堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
ウロボロス 1 人間の表の顔と裏の顔
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ウロボロス この愛こそ、正義
普段は冴えない刑事だが、圧倒的身体能力を持ち、一旦スイッチが入ると常人離れした格闘能力で悪を粉砕する主人公の龍崎イクオを演じるのは、2008年7月期の『魔王』以来6年半ぶりのTBSドラマ主演となる生田斗真。
また、イクオの相棒で明晰な頭脳とクールな立ち居振る舞いで裏社会をのし上がっていくヤクザ・段野竜哉を小栗旬が演じる。 TBSホームページより
生田さんと、小栗さんは、子供の頃、お互い両親がおらず、「まほろば」と言う施設に引き取られましたが、そこには結子先生(広末涼子さん)と言う親切で温かい先生がいて、みんな家族のように平和に暮らしていました。
ところがある晩、銃声が鳴り響き、結子先生が何者かに射殺され、捜査に来た警察も、なぜか事件をうやむやにし、無かったことにしてしまうのでした。
20年後、2人は「法の番人」と「闇の住人」として暮らし、密かに「まほろば事件」の真相を暴き、結子先生の復讐をするために情報を収集していたのでした。
調査をするうちに、どうやら「金時計」を腕にはめている警察上層部のエリート集団が、この事件に関与しており、「まほろば」は臓器売買のために集められた子供たちを集めておく施設だったのではないかとの仮説に至ります。
そして2人が慕っていた結子先生も、実は「公安」の職員だったことがわかり、単純な善意のやさしい先生の顔だけではなく、秘密の命令に従い任務を遂行する使命があったらしい事が見えてきます。
警察組織の権力争いも絡み、黒幕が誰なのか?クライマックスに突入していきます。
正義を貫くために、目的を同じくした2人の青年が、政治家とヤクザになり、日本を変えようと活躍する『サンクチュアリ』という、史村翔原作、池上遼一作画の漫画を彷彿とさせる熱いドラマですね。
ウロボロスとは、2匹の蛇(龍)が、お互いの尻尾を噛み、環となった状態を図案化したもので、その意味するものは、ヘビは、脱皮して大きく成長するさまや、長期の飢餓状態にも耐える強い生命力などから、「死と再生」「不老不死」などの象徴だそうです。
そのヘビがみずからの尾を食べることで、始まりも終わりも無い完全なものとしての象徴的意味が備わった、そうです。
というようなものがあるように感じました。
2人で一体であるイクオと竜哉が象徴的に「法の番人」と「ヤクザ」と言う、光と影のような存在です。
黒幕であろう警察官僚も、「国民を守る」善なる使命と「臓器売買」に関わる悪の顔を持ち、それを隠蔽するために関係者たちを次々に闇に葬ろうとしています。
イクオと竜哉の心の拠り所であったはずの結子先生も「優しい先生」としての「太陽」のような顔と、「公安」としての謎に満ちた「月の」ような影の顔を持っていたようです。
このドラマでの「ウロボロス」の象徴する意味は、そうした「善と悪」「光と影」「太陽と月」のような相反するものが一つの環となって初めて「完全」となることを示しているのではないでしょうか?裏と表が繋がっている、「メビウスの輪」のようですね。
バラエティ番組で番宣に出ていた生田斗真さんが、
「以前からこの原作の漫画が好きで、いつかドラマ化する時は、竜哉役は小栗さんに頼もうと思っていた」
というような事を言っていたので、生田さんの企画が活かされたドラマ化だったのかも知れません。
生田さんの意向で、どこまで出演作品を選ぶ事が出来るのかわかりませんが、生田さんの作品にはこうした「ウロボロス」的なテーマが多いような気がします。
こうしたテーマ性があるものが好きなんでしょうか?
ドラマ「魔王」では嵐の大野智さん(生田さんとw初主演ドラマ)演じる弁護士が「法を守る番人」としての顔を持ちながら、実は自分の「いじめが原因で死んでしまった弟」の復讐のために、他人の戸籍と入れ替わり、別人となっていじめの関係者たちを罠にはめ、次々と破滅させていくと言うドラマでした。
もともとは韓国の大ヒットドラマの日本版リメイクです。
韓国作品の監督さん達は、人間の内面的なエグい部分を描かせたら、すばらしい腕がありますね。
生田さんは、そのいじめに関与していた仲間の一人であると言う過去を持ち、今は刑事として大野さんを追い詰めて行く役どころでした。
ですから、大野さんに対して贖罪の念と、仲間を破滅させた憎き敵という憎悪の念と言う、複雑な心理を抱いている陰影のある役どころでした。
2008年放映でしたから、7年も前の作品になるのですね。
大野さんは何だか冷酷な役が似合っていると思えず、生田さんも熱血すぎて「なんだかなぁ・・・アイドルのドラマだからこんなもんか?」と思った観ていたのですが、中盤から、もう毎回号泣しながら感動してしまったものでした。
ドラマって1クール長いですから、最後まで観て見ないとわからないものですね。
特に、大野さんが、入れ替わった戸籍の人物に成りすまし、その人物の、長い間入院生活をしている盲目の姉(演・優香さん)に会いに行くシーンが何度かあります。
姉は盲目なのと、一時期大野さんが音信不通だったせいで、弟が入れ替わった事に気付いていません。
そんな姉を大野さんも慕っていて、定期的に見舞いに行っていたのでした。そして、生田さんにある証拠を掴まれ、正体がばれそうになっている中、また姉を見舞いに行きます。
すると、実はお姉さんは、とっくに大野さんが別人である事がバレているのですが、大野さんを庇い、警察にウソをついてくれたことで、危機を脱します。
お姉さんは「あなたは本当の弟のようにいつも私を思いやってお見舞いに来てくれたわね。嬉しかった。だからあなたは今はもう、本当の弟なのよ」みたいなセリフを告げます。
なんか文章だと伝わらないと思いますが、琴線に触れるシーンでした。
私が一人っ子で、お姉さんが欲しかったからかも知れません。
そして映画「脳男」
都内で連続爆破事件が起きるのですが、その容疑者のアジトに警察が踏み込むと、その容疑者とは別の謎の人物、鈴木一郎(演・生田さん)が居合わせており、容疑者はアジトを爆破して逃走、鈴木一郎だけが警察に確保されてしまいました。
調査をしているうちに、この鈴木一郎なる人物が、幼いころからある種の脳の障害のために
「感情がなく」
「類稀な記憶力で、あらゆる知識をコンピュータにインストールするがごとく吸収し、身体能力や格闘技の技術も習得でき」
「痛みを感じない無痛症であり」
「指示をしないと、トイレにも行こうとしない機械人間のような」
少年時代を過ごしていた事がわかります。
お金持ちである養父に「正義のために戦う、自分の意志も感情も持たない殺人機械」としてプログラムされたダークヒーローなのでした!
そして逃走した爆弾魔(演・二階堂ふみさん。すごいキレた演技でド迫力)と再度戦う事になるのです。
しかし、感情がないと思われていたにも関わらず、彼の生い立ちに同情し、涙してくれた精神科医(演・松雪泰子さん)のために、初めて自分の意志で、ある殺人を行うシーンで映画が終わります。
「意志も感情も持たない虚無の住人・静」と「正義のために活躍するヒーロー・動」の狭間を行き来する、異色な主人公のアクション映画でした。
映画「土竜の唄(もぐらのうた)」
コメディー映画なのですが、警察の潜入捜査官として暴力団の一員となり、ヤクザとして出世して行きながら、警官としての職務を遂行していく役どころでした。
ヤクザとしての男の心意気を見せる為に、全裸で車のボンネットに縛り付けられ、街中を疾走させられるシーンは爆笑でした。
2015年11月公開予定映画「グラスホッパー」原作小説・伊坂幸太郎さん
妻を轢き逃げした男に復讐するために中学校教諭を辞し、その男の父親が経営する裏社会の会社に入社した鈴木(主役・生田さん)。
ところが、男は自分の目の前で車に轢かれてしまった。
裏社会には、ちょいと人の背中を押して、事故に合わせる「押し屋」と呼ばれる殺し屋がおり、何者かの依頼で「押し屋」が先に男を始末してしまったのです。
男の父親である社長(早い話がヤクザ)に命じられるままに押し屋の後を尾行した鈴木だが、待っていたのは妻と幼い息子のいる家庭だった。
意外すぎるその温かい家族に戸惑う鈴木だが、会社からは「早く息子の敵を討つために押し屋のいる場所を教えろ」と電話がかかってくる。
一方、人を自殺したい気持ちに誘導する自殺専門の殺し屋・鯨は過去を清算するために、
ナイフ使いの殺し屋・蝉は手柄を立てるべく、やはり押し屋を探していた。
ヤクザと鯨と蝉を相手に、鈴木の、押し屋をめぐる三つ巴の命がけの知能戦が始まった!みたいな映画が公開されます。
平凡な教師が復讐のために裏社会の住人になる。
そして押し屋の「温かい家庭」と「血なまぐさい闇社会」の狭間を、ここでも行き来するはめになる役どころですね。
伊坂幸太郎さんの小説は、好きでよく読んでいます。
ちょうど今も、「魔王」(ドラマになった「魔王」とは全然別のお話し)の続編として書かれた「モダンタイムス」という作品を読んでいます。
物語が一体どういう方向へ向かって行くのか、予想も出来ないまま沢山の伏線が描かれて行き、最後、一斉に一つに収束されて行く様が爽快に感じられます。
映像化された作品もすばらしいですね。
陽気なギャングが地球を回す
アヒルと鴨のコインロッカー
フィッシュストーリー
重力ピエロ
ゴールデンスランバー
「グラスホッパー」も大いに期待したいところです。
こうした「表の顔」と「裏の顔」と言ったものを、精神分析家は「シャドー」と呼んでいます。
有名なユング博士が提唱した概念です。
続く
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