【人の絆を育む家】の続編です。
4. リビングダイニングスペースと個室との対比
つづいて、LDについて考えます。先ほどのヤマアラシの話で注目したいのが、「体を寄せ合う方が暖かい」という点です。住宅で考えると、個室に一人でいるよりLDで「一緒に過ごす方が楽しい」と感じられること意味します。そのためには、個室とLDは似たような空間ではなく、双方の特徴の差が明確な方が望ましいといえます。個室は一人でいるための必要十分な場所と割り切り、広くなく、特段に居心地がよくもなく、一方LDこそ、広くゆとりがあって、何をおいても居心地がいいことが大切です。個室の面積を絞りその分LDを広くする、個室はあえて天井を低く抑えることでLDの天井が高く感じられるようにするなどメリハリをつけ、両者の個性を対比的にすればするほど、お互いを引き立て合うことになります。
さらに、個室とLDの配置を工夫すると、両者の役割をより明確にすることができます。たとえば町の広場を家が囲むように、広いLDの周りを小さな個室が囲むような配置にすると、一人一人が家の一員であることが自ずと感じられてきます。さらにLDを1・2階吹抜の大空間にしてその吹抜と個室との境の壁に窓をあけると、LDと個室との交流が生まれ、両者の関係性が一段と深まります。複数の個室が廊下にただ並ぶだけではいかにも隣同士という近さが気になるものですが、大きなLD空間と各個室との関係がしっかりと位置づけられると、個室同士の近さは気にならなくなります。
階段や廊下といった移動の場をLDの中に組み込むことも、とどまる部屋としての個室とそれ以外の家のほとんどの場を包むLDという両者の対比をより鮮明にします。昨今、家づくりにおいて子どもの引きこもりを防ぐ意味から、玄関からLDを通らないと個室に行けない例が増えてきました。親の目にふれなければ個室に入れないという機能上の効果はもちろんのこと、LDが家の中心であることが自ずと感じられる点でも効果的だと思います。
窓の開け方によって、個室とLDとを対比させることができます。個室の窓は機能上必要十分な大きさがあればいいと思います。一方LDは広がりが感じられるように、大きな窓で庭とのつながりを感じられるようにしたり、空を切り取るように高窓を開けることでさらなる開放感を生み出すなど、個性的で特徴ある空間にしていき
ましょう。
(つづく)
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- 西島 正樹
- (東京都 / 建築家)
- 西島正樹/プライム一級建築士事務所 建築家
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