細い方が幅20mmで、だんだん広くなって最後は幅65mm。
オープンハウスのときカミさんから、
「へー、こういう建具を作るのはあなたにしては珍しいね。なんでこうしたの?」
と訊かれたのだが、うまく答えが見つからなかった。
なんとなく でも 確かに、ここはグラデーションがいい、と思っていたのだった。
それから数ヶ月経って、ようやく自分でもわかった。
僕はここに『時間』を創り出そうとしていたのだ。
この家の居間は、奥様のお仕事であるリーディングのお客さんを招く場としても使われる。
来客にとっては、この居間は聖なる場所。
その部屋にたどり着くまでには、心の準備のための長いトンネルが必要なのだ。
たった一歩、1帖ほどの踏込みだが、グラデーションの効果と相まって、
そこに時間が流れる。
実際にはそれは1・2秒のはずだが、目がグラデーションのガラスに遊ばされることによって、
それが訪れるひとの心の内部で充分な心理的奥行きとなる。
そしていま、この文章を書いていたらもうひとつ気が付いた。
じつは、この踏込みと建具は、無意識のうちにバラガンのギラルディ邸がモチーフになっていたようだ。
この踏込は居間とおじいさんの和室との接続ともなっているので、
当初からの思いであった「おじいさんの部屋をハナレ的につくる」ということにもズバリ合致している。
ここはやはり長い渡り廊下なのだ。
リフォームという不自由のおかげで、人間の能力は引き出されるみたいだ。
http://www.sunaga.org/works/tsukinoie.htm
このコラムの執筆専門家
- 須永 豪
- (長野県 / 建築家)
- 須永豪・サバイバルデザイン
響きあう木の空間
森や山と人、地球が健全に回っていく様子を見届けたい。 木を街に届け人の営みに森をもたらし木が、森が、地球が、生命が、人が、そして星々や宇宙までもが響あいはじめるそんな木の建築空間宇宙の意図が起動する響きあう木の空間をつくろう
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