考えたことはありますか?
学校で習ったことがきっかけで、それを自分と仮定し考えを広げたことはありますか?
その考えを留学先の高校生と英語で自由に語ったことはありますか?
ないですよね。
日本の高校生も、そんなことは考えずとにかく受験勉強することだけが生活でしょうね。
「みんな同じ考え、主義、信条」を持つことが良しとされる日本社会では、自分のIdentityなどで悩む必要もないかも知れません。
「みんなそうするから」のルートにさえいれば、そのまま何も考えなくても人生が流れていくからです。
そんな日本とカナダとは正反対であることを知らずに「夢留学」をしてしまいましたか?
カナダで友達が出来ないと悩む高校留学生に何度も聞いたことがあります。
「カナダの高校生は普通こんな話題で真剣に議論するよ。ところで、日本では友達と何を話してたの?」
ほとんどの日本人高校生は答えることが出来ませんでした。
「え?えぇと、普通のこと。K popとか。。。」
そんな日本で生まれ育ち、日本語でも友達と抽象的な概念を語ったこともなく、英語も満足に理解出来ないのに、カナダの同級生と”Identity”について”Future self”についてなど話せると思っていましたか?
いや、カナダの同級生の関心が”Who I am”であることなど知らなかったですね。
カナダの同級生たちはChildhoodからAdulthoodへの狭間で悩んでいます。
どうすればスムーズに大人になれるかを真剣に毎日考えています。
そこから出てきた答えによって、大学で何を学ぶかを決めて行きます。
どれだけ学力があり、どんなスキルをつければ、どうやって食べて行け、実り多い大人になれるかを考え始めるカナダの高校生たちは、怯えているとも言えます。
自分で責任をとらなければいけない自分の将来に踏み出す怯えです。
その怖さを、今まで経験を共有して来た仲間と話合い、お互いに励まし合い前に進んでいるのが留学先の高校生です。
妙に子供っぽい(カナダの高校生の観察です)日本人高校生になど目を向ける時間も余裕も興味もないのが現実です。
人生の非常に大切な時期を”Who I am”を求めて葛藤するカナダの高校生には、日本からの留学生は目に入りません。
透明人間のように、全く見えてもいないと思います。
言葉も共有していない、過去の経験も共有していない、現在の日々の経験も共有してない、クリティカルシンキングのかけらも感じられない、幼い幼い日本人高校留学生に興味など持てないのは当然です。
人生のこんなに大切な時期に、なぜこの子たちは外国であるカナダにいるの?
しかも英語もクリティカルシンキングも出来ないのに、母国語でもない拙い英語で、この子たちは一体何しに来たの?
と、時折感じることはあったでしょうが、自分たちとは全く異質の「誰か」としか映っていないのが残酷な現実です。
特にこのパンデミック。
カナダの高校生の中に入ることも、クリティカルシンキング社会との接点も何もない「夢留学」の残骸が、今高校留学生が置かれている場所です。
未だに相談の多い「高校留学したいです」予備軍の親子のみなさん。
経験も言語も価値観も共有する友達の出来る高校時代を失うために、カナダに来ますか?
何のために?
Don’t.
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このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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