- 山本 雅暁
- グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 代表
- 神奈川県
- 経営コンサルタント
対象:新規事業・事業拡大
- 下村 豊
- (経営コンサルタント)
日経記事;『日産・ルノー連合、次世代車技術で新会社 設立協議』に関する考察
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こんにちは。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー 山本 雅暁です。
12月1日付の日経新聞に、『日産・ルノー連合、次世代車技術で新会社 設立協議』のタイトルで記事が掲載されました。
本日は、この記事に関して考えを述べます。
本記事の冒頭部分は、以下の通りです。
『日産自動車と仏ルノー、三菱自動車の日仏3社連合は、人工知能(AI)やつながる車など次世代車に使う先端技術を共同開発する新会社を設立する方向で協議に入った。3社の技術や人材を持ち寄り、研究費のかさむ次世代車の開発体制を効率化する。3社でトップを務めたカルロス・ゴーン元日産会長の逮捕から1年、新たな協力関係を構築する動きが具体化し始めた。。。』
日産が、前経営者の逮捕から1年経過してから、ようやく新規事業に対する対応の検討を開始したようです。
何度か本ブログ・コラムで書いていますように、自動車産業は大きな変革期に入っています。トヨタのトップは、「100年に1度の変革期に直面している。」と表明して、大きな危機感をもって次世代自動車の開発・実用化に注力しています。
国内自動車メーカーの中で、次世代自動車の開発・実用化をいち早く、かつ積極的に行っているのは、トヨタのみです。
ホンダは、既存自動車の開発・実用化を今まで自前主義で行ってきました。このやり方は、国内製造事業者が、得意としてきた「垂直統合方式」です。
国内製造事業者の競争相手が、同業の製造事業者であれば、全てのコア技術を内製化して競争力の源泉にすることで、勝ち組になるやり方が通用しました。
しかし、私が勤めていました大手AV家電メーカーは、この垂直統合方式のやり方を継続して行った結果、「水平分業方式」を積極的に取り入れた米大手IT企業(マイクロソフト、デルなど)との競争に負けました。
米大手IT企業は、「水平分業方式」を梃子にして、既存事業基盤を急速に破壊・再構築するやり方で、欧米アセアン地域で勝ち組になっています。
「水平分業方式」を言い換えると、オープンイノベーション;他企業との連携・協業(アライアンス)になります。
当面の次世代自動車は、自動運転機能付EV(電気自動車)です。この自動運転機能付EVは、既存のガソリンエンジン車のノウハウを必要としません。
国内自動車メーカーの強力な競争相手は、米大手IT企業のグーグルになります。グーグルは、1兆円規模の投資を行って、自動運転機能付EVの開発・実用化を積極的に進めています。
グーグルは、決して自動車メーカーになる意思をもっていません。自動運転機能付EVは、走るインターネット接続された電子端末機器として位置付けています。
自動運転機能付EVは、自前のインターネットサービス事業を拡大するための、出口端末機器の一つとして位置付けられています。
グーグルは、自動車メーカーであるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と提携しており、ここから自動車本体を提供してもらう可能性があります。
グーグルは、自前の自動車工場を持たないファブレス企業として、自動運転機能付EVの開発・実用化を進めています。
このやり方は、かって国内大手AV家電メーカーが、米大手IT企業との競争に負けた構図と同じです。
国内自動車メーカーの中で、トヨタがいち早くグーグルとの競争に危機感をもって、1兆円単位の投資を行って、インターネット、IT、IoT、人工知能(AI)対応を行って、オープンイノベーションのやり方を取り入れて、自動運転機能付EVの開発・実用化を進めています。
現時点では、他の大手国内自動車メーカーであるホンダの動きは、新聞記事を見る限り明快ではありません。
本日の記事にあります日産も、同じです。前経営者が退任した後、新聞記事を見る限り、自動運転機能付EVの開発・実用化について、積極的な動きを取っていませんでした。
日産は、資本提携先の仏ルノー、三菱自動車と3社共同で、自動運転機能付EVの開発・実用化を行う新会社を立ち上げるようです。
3社は、巨額投資を必要とする自動運転機能付EVの開発・実用化を、共同で行うことでリスク分散を行うとしています。
この3社連合が有効に機能するかどうかは、迅速な経営スピードで、オープンイノベーションのやり方を取り入れて行けるかどうかどうかにかかっています。
しかも、自動車市場は、所有から共有・シャアリングに大きく移行する可能性があります。本日の日経記事に、「2030年、車の買い手は企業が5割超カーシェア台頭 開発・税制…新たな仕組み模索」のタイトルで記事が掲載されています。
日産は、自動車の市場規模が縮小し、自動車本体がガソリンエンジン車から自動運転機能付EVに移行する中で、競争力を保ち、収益の維持・拡大を実現するための経営努力が必要になります。
今後、トヨタと共に、日産の動きにも注目していきます。
よろしくお願いいたします。
グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 山本雅暁
このコラムの執筆専門家
- 山本 雅暁
- (神奈川県 / 経営コンサルタント)
- グローバルビジネスマッチングアドバイザー GBM&A 代表
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