- 小日向 るり子
- フィールマインド 代表カウンセラー
- 東京都
- 心理カウンセラー
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対象:心の病気・カウンセリング
自死遺族の手記5 ~弟を自死で亡くしたNさん~
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少し間があいてしまいましたが、「自死遺族の手記5 ~弟を自死でなくしたNさん~」をお届けします。
この手記は、弟さんを亡くされてから9ヵ月経った頃にNさんが書かれたブログ記事を一部編集して掲載しています。
5回目は、通夜の前日から通夜が終わるまでを書かれています。
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弟のエンゼルメイクが終わり、棺おけに入れ、入り口や、椅子などのセッティングをする事となった。
もちろん葬儀屋の方がやってくださるのだが、入り口は想い出の品を飾ったりと色々とデコレーションをしたかったので家族で色々な飾りものをしたりした。
明日がお通夜で、明後日が葬儀となると弟と一緒にいられる時間は、あと48時間くらいだろう。
そう考えると、ひと時も離れるのがいやだったので、何かするたびに、棺おけに戻り顔を開けたり、手を触ったり顔を触ったりしていた。
「あまり開けすぎると、棺おけが温まってしまい、腐敗が早くなるので。」
と注意をされたくらいだ。
弟の手などをまじまじと見ていると、ところどころに擦り傷などがあった。
首吊り自殺の遺体を見た事が無いので他の方はどのような状態なのか分からないが、これは、一度失敗して落ちたときに出来た傷なのではないだろうか。
一度、落ちて傷だらけになりながらも二度目の自殺を決行するという強い意思は一体どこからくるのだろうか。
再度、席を立った私が、廊下を歩いていると弟が眠っている葬儀会場が遠くで見え、母親が体を屈めながら、弟の顔をじっくりと見ていた。
私の母親は昔から過保護で、何かあると、すぐ大騒ぎしながら絆創膏や、傷薬を塗ったり、お腹が痛いといったら、すぐ薬を飲ませたり、とにかく尋常ではないくらい過保護で体の心配を子供の頃からこの年になるまでしていた。
そんな、何よりも、自分の命よりも大切にしていた息子が
首を真っ赤にし、体中傷だらけになりながら冷たく固まっている・・・
母親はこの時、どんな気持ちで弟を見ていたのだろう。
考えるだけで苦しくなる。
一通り準備が終わり夜になった。
私は、寝る時間弟と離れるのがいやで、弟の隣に、枕を置き、横になることにした。
今となってはおかしな話だが、弟の幽霊か何かが出てこないか、とても楽しみにしていた。
幽霊でもなんでもいいから
弟と話がしたい。
最後に突き放した事を謝りたい。
愛があるが故の厳しさだったと弁解がしたい。
そしてできる事なら、俺も連れて行って欲しい。
そんな事を呆然と考えながら、弟と夜を過ごした。
通夜は無事終わった。
予想をはるかに上回る人が来てくれた。
一人ひとり、弟の人生を描いた人たちの顔を眺めながら、
「ありがとう」と心から感謝した。
告別式の準備などをしていたところ、弟の高校時代、大学時代に友人10~20人くらいが、
「彼を寂しくさせたくないから、ここで朝まで過ごしていいですか?」
と声をかけてきた。
この葬儀場は、告別式が終わるまで貸切にさせてくれる葬儀場なので(通常の葬儀場はどうなのかは分かりません)
「私たちと居るだけよりも、最後は友達とみんなで居たいよね」
という母の一言で、友達10~20人くらいが泊まることになった。
夜中1~2時を過ぎても、弟の周りに円陣を組んだようにしてお酒を飲みながら弟の思い出を話していたり、「あまりむやみに開けたりすると温まって腐敗が早くなりますから」と注意されていた弟の棺おけを、バカバカ開けたりして、中に、好きだったものを入れたり、時たま肌を触ったりとめちゃくちゃをやっていた。
朝、目が覚めて弟のところに行ってみると、友達が疲れ果てて、そこら中に寝っころがり、弟の棺おけを抱きかかえるように数人が寝ていた。
「すげー親友いっぱい居たんだなぁ お前は」
心がとても温かい気持ちになった。
たぶん、弟はこの短い25年間で、
一生分の友達を作り、
一生分泣いて、
一生分笑って、
一生分の悲しい事を経験し
一生分の幸せを感じながら
生きていたんだと思った。
幸せなやつだ・・・
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このコラムは私が副代表をつとめる「任意団体 ハートストレングス」の代表である岡田のりきさんのブログを一部編集して掲載しています。
次回団体で開催するお花見について、私がこちらの団体に想う気持ちについて、ブログに少し補足していますので、よかったらブログもご覧ください。
タイトル:たくさん悩んで苦しんでもいいけれど→http://ameblo.jp/r-kohinata/entry-11803461523.html
このコラムの執筆専門家
- 小日向 るり子
- (東京都 / 心理カウンセラー)
- フィールマインド 代表カウンセラー
感情を否定せず、まず寄り添うこと、を理念としています。
会社員時代にボランティアで始めた電話相談員がカウンセラーとしての原点。退職後にカウンセラー資格取得。その後労働局にてハラスメント相談員を経て現職。相談内容を特化せずどんな言葉でも【聴く】ことに焦点をあてたカウンセリングを行っています。
「自死遺族の手記」のコラム
自死遺族の手記7 ~弟を自死で亡くしたNさん~(2014/06/05 01:06)
自死遺族の手記6 ~弟を自死で亡くしたNさん~(2014/04/21 14:04)
自死遺族の手記4 ~弟を自死で亡くしたNさん~(2014/02/26 13:02)
自死遺族の手記3 ~弟を自死で亡くしたNさん~(2014/02/14 17:02)
自死遺族の手記2 ~弟を自死で亡くしたNさん~(2014/02/08 17:02)
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