映画の著作物の著作者(監督)の著作者人格権と著作権者 - 民事事件 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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映画の著作物の著作者(監督)の著作者人格権と著作権者

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映画の著作物
第4 著作者と映画製作者(著作権者)が異なる場合
1 著作者の報酬
 著作者(映画監督)が映画製作者との間で、著作者が条件をつけ
、条件と異なる著作権の行使について、別途報酬を請求できるかと
いう問題があるが、著作者と映画製作者が締結した報酬支払契約の
解釈によって決まる(東京高判平成10・7・13)。

2 著作者人格権

2-1 公表権(18条1項)とその制限(18条2項1号3号)

(公表権)
第18条  著作者は、その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を
得ないで公表された著作物を含む。以下この条において同じ。)を
公衆に提供し、又は提示する権利を有する。当該著作物を原著作物
とする二次的著作物についても、同様とする。 ...
2  著作者は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に掲げる行為に
ついて同意したものと推定する。
一  その著作物でまだ公表されていないものの著作権を譲渡した場合
 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し、又は提示す
ること。
三  第29条の規定によりその映画の著作物の著作権が映画製作者に
帰属した場合 当該著作物をその著作権の行使により公衆に提供し
、又は提示すること。
3  行政機関情報公開法、情報公開条例などの場合には、公表権が制
限される(著作権法18条3項4項)。

 渋谷達紀『著作権法』115頁は、映画の著作物の著作者は失敗
作について公表しないように、著作権者に申し入れることができる
と解しているが、18条2項3号の例外があることの指摘が抜けて
いる。

2-2 氏名表示権(19条)

(氏名表示権)
第19条  著作者は、その著作物の原作品に、又はその著作物の公衆への提
供・提示に際し、その実名・変名を著作者名として表示し、又は著
作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作
物とする二次的著作物の公衆への提供・提示に際しての原著作物の
著作者名の表示についても、同様とする。
2  著作物を利用する者は、その著作者の別段の意思表示がない限り
、その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って著
作者名を表示することができる。
3  著作者名の表示は、著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者
が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認めら
れるときは、公正な慣行に反しない限り、省略することができる。


 著作者は、氏名表示権(19条1項)に基づいて、映画に著作者
の氏名を表示させるように申し入れることができる(渋谷達紀『著
作権法』115頁)。

2-3 同一性保持権(20条)とその制限

(同一性保持権)
第20条  著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有
し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないも
のとする。
2  前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、
適用しない。
一  第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)、
第33条の2第1項又は第34条第1項の規定により著作物を利用
する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、学校教育の
目的上やむを得ないと認められるもの
二  建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変
三  特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を
当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラ
ムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにす
るために必要な改変
四  前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的
及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変

 上記20条2項4号により、映画の著作物について、映画監督(
著作者)ではない映画製作者(著作権者)は、編集、放映時間にあ
わせた切除、放送媒体の制限(例えば、成人用、暴力・性描写など
の削除など)にあわせた切除・改変・トリミングなどをおこなえる
と解される。

 渋谷達紀『著作権法』115頁は、著作者は、映画の著作物につ
いて、テレビ放送用の編集について、同一性保持権に基づいて苦情
を申し入れることができると解しているが、20条2項4号による
利用の目的・態様などによる「やむを得ない改変」の例外の指摘が
抜けている。
2-4 名誉声望保持権(113条6項)
 著作者は、いかがわしい映画との併映を拒否したりできる(渋谷
達紀『著作権法』115頁)。

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