
- 金井 高志
- フランテック法律事務所
- 弁護士
対象:企業法務
- 村田 英幸
- (弁護士)
- 尾上 雅典
- (行政書士)
株式公開のための法務
「株式上場(IPO)のメリット・デメリット②」
今回は株式上場のメリット・デメリットの2回目です。前回はメリットについてお話ししましたので、デメリットに関してご説明させていただきます。
株式上場の主なデメリットとしては、①株主の意見に沿う経営方針選択の必要、②経理事務・株式事務などの費用の増加、③M&Aの対象となるリスクの発生、④企業内容の情報開示の義務化が挙げられます。
まず、①株主の意見に配慮した経営方針選択の必要についてですが、株式上場により市場にて株式を取得した株主にも経営権が生ずる以上、創業者の意向のみで経営方針を選択することができず、株主の意見に配慮した経営方針を選択する必要が生じます。
また、②経理事務・株式事務などの費用の増加についてですが、上場企業の場合、株主総会を開催するための費用や株主・株式の管理に関する費用が大きく増大することになります。
また、③M&Aの対象となるリスクの発生についてですが、上場によって証券取引所で株式が自由に売買できるようになることにより、株式の買い占めによる会社支配権の奪取(M&A)の対象となるリスクが生じます。
さらに、④企業内容の情報開示の義務化についてですが、株式上場によって決算短信(※2)や有価証券報告書(※3)等を証券取引所や財務局に提出する必要が生じるなど、企業内容の開示が必要となり、それに伴い監査法人等に支払うコストも発生します。
このように、株式上場には、様々なメリット・デメリットが存在します。そして、日本には、大企業でありながらも、また、業績が伸びているベンチャー企業でありながらも、株主の意見に配慮して経営方針を選択しなければならなくなることを嫌い(株式上場のデメリット①)、非上場を維持する企業もあります。しかし、会社規模を飛躍的に拡大するには大規模な資金調達が必要であり、これを実現するには株式を証券取引所で流通させることが近道であるため(株式上場のメリット①)、日本を代表する企業の多くは上場することを選択しているのであり、また、ベンチャー企業も上場することを企業発展のための選択肢の1つにしているのです。
次回は、東京証券取引所の市場についてご説明します。
※2 決算短信…上場企業が証券取引所の自主ルールに基づき証券取引所に対し作成し提出する決算速報(四半期決算短信は四半期決算後30日以内、通期決算短信は通期決算後45日以内に提出することになっている)
※3 有価証券報告書…上場企業等が金融商品取引法に基づき通期決算後3ヶ月以内に財務局に対し作成し提出する決算確報
フランテック法律事務所 弁護士 金井 高志
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