著作者の認定と著作者が複数いる場合 - 民事家事・生活トラブル全般 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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著作者の認定と著作者が複数いる場合

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著作者の認定と著作者が複数いる場合

集合著作物とは、著作者各人が個別に創作した、種類を同じくする複数の著作物の集合である。著作物は各人の著作物であり、集合著作物という独立の著作物が存在するわけではない。
ただし、集合著作物について、編集すなわち、素材の選択と配列に創作性がある場合には、編集著作物となる( 最判平成5・3・30[智恵子抄事件])。例えば、共同執筆の教科書・論文集など。

共同著作物(著作権法2条1項12号)に該当する場合、著作者人格権である氏名表示権(19条2項)、名誉声望保持訂正措置請求権(115条)により、著作者の氏名を表示するように請求することができる。

共同著作物とは「二人以上の者が共同して創作した著作物であって、その各人の寄与を分離して個別的に利用することができないもの」をいう。(著作権法2条1項12号)
共同著作物は、保護期間の終期、64条・65条の制約を受ける。したがって、そのような制約が妥当する場合に限られるから、主体的な共同意思がある場合に共同著作物となると解される(共同意思説。中山信弘『著作権法』167頁、著作権法判例百選47事件[牧野利秋]、田村善之『著作権法(第2版)』(2001年)371頁)。
例えば、私見として、教授が講義をし口述した内容は言語の著作物であり、学生が一言一句筆記しても、教授が著作者である。ただし、学生が表現上の創作性を付加した部分については、学生の単独著作物または教授の著作物についての二次的著作物である。主観的共同関係がないから、共同著作物とはならない。セミナーの講師の講演と受講者との関係も同様である。
これに対して、原著作物を後から補充校訂したような客観的な関係にある場合にも共同著作物と解する見解(客観的判断説。半田正夫『著作権法概説』、作花文雄『詳解著作権法(第2版)』)187頁)もあるが、妥当ではない。

結合著作物とは、著作者各人が個別に創作した、通常は一体として利用されることを目的とした、種類の異なる複数の著作物の結合である。歌詞を伴う音楽の著作物については、音楽の著作物である曲と、言語の著作物である歌詞から結合著作物である(渋谷達紀『著作権法』32頁)。結合著作物の他の例として、挿絵(美術の著作物)付きの絵本(言語の著作物)、楽曲・歌詞・言語・舞踊の著作物が結合したミュージカル、映像と音楽が結合した映画の著作物が挙げられる(渋谷達紀『著作権法』100頁)。結合著作物は、保護期間の始期・終期は各個の著作物について計算され、共同著作物の場合の著作権法64条・65条の制約を受けない(中山信弘『著作権法』166頁)。


著作者の認定
問題の所在
著作者とは、著作物を創作する者である(著作権法2条1項2号)。著作者に著作権と著作者人格権が原始的に帰属する(著作権法17条)。例外として、職務著作(著作権法15条)、映画の著作物の場合(16条、29条)がある。
複数の者が関与してできた著作物について、ある者が著作者である場合、その他の者が権利者であると主張する場合、その者が著作者かどうかによって、侵害者と目された者側が、権利の行使を免れるから、著作者の認定が問題となる。


職務著作(著作権法15条)に該当する場合には、使用者が著作者になる。従業者の範囲について、労働者を含むとするのが通説である。雇用契約にある者について、指揮命令関係があり、著作権を使用者に帰属させる関係にあれば、職務著作に当たるとした最高裁平成15・4・11[RPGアドベンチャー事件]がある。
従業者の範囲について、派遣労働者を含むとするのが多数説である(中山信弘『著作権法』178頁、田村善之『著作権法(第2版)』(2001年)381頁、半田正夫『著作権法概説』)。取締役についても、従業者に含まれる(中山信弘『著作権法』178頁)。
なお、従業者の範囲について、委任、請負も含むと解する見解(渋谷達紀『著作権法』108頁)もあるが、条文の「従業者」という用語に照らして、また、具体的な指示がない場合が多いであろうから、広すぎて妥当ではないというのが多数説である(加戸守行『著作権法逐条講義(5訂新版)』145頁、中山信弘『著作権法』179頁、半田正夫『著作権法概説』)。

複数の者が創作活動に関与した場合
○補助者
著作者による表現上の思想感情の表現の作業を補助したに過ぎず、自己の思想感情の表現していないから著作者ではない。
例えば、監修者は著作者ではない。
平家物語の英語訳について、外国人に表現のぎごちなさの手直し、リズムの調整をしてもらった場合には、外国語訳は、その外国人との共同著作物である(大阪高判昭和55・6・26[英訳平家事件])。
外国語の哲学書の日本語訳について、誤訳の指摘、下線を引くことによる注意喚起をしてもらったに過ぎない場合は、翻訳者の単独著作物である。
写真の著作物の場合、被写体の選択、シャッターを切るタイミング・スピード、絞り、照明、レンズ・カメラの選択、現像・焼き付けについて、主体的に関与した者が著作者となる。しかし、これらを全て行うとは限らず、共同著作者となる場合もある。他方、シャッターを切った者が単なる助手の場合には、著作者とならない(中山信弘『著作権法』164頁~165頁)。
○資金・設備提供者
自己の思想感情の表現していないから著作者ではない。例えば、委託者、発注者、依頼者など。放送事業者がプロダクションに番組の製作を依頼した場合、プロダクションが著作者であり、放送事業者は著作者にならない。
○アイディア発案者
アイディアそのものは著作物ではないから、自己の思想感情の表現していないから著作者ではない。
言語の著作物について、著作者に対して、文章表現の手直し、意見を述べた者は、自ら筆を執っていないから、著作者ではない。
地図の著作物について、素材を提供したに過ぎない場合には、著作者ではない。しかし、依頼者の指示が具体的請負で細かい場合には、製図家の製作は模写画に類似するから、著作者ではなく、依頼者が著作者となる。
絵画・挿絵について、依頼者の指示が細かくなく、画家の自由度が高い場合には、画家が著作者であり、依頼者は著作者ではない。
商業広告の製作について、依頼者が素材を提供し、デザイナーに対する指示が具体的に細かい場合、依頼者とデザイナーの共同著作者となる。
○素材提供者
著作者による表現上の思想感情の表現の作業を補助したに過ぎず、自己の思想感情の表現していないから著作者ではない。
インタビューを受けた者は、文章表現に関与していないから、インタビュー記事の著作者となることはない(東京地判平成10・10・29[SMAP事件])。ただし、この事件について、インタビューの受けた者の話の内容が単なる素材・事実に過ぎない場合は別として、言語の著作物は口述によって成立するから、インタビューを受けた者とインタビュー記事を書いた者との共同著作者となると解されるという批判がある。
口述筆記の著作物について、口述者が口述した部分は口述者の単独著作物だが、書いてほしい事柄を口述者が指示した部分、口述者の意思を忖度して筆記者が自由に書いた部分は筆記者の単独著作物であり、口述者が補充訂正した部分は、口述者と筆記者との共同著作者である。
○原著作物の著作者
脚本の原案を提供した場合、原案が言語の著作物に該当すれば、脚本は原案の二次的著作物となる(中山信弘『著作権法』164頁。東京地昭和50・3・31[私は貝になりたい事件])。なお、原案が固定されていることを要するという見解(渋谷達紀『著作権法』102頁)もあるが、言語の著作物について、固定が要件ではないから妥当ではないと解される。


○映画の著作物
 映画の著作物については、例外として、16条・29条の特別の規定がある。
 映画の著作者とは、制作、監督、演出、撮影、美術などを担当して、映画の著作物の「全体的形成に創作的に寄与した者」(モダン・オーサー)であり、すなわち、映画について、一貫したイメージを抱き、それを実現する者だけが著作者とされている(中山信弘『著作権法』185頁)。
なお、放送・有線放送用の映画の著作物について、著作権の一部のみが放送事業者・有線放送事業者に帰属する(著作権法29条2項3項、中山信弘『著作権法』198頁)。
私見として、自動公衆送信は放送・有線放送から除外されるので(著作権法2条1項9号の4)、送信可能化権・自動公衆送信権の適用されるインターネット・テレビは、原則として、29条1項が適用されると解される。
設定デザイン・美術・キャラクターデザインの一部の作成に関与しただけでは、映画の著作者ではなく、製作過程を統括し、細部にわたって製作スタッフに指示を与えていたが著作者とされたと解された東京地判平成14・3・25宇宙戦艦ヤマト事件がある。
スポンサー・テレビ局・広告代理店との交渉を担当し、創作面で具体的な関与のなかったプロディーサーは著作者ではないとされた東京地判平成15・1・20超時空要塞マクロス事件がある。

○二次的著作物
二次的著作物とは、「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物」をいう(著作権法2条1項11号)。

○著作権共有の場合の権利関係
共同著作物、著作権共有の場合、準共有となるが、持分割合に応じた利用方法の設定(民法264条)について、原則として全員の合意を基本とする著作権法64条・65条は特則を定めている。

共同著作物のうち、著作者と表示されていない場合、氏名を表示するよう、氏名表示権(著作権法19条)、名誉声望保持訂正措置請求(著作権法115条)を行使できる。

(氏名表示権)
第19条  著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提供・提示に際し、その実名・変名を著作者名として表示し、又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、同様とする。
2  著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示することができる。
3  著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。

(名誉回復等の措置)
第115条  著作者又は実演家は、故意・過失によりその著作者人格権・実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者・実演家であることを確保し、又は訂正その他、著作者・実演家の名誉・声望を回復するために適当な措置を請求することができる。


(共同著作物の著作者人格権の行使)
共同著作物の著作者人格権は、著作者全員の合意によらなければ、行使することができない(64条1項)。
 共同著作物の各著作者は、信義に反して前項の合意の成立を妨げることができない(64条2項)。
 共同著作物の著作者は、そのうちからその著作者人格権を代表して行使する者を定めることができる(64条3項)。
 前項の権利を代表して行使する者の代表権に加えられた制限は、善意の第三者に対抗することができない(64条4項)。

(共有著作権の行使)
 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない(65条1項)。
 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない(65条2項)。
 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない(65条3項)。
 64条第3項及び第4項の規定は、共有著作権の行使について準用する(65条4項)。

ただし、共有著作権に関する保存行為、差止請求権、損害賠償請求権、不当利得返還請求権について、著作権法117条は、持分に関する限りで、単独行使できる旨を定めている。

 共同著作物の各著作者又は各著作権者は、他の著作者又は他の著作権者の同意を得ないで、差止請求(112条)、その著作権の侵害に係る自己の持分に対する損害賠償請求・自己の持分に応じた不当利得返還請求をすることができる(117条1項)。
 117条1項は、共有に係る著作権又は著作隣接権の侵害について準用する(117条2項)。


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