以前から独特の風味のドーナツに惚れ込んでいたMさんは、定年退職を5年早めて、ドーナツ屋での起業を目指しました。最初からこのドーナツなら間違いなく売れると思い込み、あまり事前の市場調査などはしないで、ドーナツ作りばかりに専念しました。
店舗のレイアウト、商品ラインアップ、価格設定なども深くは考えていません。知人から、それではビジネスにならないことを指摘され、慌てて地元の商工会議所を通じて経営指導員を紹介され、開業ノウハウを一夜漬けで学んで開業にこぎつけました。
後日、わたしも食べましたが、確かに普段食べているドーナツとは違って、他では口にすることのない美味しいドーナツでした。ただ、価格が周辺店舗よりも2割は高く設定いています。結局、退職金をつぎ込んだドーナツ店開業は6カ月で廃業しました。
最近、中高年の人が立ち上げる起業の中には、このような起業の基本を無視した起業が少なくありません。わたしも自分に言い聞かせていることですが、旨いものは売れる、よいサービスは売れるといった先入観は持たないことです。起業においては、まず実際に商品を購入してくれるお客さん自身に聞くべきです。
そこで、起業をするか、止めるか、前段階で判断を行なう、コンセプトテストの実施をお勧めします。コンセプトテストとは、まったく無関心の人を対象に、商品やサービスの説明を行います。その上で、説明を聞いただけで買いたくなるか、買わないかなど購買意図の聞き取りをします。
このとき、説明方法や価格設定などの調査も併せて行ないます。あくまでも、販売を決める前の段階ですが、このようなテストを繰り返すことでお客さんニーズが見えてきます。起業の準備段階で、失敗を重ねる方が痛手をなくせます。後から、取り返しのつかない大きな失敗をするよりは、早い段階で多くの試みをすることです。
【一言】
初めて起業する人の中には、起業面談のときに、自分が行うビジネスの内容を具体的に話さない人がいます。とても奇抜なビジネスアイデアと言うことで、誰にも話さず、秘密にして起業しようとしています。でも、お客さんには、どのように伝えますかと聞いたら、頭を抱えてしまいました。ビジネスでお客さんに売る以上は、お客さんには商品やサービスを知ってもらうため、宣伝広告で公にする必要があります。あまりの秘密主義のため、お客さんにまで秘密にするところでした。
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