- 大澤 眞知子
- Super World Club 代表
- カナダ留学・クリティカルシンキング専門家
カナダの田舎「小さな町の留学」を通して目撃した「1年留学制度」で送り込まれる日本人高校生たち。
迷子を見ているようで心が痛みましたが、まだまだ予備軍が多いんですね。
親たちが「留学の嘘」に気づくのは一体いつになるのでしょうか?
(質問)
私立高校1年生で、一月の後半からの1年間カナダの高校に留学しにいきます。
英検を準二級しか持っていなく、学校でも英語は得意な方ではないので不安になってきました。
やる気は凄くありますが、この英語力でちゃんと現地の人と会話できるか不安だし、英語が伸びるかもあと1ヶ月で出発と思うととても不安です。勉強自体机に座って読んだり書いたりするのが苦手です。
それに行くとこが田舎なので日本人も多くはなく、情報も多くはないので不安です。
(回答)
1994年からカナダで頑張る日本人高校生・大学生・社会人の支援をしています。
BC州が主な活動拠点ですが、高校留学マネーに群がるエージェントと教育関係者に辟易とし、ロッキー山脈の東側アルバータ州でも「留学の現状」リサーチを始めました。
ちょうど2016年から1年間、いわゆる「小さな町」での高校留学を支援する中で、相談者の方のように私立高校から1年間送られてくる高校生たちにも出会う機会がありました。
私立高校にエージェントがプログラムを売り込み、高校側がエージェントに丸投げで生徒を送ってもらうパターンが多かったです。
エージェントは複数あると思いますが、アルバータ州ではグローバルパートナーという所が結構な数を送っていましたね。
高校生達は、9月〜6月と1月後半から翌年12月か1月という中途半端な時期の滞在をしていました。
アルバータ州の高校はほとんどが年間2学期制を採用していますので、9月、2月が各学期のスタートとなります。
そんな中途半端な留学期間でも、お構いなしだったのには大きな穴がありました。
送り出す学校側は、在籍さえしてくればその年の単位は取ったこととし、日本での高校卒業を遅れさせることはないそうです。
特に勉強をする必要もなく、ただ学校に行き何かのクラスに座ってさえいれば「1年留学した」と認めてくれるそうです。
生徒集めの切り札として、日本の多くの私立高校が採用している制度です。
エージェントも相当いい加減なことを言い、生徒を集めています。
直接何人かの高校生にインタビューしました。
「1年行けば英語はカナダの大学レベルになると言われたのに、全然うまくなりませんでした。」
「アルバータの田舎は日本人が全然いないからいいですよと言われたのに、小さな高校でもすでに数人の日本人がいました。」
可哀想なことに、その生徒たちは日本でも十分英語の能力があったわけでもなく、社会性が飛び抜けていたわけでもなく、しかも事前のクリティカル・シンキングの準備もなし、カナダの常識についての学習もなく、ポンと何もない小さな町に放り出された迷子のようでした。
高校も困っていました。
英語能力が低すぎて年齢に適した授業に入れることが出来ないので、とりあえず木工・金属加工のクラスとか、体育とかでお茶を濁す状態です。
コンピューターのクラスでも指示が理解出来いということで、教室の隅でゲームをする程度です。
数学の得意な生徒だけはかろうじてレベルを下げたMathの授業に入れてもらいましたが、学期途中でドロップアウトしていましたよ。
Englishのクラスになどとても入れる能力ではなかったので、隣にある小学校に行かされたり、見ていて心が痛みました。
カナダの友達は、まず出来ません。
小さな町のカナダの子どもたちは、生まれた時からずっと一緒に育っています。
様々な活動を共にし、お互いを知り尽くし、堅固なグループが出来上がっています。
親同士も仲良しか知り合いです。
そんな中に日本から英語の出来ない高校生がやって来ても輪には入れません。
仕方ないので数人いる日本人同士固まって寂しさを紛らわせているようでした。
小さな町のいい所は良いホストに出会うチャンスが多いことです。
都会のようにお金目当ての人だけがホストになるとは限りません。
もちろん田舎にもホームステイ費を当てにしてホストになる人は結構いますが、それでも面倒見のいい人が多いです。
にも関わらず、エージェントは小さな町の地元の常識を完全に無視し、新聞広告でホストを募集します。
町の人はそれに良い印象は持っていません。
良いひとに当たる確率の多い小さな町で、わざわざ外れになるホストを探しているようだと話していました。
いい情報が全然ありませんね。
申し訳ない気持ちですが、これが現実です。
ただし、あなたが英語の能力が高く、どんどん先生に質問し努力出来る生徒で、社会常識もわきまえている場合は、小さな町の人に受け入れられる可能性が高くなります。
または、日本で学業でもスポーツでも芸術でも、周りが認める実績があると、それを使い地元カナダの良い高校生たちと仲良くなる機会も作れます。
その場合は、留学生であふれかえる街の学校より、小さな町の留学の方が有利です。
おそらく留学先を変えてもらうことは不可能なのでしょうが(選べないのもおかしいですね)、相談内容から見る限りはいわゆる「留学生」のESLがすでにあり、同じような留学生の多い街の方が世間で言う「とりあえず1年楽しく過ごしたい」には近いのではと思います。
いずれにしても、英語が出来るようにはなりません、残念ながら。
カナダの小さな町の留学から多くを得たいと思われるなら、今からでも猛勉強し出来る限りの準備をすることを強く勧めます。
最後に付け足しですが、田舎のスクールボードでも良心のある所は、上記エージェントにはなるべく関与しない傾向にあるようです。
カナダの高校側も地元側もそのエージェントに送られる高校生から得るものは何もなく、高校生自身も何もプラスにならずに帰って行くのを見るに忍びないからだそうです。
良い人たちに出会え、あなたの将来を変えるような経験になることを祈っています。
Good luck!
このコラムの執筆専門家
- 大澤 眞知子
- (カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)
- Super World Club 代表
カナダにいらっしゃい!
カナダ 在住。パンデミック後のNew Normal 留学をサポート。変わってしまった留学への強力な準備として UX English主催。[Essay Basics] [Critical Thinking] など。カナダから日本に向けての本格的オンライン留学準備レッスン・カナダクラブ運営。
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