- 中村 英俊
- 株式会社第一広報パートナーズ 代表取締役 広報コンサルタント
- 東京都
- 広報コンサルタント
対象:広報・PR・IR
- 中村 英俊
- (広報コンサルタント)
- 中村 英俊
- (広報コンサルタント)
広報担当者にとって、正式発表前にスクープ記事が出てしまうことは往々にして起こることですが、こうした事態が発生すると、マスコミからの問い合わせ対応はもちろんですが、会社としての公式見解(ニュースリリース)をまとめる作業が発生する場合があります。
最近も「NTTドコモがiPhoneを発売へ」という記事が、9月6日付の日本経済新聞と朝日新聞の1面トップで報じられました。(その日の夕刊で毎日新聞と読売新聞が後追いしています。)同じ日の日経の企業総合面には、「サントリー食品が英製薬大手の飲料ブランドの買収交渉を行っている」という報道もなされていました。
東京証券取引所の「適時開示情報閲覧サービス」を見ると、どちらも同じ「本日の一部報道について」というタイトルでNTTドコモは「本日、一部報道機関において、当社がアップル社の「iPhone」を発売する旨の報道がありましたが、当社が発表したものではございません。また、現時点において、開示すべき決定した事実はございません。」と8時40分に発表しました。
また、サントリー食品も「本日、一部報道機関において、サントリー食品インターナショナル株式会社によるグラクソ・スミスクライン社の事業の一部買収に関する報道がなされましたが、当社が発表したものではありません。現在、当社は将来を見据え、同事業を含む様々な戦略投資等、成長にむけたあらゆる可能性について検討しておりますが、当社として決定した事実はございません。」と9時45分に発表しています。
こうしたコメントは、正式な発表を経ずにインパクトの大きい記事(例えば日経1面)が出た場合、東京証券取引所が記事内容についての事実関係について、株式市場への影響を考慮して、会社としての公式見解を出すように求められるために行われます。
上記のケースでは、両社とも「当社が発表したものではない」、「決定した事実はない」とあり、記事の内容については正しいとも間違っているとも書かれていません。経験上、その後の正式発表までのいわば「つなぎ」の役目を果たしており、報道されたことが概ね事実なのだということを示唆しています。(まれに、その後の発表がなく、結果として誤報となったケースもあります。)
結果として、サントリー食品は9日夕方に同社の社長が記者会見を行いましたし、NTTドコモもアップル米本社において新iPhone発表イベントが10日(日本時間11日午前2時)に行われたのを受けて、連名のリリースが出されました。
ところで、来年4月からの消費税増税について、9月12日付の読売新聞1面で「消費税 来年4月8%」との大見出しで、安倍晋三首相がその意向を固めたという記事が掲載されました。リリースこそありませんでしたが、菅義偉官房長官は同じ日の午前の会見の中で、安倍首相が増税について「決断をしたという事実はありません」と説明しましたが、毎日新聞などが同様の報道を夕刊で行いました。
これに対し朝日新聞は、同じ日の夕刊で「経済対策を見極めた上で最終判断する」と伝え、読売新聞とは内容に温度差が感じられる報道となりました。1週間後、産経新聞が19日付朝刊で、また日経新聞も同じ日の夕刊で消費税引き上げの方針を報じました。
この結果、主要紙では朝日新聞以外が引き上げを伝えことになりますが、21日付の朝刊でようやく、これを報じました。各新聞社のスタンスに違いが見られたという点で興味深い事例です。
橋本拓志
広報コンサルタント
Twitter ID:@yhkHashimoto https://twitter.com/yhkHashimoto
クリックをお願いします!
このコラムに類似したコラム
緊急記者会見の設定時間 中村 英俊 - 広報コンサルタント(2013/09/11 08:34)
広報に求める事 中村 英俊 - 広報コンサルタント(2013/07/12 10:30)
書かれる覚悟 中村 英俊 - 広報コンサルタント(2013/06/21 10:25)
新聞の「面別接触率」 中村 英俊 - 広報コンサルタント(2013/12/05 07:23)
不祥事における経営トップの説明責任 中村 英俊 - 広報コンサルタント(2013/11/20 12:09)