- 磯部 茂
- 有限会社ペア・ファクトリー 代表取締役
- 神奈川県
- コピーライター
-
046-242-8248
対象:広告代理・制作
- 山藤 惠三
- (クリエイティブディレクター)
- 山藤 惠三
- (クリエイティブディレクター)
いきなり偉そうな奴にこう問いかけられると、
こちらも返答に困る質問ではあります。
金で解決できそうなものもあれば、
そうでないものもポツポツあるような…
で、
この宝くじの新商品「ロト7」のTVCMのシーンは、
走るハイヤーの車内から始まる。
車中で、部下の妻夫木君が、
上司の柳葉さんに話かける。
「部長はロト7って知ってます?」
「知らないな」
つれない返事を返す柳葉。
が、なおも熱心に説明する妻夫木。
ここで、なにげにロト7の特長が語られる仕組み。
うまいな。
で、みるみる柳葉の顔がこわばる。
そして、
いい加減にしろとばかりに、柳葉がこう返答する。
「なあ…。お前の夢は金で買えるのか?」
……………!
カッコイイ!
ここんとこは、柳葉の見せ場である。
クールにキメテイル。
が、あめ玉を入れているような口が、やはり尖っている。
眼光鋭く、あれっ、室井さんか?と思いましたが、
妻夫木君が「部長」と問いかけるので、あっ部長なんだなと…
で、キャラ全く同じ。
柳葉は、もうずっとこれでいくのだろうと。
これで食っていけると思いますよ。
このキャラは、権利と同等の価値がある。
、
著作権ビジネスにも相通ずるものがありますね。
さて、1人になった妻夫木が、つぶやく。
「かっこいい。やばい、涙出そう」
と、ふと見た先の宝くじ売り場に、
なんと、
あの柳葉部長がいるではないか?
バツの悪いシーン。
双方の驚きの表情が印象的だ。
で、ここんとこが笑える。
で、一体このコミカルさはなんだろうと。
思うに、
建て前がもつおかしさなのではないかと…
部下の手前、カッコつけた柳葉部長の見栄も、
渋さとなる。
が、根本は建て前がもつ胡散臭さか。
私たちは、本音と建て前を使い分ける。
そこんとこは、痛いほど分かる。
ムカシからそうしてきた。
幼い頃、母が「つまらないものですが」と言って、
誰かに折り詰めを渡していたのを思い出した。
つまらないものか?
私は、このやりとりは変だと直感したが、
後々やはりこれでいいんだと…
そうして育ちました、ハイ。
そんな国の建て前を凝縮したような柳葉部長だが、
その彼の本音が丸見えになったとき、
下世話な私たちは笑えると同時に、
心底安堵する。
世の中、夢というか、
まあ、金でなんとかなるものもあれば、
そうでない奥深いものはいくらでもある。
そんなこと、観ている側は、当然織り込み済み。
が、ロト7という商品を鑑みるに、
このCMが観る人を笑わせ、油断させ、
本音のところを引き出して、
あわや宝くじ売り場へ向かわせようとする。
つくり手の、ある意味自虐的な発想も、
功を奏している。
充分、喚起力がある作品。
ちょっと褒め過ぎか。
このコラムの執筆専門家
- 磯部 茂
- (神奈川県 / コピーライター)
- 有限会社ペア・ファクトリー 代表取締役
ひとの心に、化学反応を!
広告って心理学?…これホントです。謎を紐解く。広告作りは、ここに集約されると言ってもいいでしょう。売る仕掛け、アクションのスイッチ。このマーケティングの核を探ることは、人の心の広い海原を旅することと似ています…。
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