中国司法解釈(二)意見募集稿(2) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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中国司法解釈(二)意見募集稿(2)

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中国最高人民法院特許権侵害紛争案件の審理における

法律適用についての若干の問題に関する解釈(二)意見募集稿(2)

2014年9月23日

河野特許事務所

弁理士 河野英仁

 

7.損害賠償額の立証(第32条及び第33条)

 専利法第65条第2項では、侵害者の侵害行為により得た利益を損害賠償額とすることができる旨規定している。しかしながら、侵害者の利益を記録した帳簿、資料等は、侵害者が掌握しており、一般にはこれらの帳簿、資料に特許権者がアクセスすることはできない。

 そこで、司法解釈案第32条及び第33条では特許権者側に極力証拠収集させると共に、特許権者が証拠収集を行っても損害額を立証できない場合に、侵害者に帳簿、資料等の提出を命じることができるようにした。そして、侵害者が正当な理由なく提出を拒んだ場合、または、虚偽の帳簿、資料を提出した場合、人民法院は権利者の主張及び提供した証拠を参考として賠償額を認定することができる旨規定した。この点は改正商標法における損害賠償額の認定と同様の取り扱いである。

 

  第三十二条 権利者が専利法第六十五条第二項(侵害者の利益に基づく損害額)の規定に基づき賠償額を確定することを主張する場合、権利侵害者が、権利者が権利侵害により受けた実際の損失、権利侵害者が権利侵害により得た利益または合理的特許使用費を証明する証拠を提供し、かつ、権利者が反証により覆す証拠を提供できない場合、人民法院は権利侵害者が提供した証拠に基づき賠償額を確定することができる;権利侵害者が上述の証拠を提供しない場合、人民法院は専利法第六十五条第二項の規定に基づき賠償額を確定することができる。

 

  第三十三条 人民法院は、賠償額を確定するに当たり、権利者が既にできる限りの手段により挙証し、特許権利侵害行為に関連する帳簿、資料が主に権利侵害者により掌握されている状況下では、人民法院は権利侵害者に特許権利侵害行為に関する帳簿、資料を提供するよう命じることができる;権利侵害者が正当な理由なく提供を拒むか、または、虚偽の帳簿、資料を提供した場合、人民法院は権利者の主張及び提供した証拠を参考として賠償額を認定することができる。

 

司法解釈案

  第一条 特許請求の範囲が2以上の請求項を有する場合、権利者は起訴状の中で、訴える被疑侵害者がその特許権を侵害する請求項を明記しなければならない。起訴状においてそれが記載されていないまたは不明である場合は、人民法院は権利者に明確にするよう要求しなければならない;釈明を経て、権利者が明確にしない場合、人民法院は推定権利者が全部の独立請求項を選択したと推定することができる。

 

  第二条 権利者が、被疑侵害技術方案が独立請求項及びその従属請求項にて限定する保護範囲に属すると主張し、審查を経て、被疑侵害技術方案が独立請求項にて限定する保護範囲に既に属する場合、人民法院は被疑侵害技術方案がその従属請求項にて限定する保護範囲に属するか否か認定しなければならない;被疑侵害技術方案が独立請求項にて限定する保護範囲に属さない場合、人民法院は被疑侵害技術方案がその従属請求項にて限定する保護範囲に属さないとの省略認定(judgment notwithstanding verdict)を行うことができる。

 

  被疑侵害技術方案が、権利者が主張する一項以上の請求項にて限定する保護範囲に属する場合、人民法院は、被疑侵害技術方案は特許権の保護範囲に属すると認定しなければならない。被疑侵害技術方案が、2項以上の請求項にて限定される保護範囲に属する場合でも、人民法院の賠償数額に対する認定に影響を与えない。

 

  第三条 権利者が特許侵害訴訟において主張した請求項が、特許復審委員会により無効を宣告された場合、特許侵害紛争案件を審理する人民法院は権利者の該無効となった請求項に基づく起訴を却下する裁定を行うことができる;特許復審委員会が特許権無効を宣告した決定が、効力が発生した行政裁判により取り消されたという証拠証明を有する場合、権利者は改めて起訴することができる。

 

  第四条 請求項、明細書及び図面中の語法、文字、句読点、符号、図形等の誤記について、当業者が、請求項、明細書を読むことにより、明確に唯一の理解を得ることができる場合、人民法院は当該唯一の理解に基づき認定しなければならない。

 

  第五条 請求項に記載された文字の含意は明確であるが、明細書の対応する記載と根本的に矛盾し、かつ本解釈が第四条に規定する状況に属さない場合、人民法院は請求項の記載に基づき特許権の保護範囲を確定しなければならない。

 

  請求項の含意が不明であり、法定の解釈方法を運用してもその限定する特許権保護範囲を確定する術がなく、かつ、本解釈第四条に規定する状況に属さない場合、人民法院は起訴を却下する裁定を行うことができる。

 

  当事者が特許侵害訴訟の判決がなされる前に、無効宣告請求人が上述した事由に基づき特許復審委員会に該特許権の無効を請求したことを挙証証明した場合、人民法院は訴訟を中止する裁定を行うことができる。

 

  第六条 人民法院は請求項の解釈にあたり、特許の発明の目的に符合しなければならない。被疑侵害技術方案が、特許が克服しなければならない現有技術の欠陥を有する場合、人民法院は当該被疑侵害技術方案を、特許権の保護範囲に属さないと認定しなければならない。

 

  第七条 人民法院は、被疑侵害技術方案が特許権の保護範囲に属するか否かを判定するに当たっては、一般に特許技術方案及び被疑侵害技術方案に対して、技術特徴の分解を行うべきであり、かつ、その基礎において相応の技術特徴対比を行わなければならない。

 

  技術特徴とは、技術方案において、相対的に独立して一定の技術機能を実現することができ、かつ、相対的に独立した技術効果を生む最小技術ユニットをいう。

 

  第八条 対象特許と他の特許との間に分割出願等の直接関連する関係が存在する場合、人民法院は該他の特許及びその特許審查経過、効力が発生した特許権利付与の確認紛争裁判文書を活用して、対象特許の請求項を解釈することができる。

 

  特許審查経過とは、特許審查、復審、無効過程中の特許申請人または特許権者が提出した書面による資料を含み、国務院特許行政部門及び特許復審委員会がなした審查意見通知書、面接記録、口頭審理記録、効力を発した特許復審請求審查決定書及び特許権無効宣告請求審查決定書等である。

 

  第九条 人民法院は、特許権の保護範囲を確定する場合、独立請求項の前段部分、特徴部分及び従属請求項の引用部分、限定部分に記載された技術特徴は共に限定作用を有する。

 

  第十条 請求項中にて機能または効果により表現された技術特徴、すなわち機能性特徴とは、構造、成分、ステップ、条件またはその間の関係等について、単にそれが発明創造において起こる機能或いは効果を通じて、限定した技術特徴をいう。ただし、当事者が、技術専門用語が本領域にて既に一般的となっているか、または、当業者が単に請求項を通じて直接、明確にその技術内容を確定できることを挙証証明した場合は除く。

 

  明細書及び図面に記載の上述した機能または効果を実現するのに不可欠な技術特徴と比較して、被疑侵害技術方案の相応する技術特徴が基本的に同一の手段をもって、同一の機能を実現し、同一の効果を達成し、かつ当業者が特許において創造性労働を経ることなく想到し得る場合、人民法院は該相応の技術特徴と機能性特徴とは同一であると認定しなければならない。

 

  明細書及び図面に記載の上述した機能または効果を実現するのに不可欠な技術特徴と比較して、被疑侵害技術方案の相応する技術特徴が基本的に同一の手段をもって、基本的に同一の機能を実現し、基本的に同一の効果を達成し、かつ当業者が特許日後、被疑侵害行為発生日以前に、創造性労働を経ることなく想到し得る場合、人民法院は該相応の技術特徴と機能性特徴は均等であると認定しなければならない。

 

  第十一条 組合物の封鎖式請求項について、被疑侵害技術方案が請求項の全部の技術特徴の基礎上においてその他の技術特徴を増加させている場合、人民法院は、被疑侵害技術方案は特許権の保護範囲に属さないと認定しなければならない。ただし、該増加させた技術特徴が回避することができない通常数量の不純物に属する場合は除く。

 

  第十二条 被疑侵害技術方案が製品請求項中の使用環境特徴により限定された使用環境に適用することができない場合、人民法院は、被疑侵害技術方案は特許権の保護範囲に属さないと認定しなければならない。

 

  第十三条 製品請求項中にて製造方法により製品の技術特徴を限定したものについて、被疑侵害製品の製造方法とそれが同一でなくまた均等でない場合、人民法院は、被疑侵害技術方案は特許権の保護範囲に属さないと認定しなければならない。

 

  第十四条 方法請求項中のステップ順序の特徴について、人民法院は請求項の記載に基づき、明細書及び図面を結合し、ステップ順序の変換が技術効果に対し実質的な影響をもたらすか否かを確定しなければならず、かつ、その基礎上において被疑侵害技術方案が特許権の保護範囲に属するか否かを認定しなければならない。ただし本解釈第十五条に規定する場合を除く。

 

  第十五条 請求項が“少なくとも”等の用語を数値特徴に採用し、または、“まず最初に”等の用語をステップ順序特徴に対し採用し限定を行っており、かつ当業者が、権利者が、特別に該用語が技術特徴に対し厳格な限定作用を強調していると判断する場合、権利者がその同一でない技術特徴に対し、均等の特徴に属すると主張したとしても、人民法院は支持しない。

 

  第十六条 特許申請人、特許権者が特許権利付与過程において請求項、明細書を補正し、または意見を陳述し、被疑侵害者が上述の状況において放棄した技術方案が特許権の保護範囲に属さないと主張し、権利者が該補正または陳述が審査官により採用されず、または、特許権利付与の条件と因果関係がないことを挙証証明した場合、人民法院は、該補正または陳述は技術方案の放棄とならないと認定しなければならない。

 

  第十七条 人民法院が、外観設計が同一または近似するか否かを認定するに当たり、一般消費者の角度から全面的に設計特徴を観察し、総合的に全体視覚効果を判断しなければならない。被疑侵害設計が、現有設計の全ての設計特徴とは区別できる権利付与された外観設計を含まない場合、人民法院は可被疑侵害設計と権利付与された外観設計とは近似しないと推定することができる;被疑侵害設計が、現有設計の全ての設計特徴とは区別できる権利付与された外観設計を含む場合、人民法院は、該設計特徴は全体視覚効果に対し、より大きな影響を有すると推定することができる。ただし、当事者が上述推定を反証して覆した場合は除く。

 

  一般消費者とは、被疑侵害製品の直接の購買者をいう。人民法院は一般消費者の外観設計に対して有する知識レベル及び認知能力を認定する場合、権利付与された外観設計のデザインの余地(設計空間)、すなわち設計者が特定製品の外観設計を創作する際の自由度を考慮しなければならない。デザインの余地(設計空間)が比較的大きい場合、一般消費者は通常、容易には、異なる設計間の比較的小さな相違に注意しない;デザインの余地(設計空間)が比較的小さい場合、一般消費者は通常、より容易く異なる設計間の比較的小さな相違に注意する。

 

  第十八条 被疑侵害設計と権利付与された外観設計との差異が一般消費者にとって両者を区別するには足りないか、または、両者の差異が慣常の設計に属するかまたは技術機能により唯一決定される設計に属する場合、人民法院は、両者は全体視覚効果上、実質性の差異がないと認定しなければならない。

 

  第十九条 セット製品の外観設計特許について、被疑侵害設計とその一つの外観設計とが同一または近似する場合、人民法院は、被疑侵害設計は、特許権の保護範囲に属すると認定しなければならない。

 

  第二十条 組立関係が唯一の組立製品の外観設計特許について、被疑侵害設計と該組立部品製品とが組合状態での全体外観設計が同一または近似する場合、人民法院は、被疑侵害設計は特許権の保護範囲に属すると認定しなければならない。

 

  各部材間の組立関係がないか、または、組立関係が唯一でない組立部品製品の外観設計特許について、被疑侵害設計とその全各部材の外観設計が共に同一または近似する場合、人民法院は、被疑侵害設計は特許権の保護範囲に属すると認定しなければならない;被疑侵害設計が部分的に一つの部材を欠く外観設計であるか、または、被疑侵害製品がそれと同一でなく近似もしない場合、人民法院は、被疑侵害設計は特許権の保護範囲に属さないと認定しなければならない。ただし、該部分的な一つの部材の外観設計が、全各部材の外観設計に対し、全体視覚効果において顕著な影響をもたらしていない場合は除く。

 

⇒第3回へ続く

 

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