堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
殺人を無罪にする方法1 誰も信じられなくなるドラマ
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殺人を無罪にする方法アメリカ フィアデルフィアの名門ミドルトン大学大学院の法律教室の教授でもある黒人女性の凄腕弁護士アナリーズと、その学生5人が主人公の法廷ドラマです。
アナリーズが、法律の、特にどんなことを専門に弁護士をしていて、何を学生に教えているかと言うと、まさに「殺人を無罪にする方法」です。
まぁ犯罪者を弁護するのですが、刑を軽くするどころか無罪を勝ち取る事に誇りを持っている敏腕弁護士なわけで、無罪にすると言う事は、他の誰かに罪をなすり付けたりとか、かなりダーティーな手段を使って罪を逃れされるわけで、勧善懲悪の正義の味方という単純な話にはなりません。
基本的には無実の依頼人の弁護をするのですが、無実を訴える依頼人が実は犯罪を犯していたりして、アナリーズもだまされると言うか裏切られたりするのです。
アナリーズいわく
「司法制度は必ずしも正直者の味方ではない。真実を捏造する力を持つものが勝つ」
と言い放ちます。
授業では殺人を無罪にする方法として
その1 検察側の証人のスキャンダラスな面を暴き立てて、人間性をおとしめてその信頼性を無くす。
その2疑わしい容疑者を作り出す。
その3証拠は埋没させる。
と教えます。
学生の中でも特に優秀な5人を集めて、勉強を兼ねて自分の弁護士の仕事を実地体験で手伝わせます。
ビシビシと。
そんな設定ですから、この女弁護士さんも鉄の女というか、冷血というか、とてつもないキャリア志向ですし、集められた学生達もエリート意識満々のいやみな人たちがほとんどで、見終わった後「爽快な気分だ~」とはならないかも知れません。
1話完結のドラマと並行して、シーズン全体を通して絡んでくるある事件があります。
例えば第2話の1話完結する話では依頼人のマックスと言う男性は、自宅で再婚した妻がナイフで刺し殺されているのが発見され、犯人として起訴されてしまいます。アナリーズも学生達もマックスが犯人であろうと思っていますが、無罪にするために犯行現場に駆けつけた警官の一人が飲酒状態だったことを突き止め、飲酒した警官が発見した凶器のナイフでは証拠にならないとして無罪を求めます。
ダメ押しとして、マックスの知人に、その知人が奥さんに内緒でストリップショーを観に行っていた事を探り出し、そのネタで男性を脅して、マックスのアリバイ証言をさせたりします。
裁判は有利に進むかに思えましたが、検察側が突然の証拠としてマックスが過去にスイスで最初の妻を刺し殺した容疑で起訴され、証拠不十分で無罪になっていた事実を提出します。
何も知らなかったアナリーズ達は驚愕し、手詰まりとなります。
でもあきらめません。
そして衝撃のクライマックス。
マックスの最初の妻は、動物の解剖に手馴れたハンターによる犯行であることを検死の専門家に証言させ、ついで再婚した妻の死体を解剖した結果はど素人が刺した傷口であることを指摘し、同一犯の犯行ではないと主張します。
そしてマックス自身に自分の趣味がハンティングであり、最初の妻を殺害したのは自分であることを裁判の最中に証言させ、無罪となります。
スイスでの事件は、一度無罪となっているために、今白状しても罪に問われる事はありません。
別の殺人の犯人である事を証言することで、今裁かれている殺人事件から無罪を勝ち取ったのです!
真相は、最初の妻に、後に再婚して妻になる女性と不倫していることがバレ、思い余って最初の妻を殺害してしまいました。その事実を知ったマックスの娘が、自分のお母さんの敵を打ち、裏切り者の父親に罪をなすりつけるために行った殺人事件だったのです。
アナリーズは、依頼人が無罪にさえなれば良いので、真実を訴え、娘が真犯人として逮捕されるまでにはなりませんでした。
そしてシリーズを通して描かれるストーリーとしては、チームアナリーズの黒人男性学生の一人、ギビンズが、新しい住居であるアパートに越してきて、何やらわけありそうなティーンズの隣人の女の子レベッカと出会うところから始まります。
そして大学のお祭りのようなイベントの中、チームアナリーズ達は、犯罪に巻き込まれ、証拠を隠蔽しようと相談しているようなシーンがフラッシュバックのように挿入されます。
最初はまったくそれが、どんな事件なのかわかりませんが、回を追うごとに少しずつアナリーズのご主人サムや、隣人のレベッカが関係していることが明らかになっていきます。
サスペンスドラマでは、非常に登場する頻度も高い弁護士という仕事。
容疑者はすぐに「弁護士を呼んでくれ」と言いますし、何か法を盾に犯罪者を守る悪役の仕事のような気さえしてきますが、ついに本格的にその悪役が主人公になるのがこのドラマです。
ドラマの法則として主人公は自分なりの正義を貫く、とか仲間同士では、ドラマを盛り上げるために一人くらい裏切り者がいたにせよ、基本助け合って目的を遂行していくみたいなものがあって、観ている方もハラハラドキドキはしながらも、どこか安心して観ている物かと思います。
ところがこのドラマは、主人公のアナリーズも、どこまで信じて良い人物なのかわからず、どんな展開になるかわからないので、良い意味で観ている私たちを衝撃的に裏切ります。
エリート学生達も、自分の安全を優先したり、仲間を出し抜いて自分だけ栄光をつかむ事ばかり考えていたりするので、友情とかは生まれません。
そう言う意味ではかなりリアルなのです。
「事実は小説より奇なり」と言いますが、このドラマでは「ドラマは、事実と同じくらい奇なり」と言えるでしょう。
段々登場人物の誰の事も信用出来ない展開になっていきます。
ただ一人、この人だけは善人だろうと思えるのは、サブ主人公のギビンズくらいです。
アメリカドラマの舞台となるのは、割りとお金持ち、セレブの日常を描いたような物が多いようですが、大抵スキャンダラスで、ドロドロしていて、それが人間らしいと言えば人間らしいとも言えるし、ワイドショー的野次馬に受けそうな内容だったりするように思います。
私には、何か平気で人を裏切れたり、出し抜いたりすることが出来る人じゃないと、出世したり上には行けないみたいなイメージがあります。
「天使と悪魔」では、人の裏表について書いていますが、
「殺人を無罪にする方法」では、「人間不信」と言うようなテーマで、引き続きブログを書いてみようと思います。
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