ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第一回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第一回)

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ソフトウェア関連発明特許に係る判例紹介(第一回)

~方法クレームの記載順に権利範囲が限定解釈された判例~

 

原告:株式会社ジーピーシーコリア

被告:楽天株式会社

 

2014年2月18日

執筆者  河野特許事務所 弁理士 田中 伸次

 

 

1.概要

 本件は、発明の名称「Web-POS方式」とする特許権の専用実施権者である原告が、被告の提供するサービスに係るシステムが上記特許権を侵害している旨主張して、被告に対し損害賠償請求(一部請求)を求めたものである。

 

 

2.背景

1)     特許の内容

 本件特許に係る発明(以下「本件発明」と記す。)は、クライアント・サーバ型システムによるWeb-POS(Point Of Sales)方式に関するものである。本件発明の特徴は、サーバ(ストアコンピュータ)から商品メーカーコードや商品アイテムコードをキーとして、対応する商品の価格情報を取得するPLU(Price Look Up)機能部分である。

 本件発明に係る制御方法は、

「ハイパーテキスト転送プロトコルを用いてハイパーテキストマークアップ言語で記述された初期フレーム表示制御クライアント・プログラム、カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラム及びPLUリスト表示制御クライアント・プログラムを含むHTMLリソースを供給するWeb-POSサーバ装置を備えた」(構成要件A)、

「販売時点情報管理を行うためのWeb-POSネットワーク・システムの制御方法であって」(構成要件B)、

「該Web-POSサーバ装置からWeb-POSクライアント装置に対して送信された、初期フレーム表示制御クライアント・プログラムが、該Web-POSクライアント装置において実行されることにより」(構成要件C)、

「少なくとも、

1)該Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して、カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムのダウンロードを要求するHTTPメッセージが送信される過程、

2)該要求に基づき、Webサーバ・プログラムがHDDの記憶媒体からカテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムを読み出し、上記Web-POSサーバ装置から該Web-POSクライアント装置に対して、上記カテゴリーリスト表示制御クライアント・プログラムが送信される過程、

3)上記Web-POSクライアント装置から上記Web-POSサーバ装置に対して、PLUリスト表示制御サーバ・プログラムの実行を指示するHTTPメッセージが送信されると、上記Web-POSサーバ装置が、PLU表示サーバ・プログラムを起動して、PLUリスト表示制御クライアント・プログラムを生成し、上記Web-POSクライアント装置に対して、PLUリスト表示制御クライアントプログラムが送信される過程、

4)及び、商品情報の入力毎に、それに対応するPLU情報が上記Web-POSサーバ装置に問い合わされる過程、

からなり」(構成要件D)、

(中略)

「商品カテゴリー、メーカー、商品名及び価格からなる商品基礎情報が記憶されている前記PLUマスターDBは前記Web-POSサーバ装置のみに設けられて」(構成要件H)、

「表示装置において、商品カテゴリーに対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と、該カテゴリー内の商品名が表示される、商品情報に対応したPLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と、前記商品基礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て」(構成要件I)、

「前記タッチパネル、キーボード、またはマウスからなる入力手段を有する表示装置において、商品カテゴリーに対応するPLUリストを表示する部分(第1フレーム)の表示過程と、該カテゴリー内の商品名が表示される、商品情報に対応したPLUリストを表示する部分(第2フレーム)の表示過程と、前記商品基礎情報と前記入力した商品識別情報とに基づいて出力される入力結果の注文商品明細を表示する部分(第3フレーム)の表示過程を経て」(構成要件J)、

「前記Web-POSクライアント装置における上記注文商品明細情報が該Web-POSクライアント装置から前記Web-POSサーバ装置に送信されることで、販売時点情報管理が行われることを特徴する」(構成要件K)。

 


ここでいう第1~第3フレームとは、図1に示すようなものである。

 

 


 第1フレームには「商品カテゴリー」、第2フレームには「商品名」、第3フレームには「注文商品明細」が表示される。例えば、第1フレームで、商品カテゴリーとして「靴」を選択すると、第2フレームの注文商品には「靴」の商品名が表示される。第2フレームに表示された「商品名」の一つを選択すると、第3フレームの「注文商品明細」にカテゴリー、メーカーコード、商品番号、商品名、単価が表示される。ユーザが数量を入力すると商品毎の発注価格が計算され表示される(【図2】)。

 

 


2)     審査経過

 本件特許に係る特許出願(以下、「本願」と記す。)は分割出願である。親出願(特願2000-331569号)は拒絶査定不服審判において登録すべき旨の審決がされ、登録されている(登録第4491068号)。

 本願は、親出願が拒絶査定不服審判において、特許される見込みとなった後に、分割出願された。そのため、本願の審査においては、記載不備の拒絶理由のみが通知された後に、補正書・意見書が提出され、特許されている。

 

3)     その他

 本願について無効審判は請求されていない。

 本願は特許査定後に譲渡され、その後、専用実施権が原告に対して、設定登録されている。

 

 

⇒第二回に続く

 
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