堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
インターステラー 1 偶然とは思えない偶然な出来事が起こる現象について
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インターステラー
『ダークナイト』シリーズや『インセプション』などのクリストファー・ノーラン監督が放つSFドラマ。主演はマシュー・マコノヒーを筆頭に、『レ・ミゼラブル』などのアン・ハサウェイ出演。
近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが進んでいた。
そんな状況で、あるミッションの遂行者にテストパイロットのクーパーが大抜てきされる。
そのミッションとは、宇宙で新たに発見された人類が移住できる可能性がある未開地へ確認をするために旅立つというものだった。
地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。
悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。
壮大なテーマの基、相対性理論や量子力学に基づき、忠実に宇宙が描かれ、そのストーリーには家族愛、可能性を求め諦めないこと、人類救済を導いている高次の未知の存在などが絡み合い、観終わった後の余韻はかなりのものでした。
クーパーの娘マーフィーは、「そんな危険な任務に付かないで、一緒に地球に留まること」を願いますが、クーパーが「必ず帰って来る」と言い残したものの、結局旅立った事で「自分は見捨てられたのではないか」と疑念を持ちながら、その後の人生を生きてしまいます。
冷凍冬眠装置やら、相対性理論にのっとり、宇宙船内で活動しているクーパーたち乗組員は歳を取りませんが、地球上では50年くらい経過してしまっており、果たして娘達人類が滅んでしまう前に、本当に地球に帰還できるかどうかが、手に汗握る展開となります。
さて今回のブログでは、見た方々のレビューにはあまり触れられていない
「偶然や奇跡と言ったものを科学的心理学的な解釈で描いた作品」
あるいは
「神とは進化した未来の人類のことを指しているのではないか?」
と言った側面で、このインターステラーについて書いてみたいと思います。
物語のまだ冒頭、クーパー家のマーフィーの部屋にある本棚の本が、度々誰もいじっていないのに、本が落下しているという怪奇現象?が起こります。
そんなある日、砂嵐が街を襲い、窓を開け放したままだったマーフィーの部屋も、砂がもうもうと立ち込めてしまいます。窓を閉めたマーフィーの目に飛び込んできたのは、まるでバーコードの模様のような規則的な模様が描かれている床の砂でした。
数学の才能のあるマーフィーは、その暗号を解読し、それが示すものが砂漠のある地点の座標である事を突き止めます。
そこに何があるのか?皆目検討が付かないまま、クーパーとマーフィーがその地点に行ってみると、そこはなんと解散されたはずのNASAの基地があったのです。
NASAではクーパーも顔見知りの科学者達が、人類の生き残る可能性を求めて研究を進めています。
そして人類が移住できる惑星を求めて宇宙船を飛ばす計画に、クーパーがパイロットとして白羽の矢が立つこととなります。
ここから一気に宇宙中心の話となるのですが、あの怪奇現象はいったい何だったのか?
エンディング近いクライマックスでその謎が明かされます。
以下、かなりネタばれがあります。
ミッションの最終ゴール地点である土星近くのブラックホールに、クーパーの乗った脱出用小型宇宙船が飲み込まれてしまいます。
もはやこれまでか!と思われた時、そのブラックホールこそ未知の宇宙的な存在が作った5次元世界への入り口だったのです。
私達の生きているこの世界は、縦横斜めの立体3次元に、時間の観念をプラスした4次元で成り立っているのですが、そこに過去の時間が付け加わった5次元の通路が開かれていたのです。
具体的に言えば、クーパーはそこで、過去の自分が地球にまだいた頃のマーフィーの部屋を、本棚の裏側からのぞいていたのです。
その部屋にいるマーフィーに、何とか自分の存在に気付いてもらおうと本棚の裏側から本を何冊か落とします。それがあの怪奇現象の正体だったのです。
そして今度は、砂がもうもうと流れ落ちる部屋で、やはり手を差し伸べて砂を遮ることで、文様を作り、NASA基地がある位置座標を教えたのも、クーパー自身でした。
クーパーは悟ります。この5次元の通路を作り、自分をそこへ導いた存在こそ、地球滅亡の危機を生き残り、科学的な発展を遂げた未来の人類であることを。
「2001年宇宙の旅」では、まだサルでしかなかった人類に、知恵を授け飛躍的な進化をもたらせたものは、地球外知的生命体として描かれていましたが、
このインターステラーでは、未来の自分たち人類こそが、その宇宙的な存在であったような解釈で描かれているようです。
そしてクーパーは、その通路をもう少し先の未来に移動して、もう大人になったマーフィーに、人類存亡の鍵を握る「ある情報」を伝えようとします。
文章では上手く伝わらないと思いますが、ここら辺の映像化は実にわかりやすく、尚且つ素晴らしいものです。
そしてマーフィーも、それが父からのサインである事を悟ります。
父は約束を破らなかった。
父さんは私を捨てて宇宙に行ったわけではなかったと。
インターステラーでは様々な科学的「物理学」の法則に則ったリアルなストーリーが描かれているのが印象的ですが、私の感想としては物理学だけではなく、心理学的な「ある命題」に対しても、ある種の回答を出しているように思います。
さて、みなさんは、ある出来事に対し、怪奇現象とまでは言わないにしても、単なる偶然とは思えない「何かの力が働いたのではないか?」としか思えないような経験をされた事はないでしょうか?
例えば、「ふっと頭にある友人の顔が浮かんだら、次の日にばったりその本人と出くわした」とか、
家でバターンと大きな音がして驚いていたら、家族が入院している病院から電話があって、今亡くなったと知らせが来た、とか。
そうした現象を心理学者のユング博士は
「共時性・シンクロニシティ」と名づけ研究しました。
予知能力とか、超能力と言った事とは少し違います。
「ふっと頭にある友人の顔が浮かんだ事」と「次の日にばったりその本人と出くわした事」とは、科学的に言えば、何の因果も無いはずです。
因果律と言うのは、原因と結果が証明できるような出来事のことで、
「雨が降ったから、傘がよく売れた」と言うような事です。
しかし、「顔が浮かんだから、実際に次の日ばったり会った」という例を因果律に当てはめて考えるのは無理があります。
共通な時間を通して、偶然とは思えないような2つの出来事が、同時に結びつくように起こった。
それは、単なる偶然としてしまうには、何か関係がありそうに思えてしまいます。
「その何かとは何か?」を探索してみようとしたのがユング博士です。
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