寂しい感情は、抑圧されてしまいやすい

私がカウンセリングをしている感覚で言うと、どうも「寂しい」と言うお気持ちを「実感」として感じられていらっしゃる方が少ないように思われます。言い方を換えると「寂しさを感じないようにしている」方が多く見受けられるように思います。

しっかりしなくちゃと頑張っておられる方々の中には、「もっと強くならなければならない」とご自分に対して厳しい方もおられます。

「寂しい」という感情は、とても人を弱くしてしまうところはあるように思いますので、自分が弱くならないように、「寂しさ」を抑圧されてしまわれているのかも知れません。

人に優しくされると、普通は嬉しいものですが、反面「人の優しさ」を受けると甘えてしまいたくなり、そのため「自分が弱くなる」という側面があります。

以前、イリュージョニスト（マジシャン）の引田天功さんが、本番の舞台で怪我をされてしまわれたことをテレビでお話されていました。

骨折級の大怪我だったそうですが、「本番を終わらせなければならない」一心で、痛さもあまり感じなかったそうですが、舞台から降りて、スタッフに抱えられて、労われた途端に激痛を感じたそうです。

「優しくされると、弱くなるんですよね」と言っていました。

でも、人の優しさを感じられないでいるのは、「寂しい」ものですよね。

「寂しさ」の原点は、お母さんのお腹から、生まれる時に感じる感情であるという心理学者もいます。

生まれてしまったら、もう二度とお母さんのお腹の中で過ごしたような「一体感」は感じる事が出来なくなってしまうからです。

たしかに、生まれた瞬間から、人は誰でも「孤独」な一人ぼっちになってしまうといっても過言ではないかも知れません。

私などは、自分でも「寂しがり屋」だと自分では思うのですが、その「寂しい」気持ちがあることを、人に伝えるのは非常に苦手です。というか、そんな心を隠そうとしてしまう傾向があります。

東京の小学校を卒業して、中学の初めに千葉県に引越ししたことがありました。

顔なじみもいなく、環境も違う引越し先で、当初は寂しい気持ちでした。そんな中１の夏休みに、小学校時代の友達たちが、わざわざ遊びに来てくれました。

嬉しかったことを覚えています。山へ虫を取りに行ったり、近所のプールに行ったりして楽しい時間を過ごしました。

ところが、段々気持ちが沈んで行ってしまいます。なぜなら、もうすぐみんな帰ってしまうからです。

「お別れ」が辛かったのですね。ところが自分ではその「寂しさ」がよくわからないのです。みんな仲良く楽しそうにしているのに、自分だけが取り残されているような気分で、楽しく過ごせなくなって来てしまいました。

「いっそこいつらみんな早く帰れば良いのに」位に思って、態度にも出してしまいました。

みんなは夏休み明けも楽しく過ごせるのに、自分だけがそうではないことに、「いじけて」しまったのです。

今思えば、そんな態度で、彼らも戸惑ったでしょうし、せっかくの楽しい時間を、もったいない事をしてしまいました。あとあと後悔しました。その後、連絡を取り合うようなことが絶えてしまったからです。

もっと素直に「お別れするのは寂しいから、また来てよね！」と言えれば良かったのかも知れません。

でも約束したのに来てくれなかったら、それはそれで余計寂しいことですし、来てくれても、また別れるときに寂しい想いをするのも辛いものです。

辛い思いは感じたくない。そんな理由で、「寂しさ」は抑圧されてしまいやすい感情なのではないかなと思います。