堀江 健一
ホリエ ケンイチグループ
イヤなことを「イヤ!」と言えない人に出る「身体の症状」
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前回のコラムでは、アレルギー症状について書いてみました。
そうしたアレルギー症状を臨床心理学的な視点から診てみますと、
●「敵」と「味方」の見分けもつかなくなってしまって、とにかく自分以外の「他のもの」に対して「敵」として攻撃してしまう、排除しようとしてしまう。
●そばやリンゴ、小麦粉など、意識では自分の好きなものまで、「自分にとって害があるもの」と謝った認識をしてしまって排除しようとしてしまう。
●自分自身の一部であり、大切な働きをしているものまで排除しようとしてしまう。
●本当の「敵」を見抜いて、自分を守る力が弱くなってしまっている。
といった心理状態があり、それが身体の症状として現れているのではないか?と解釈します。
もう少し具体的に、日常の心の流れを例にあげてみましょう。
学校や職場など色々な人がいますから、誰が自分にとって「敵」か「味方」か?を見分けて、付き合うかは難しいものですが、生きて行くにあたって大切な能力と言えるでしょう。
多くの「味方」がいてくれれば、安心感も大きくなるものです。
できれば「敵」は少ない方が楽ですよね。
でも他人と知り合った時に、あまりに警戒心が強くなってしまっていて、良く知りあえば「友達」になれるかも知れない相手に対してまで臆病になり、避けたくなってしまう場合もあるでしょう。
私も社交的ではないし、小心者です。学会などあると、その後懇親会というパーティーが付き物なのですが、気易く初対面の人に話しかけたりするのは大の苦手で、なるべく出席せずに帰ってしまったりします。本当は、知りあいを増やして、人脈を広げた方が良いとは思うのですが、なかなかできません。
過去にも「お見合いパーティー」にも何度か出た事がありましたが、大抵、5分間ずつ身近にいる女性と自己紹介して、それを次から次へと繰り返すという形式で、フリータイムになったら、そのうちの気が合いそうな方とゆっくりお話しするのですが、その次から次へと初対面の女性と話をするというのが、苦手で、次第に苦痛になってしまい、もう止めてしまいました。
「自分がモテるかも」なんて思えていないですから、他に出席している男性達がすごく脅威にも思えて気おくれしてしまいます。女性からも「見向きもされないんじゃないか?」と不安になり、逃げ出したい気分でした。
しかも、目の前にチャンスがあるかも知れないのに、それを活かせない自分に「自己嫌悪」まで感じて来て、落ち込んでしまったり。
今にして思えば気負い過ぎで、自意識過剰なだけだったのでしょう。
「お見合いパーティー」って社交的で、押しが強い方々には良い出会いの場として機能するのでしょうが、そうでない人には試練の場ですね。良い訓練にはなる気はしますが、無理やりがんばって作り笑いなどしていると、自分が自分でなくなって行くような気分にさえなるもので、合わない人には合わないと思います。
話を戻して、過去に「味方」と思っていた人に裏切られ「敵」に回られてしまった経験などあれば、余計に「敵」だろうが「味方」だろうが、信用できない、と思う様になっても無理は無いかも知れません。
誰が近づいて来ようとしても、「近づけさせない」という過剰攻撃をしてしまっている事があるかも知れません。
そうした防御態勢が強くなってしまっていたら、例えあなたが「仲良くなりたいなぁ」「好きだなぁ」と思えるような相手であったとしても。「自分からは仲良くしよう」とは決してしなかったり、「相手が、仲良くしようよ」と接近してきても避けてしまうかも知れません。好きなものにさえ攻撃してしまう心理がそこに働いてしまうことになります。
「壁を作って」しまったり「心を閉ざした」状態になっているのですね。
「敵」だか「味方」だかわからないのは、何も赤の他人ばかりではありません。
自分の「親」でさえ、「敵」だか「味方」だかわからない環境もあるものです。
一番身近な、いつも味方でいてくれるはずの「親」が、あなたに「過干渉」であったり、「否定的な意見ばかり押し付けてくる」「敵」のような存在であったりした場合、あなたの「他人との距離感」や「自分自身との付き合い方」はより複雑になってしまうことでしょう。親との問題は、重要なので、後の機会に詳しくお話しいたします。
そうした防御態勢が強い場合、その裏には「もっと強い自分でいたい。なのに、傷付きたくない弱い自分」がいたりします。
理想の自分と、現実の自分にギャップがあるわけです。
そうした時に、「弱い自分もいても仕方ないのだ。それで良いのだ」と思えていたら気が楽なのですが、そうした弱い自分を許せない、受け入れられなかったりして、「ダメじゃないか!」と「自分をも攻撃してしまう」心理状態になっている事もあるかも知れません。
また、矛盾するところではありますが、「敵を作りたくない」「誰からも良い人と思われたい」と行動する事で「自己防衛」をしてしまうことがあります。
誰もがそうした気持ちはあるかと思いますが、それが過剰になりすぎると、他人に対して「NO」と言えなくなってしまいます。
自分を利用しようとする「敵」に対してまで良い顔をしてしまい、結果、自分を犠牲にしてしまったり、傷付いてしまったりしかねません。
そこまで行かなくとも、「残業を頼まれても断れなかったり」「仕事を押し付けられてしまったり」することはあるものかと思います。
本当は断わることも可能であるのに、疲れているにも関わらずに引き受けてしまう様なことが多くある場合、心と体のバランスを保つのは難しいかも知れません。
皮膚は、外界と、自己の境界線です。アトピー性皮膚炎のような「皮膚」に疾患が出やすい方は、そうした外界から自分を守ることが不得手だったり、自分と外界の境界線があいまいだったり(自分の考え方は、周りも同じだと思い込んでいたり、いつも自分は周りに合わせていなければならないと思い込んでいたりなど)することが見受けられます。
環境が悪い職場を思いきって辞めたり、「嫌な事は、イヤ!」と言えるようになったことで、急速に皮膚炎が治った例など実際数多く診てきました。
嫌な事を「イヤ」と言えれば悩まないよ!ということもあるでしょう。
また別の機会に、「なぜイヤと言えないのか」に関して、考えてみたいと思います。
もちろん、すべての症状が、心の状態が影響しているわけではないでしょうが、この様に、カウンセリングによって、心の状態や、自分でも気付いていなかった無意識的な気持ちに気付いて、心のバランスをとることで、症状に変化をもたらすことが可能です。
そうした症状がある方は、自分の心理状態を見返して見ていただければ良いのではないかと思います。
また、これからも機会のある毎に、心と体の事をお伝えしてみたいと思います。
次回は、人の気持ちの中でも、特になかなか自分でも気付きにくい「寂しい」という感情に焦点を当てて、書いてみたいと思います。
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