- 中舎 重之
- 建築家
対象:老後・セカンドライフ
長寿命化(200年)住宅の話
2008年度に国土交通省(国交省)が長寿命化住宅として、
木造住宅でも200年の耐久性を要求する政策を打ち出しました。
国交省の木造200年の住宅の建物は、日本古来の伝統工法をイメージしております。
すなわち、田舎の古民家や京都あたりの数寄屋建築を想像して下さい。
柱はあくまでも太く、梁はどこまでも大きく、壁は土か板で造ります。
この様に造られて、築200年を経過した建物は全国で1万棟も現存しているとの事です。
耐震構造から見ますと、昔ながらの「貫=ぬき」と「長押=なげし」に「土壁」か「板壁」を重視する工法なのです。
今の基準法で規定されて使用を余儀なくされている「スジカイ」や「金物」は使いません。
現在使用している建築金物は古くなると錆びてボロボロになるだけではなく、
木材も腐らせますので、良い工法ではありません。
建物の耐用年数が30年位ならば、それも問題にはなりませんが、200年住宅では禁止です。
ましてや、今はやりの構造用合板の使用などは論外です。
「貫」と言うのは、柱と柱を水平に結ぶ部材で上部に頭貫(かしらぬき)、中間に腰貫、
下部に地貫(じぬき)と呼ぶもの入れます。
「長押」は障子や襖などの上の所で、柱と柱を中間位置で横に結び部材です。
柱と柱が横からの力に抵抗する時に共同作業させる重要な材です。
「土壁」は、竹や木と編んで木舞(こまい)という下地を作った上に、
三ケ月以上も寝かせた壁土を下塗り、中塗り、上塗りと3回も塗ります。
壁土を1回塗る毎に、充分に乾燥させる様に時間を置くのです。
まさに時間と手間を掛けるのです。
塗りを急ぎますと後日、ひび割れが起きて、強度も出ませんし仕上がりも良くありません。
「板壁」は厚さ27㎜前後の板を柱と柱の間に落とし込みます。
柱には板厚に相当する溝を彫り込みます。 この工法も横からの力に充分に抵抗します。
「貫」、「長押」と「土壁」・「板壁」は耐震での3点セットであり、
古来より使われてきた伝統工法そのものです。
耐震性向上のポイントは、柱の太さにあります。
柱は18㎝角が目安です。檜の50年~60年ものを使用して下さい。
それにより200年は持ちます。
間取りは梁や桁が24㎝~30㎝の梁背のものを使用できる距離(4.5~5.4m)で設計すると合理的です。
これにより古民家とは呼ばない新民家の構法が出来上がります。
伝統工法を新しい視点から再来させる楽しい、楽しいお話でした。
中 舎 重 之
綜合企画設計工務 一級建築士事務所
FAX:046-263-9324
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