- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
日本の高校生の英語圏留学がなぜとてつもなく困難であるのか。
極端に異なる英語圏と日本の教育では、1歳〜15歳までの子供たちがどう訓練されているかには驚愕に値する差があります。
その差を乗り越えない限り、高校留学はお金と時間の無駄に終わる無謀な試みでしかないと考えます。
【質問】
こんにちは。
私はアメリカかカナダへの高校留学を考えています。
私の留学の理由として
日本の高校(私の通っている高校)では、「大学の為に」「とにかく大学」といった感じで高校に入れば大学受験に特化してクラスを分け、授業も「学ぶこと」ではなく受験や偏差値の為に教えていることが納得できず、アメリカの教育制度を知った時に、必須科目と自分で選択できる科目ができ、自分のやりたいことを見つけやすい学びをできること、とにかく暗記ではなく、どのように考えるかを尊重することにとても惹かれたから。
【回答】
「暗記ではなく、どのように考えるかを尊重する教育制度」に惹かれての高校留学希望動機。
よく理解出来ますし、日本の教育制度の中で息苦しさを感じている若者にも大いに同情しています。
これを高校留学の理由にすることにも、筋が通り目的のある留学だと思えてもしまいます。
しかし。
大きな落とし穴があることに気がついていますか?
カナダ在住、1994年以来、カナダで日本からの高校留学生の支援を行っています。
「受験や偏差値から真の『学び』へ」と、留学したのはいいものの能力が届かず立ち往生する留学生を数多く目撃して来ました。
学習能力が低いわけでも、やる気がないわけでもありません。
一生懸命頑張るいい子たちです。
それでも、前に進めません。
立ち往生してしまいます。
なぜなら。
「カナダで個性をみつけたい留学」コラムにも書きましたように、日本の社会・教育では、子どもたちが自分の考えを組み立て、論理的・具体的・客観的・科学的・批判的に展開し表現する訓練は全く行われていません。
(これを正にクリティカルシンキングと呼びます)
今まで「意見」とは何かを考える機会のないまま育った日本の高校生には、「自分のやりたいことを見つける」どころか「どのように考えるか」の完成段階に入った高いカナダの高校レベルではチンプンカンプン。
英語能力の問題もありますが、根本的に「考えられない」Default 状態のまま迷い続けます。
受入れ高校の教師たちも、まさか日本からの高校生が、今まで「自分で考えること」をしたことがないなどとは夢にも思いません。
英語力がない、学習能力が低い。。。と低い評価を下します。
「カナダ高校留学の実態」eBookにも描写してますが、「何年経ってもESL,ELLから上げてくれない」問題は、ここにも根源があると思います。
そんな実感を留学前にぜひ親子で体験して下さいと、開講したのが[English10 for Japanese Students]
実際にカナダのEnglish10(大学進学出来る高いレベル)で行われている授業内容・宿題・クイズをオンラインコースにしてあります。
ESLに学費を払う高校留学ではなく、「留学をEnglish10履修から開始」を助ける意味もありますが、それよりも「自分で考える」とは一体何を意味するのかを実感してもらうために提供しています。
例えば:
10ページほどのShort Storyを読みこんな問題に答えます。
“Identify the point of view of the story. Why do you think the author chose this narrative viewpoint? “
じっくりストーリーを理解し、文化背景を考え、使用されている文法から状況を把握し、登場人物の感情をくみ取り、表面的なことではなく、実は何が示唆されているのか(Inferences, Implications)も理解し、更に使われているLiteracy Divicesから筆者の目的を分析する。
(*Literacy devicesとは英語を書く時に必須の修辞法。カナダでは中学生でほとんどを習得。日本からの留学生にはほとんどこの知識はないのでEnglish10オンラインにも含めています。)
問題集の答えを覚えるのではないですよ。
決まった正解もありません。
自分の考えを論理的・客観的・具体的に、正しい文法を使い述べて行くことがEnglish10のレベルです。
日本人高校生からの答えで非常に多いのが:
I don’t understand the main character.
ストーリーから根拠となる部分を抜き出し、自分の考えを論理的に証明していく過程が必要なのですが、単なる登場人物への感想に終わっています。
“I think the story shows love. People should love each other.”
と、これだけで、ストーリーのどこに自分の考えの根拠があるのか、なぜ”the point of view of the story”が”love”というひとつの言葉に集約されてしまうのかの具体的な説明もありません。
また、筆者のViewpointを客観的に分析して答えるところを、自分の主観”People should love each other.”に置き換えてしまっています。
オンラインコースですのでサイト上から様々な工夫をしてコメント・アドバイスしますが、English10の思考レベルからの隔たりを感じます。
一言で言うと「薄い」です。
日本の学校でもある程度の成績を取り、真面目に頑張る生徒でも相当の苦労をする、カナダの教育と日本の教育との大きな大きなギャップです。
高校留学に絶対必要な能力。
「クリティカルシンキングを使い、自分で考える訓練を十分を受けていること」
ここが埋められない落とし穴であることを親子で認識したあと、真剣な準備を始めて下さい。
[English10 for Japanese Students]を試したい方は、大歓迎です。
Lesson Oneは無料体験レッスンになっていますので、ぜひ現在の自分の立ち位置を確かめてから「高校留学」を親子で考えるきっかけにして下さい。
Cheers!
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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