対象:労働問題・仕事の法律
就業規則に「退職後は原則として3年間は、同業他社への就職・役員の就任ならびに同業の自営・開業おこ行わないこと」とあり、入社時に「入社前誓約書」と「退職後誓約書」をサインをさせられました。社内でいろいろあり、メンバーと一緒に退職し、同業の開業を考えていますが、1.入社時にサインをさせられた「退職後誓約書」は破棄する方法はあるのでしょうか。また、現在の業態はサービス業で、何か特殊な技術を有しているわけではありませんが、同業の開業にあたっては提携企業や顧客が一部重なります。これは、2.今の会社にとって「利益に反する行為」に該当し、訴訟を受ける所以となりますでしょうか?
よろしくお願いします。
マサムネマサミさん ( 東京都 / 男性 / 31歳 )
回答:1件
退職後の競業避止義務
1 誓約書の破棄
退職後誓約書を破棄することはできません(特段の事情があれば別ですが)。
また、就業規則に競業避止義務を定める規定がありますので、誓約書の破棄だけでは問題の解決にはなりません。
2 競業避止義務を定める特約の有効性
憲法が職業選択の自由(そのなかでも転職の自由)を保障していますので、競業避止義務を定める特約や就業規則の規定は、合理性を欠く場合には、公序良俗に違反に基づいて無効(民法90条)と考えられています。
この合理性判断における考慮要素は、
ア 使用者の正当な利益の保護を目的とすること、
イ 労働者の従前の地位・業務
ウ 競業制限の対象職種・禁止期間・場所的範囲
エ 代償の提供
などです。
アの正当な利益としては、営業上の秘密や顧客等との人的関係の維持があげられています。
イは、アの正当な利益(営業上の秘密や顧客等との人的関係の維持)に無関係な社員には競業避止義務は及ばないと考えるわけです。古い裁判例では「特別の知識、経験を必要としない婦人服洋服記事販売の補助」者に就職の制限を約束させることは公序良俗に反し無効としたものがあります(原田商店事件)。
ウは、アの正当な利益(営業上の秘密や顧客等との人的関係の維持)から考えて合理的な範囲で競業制限の対象職種・禁止期間・場所的範囲が定められていることを必要とするというものです。参考までに、フォセコ・ジャパン・リミティッド事件決定(奈良地判昭和45年10月23日)や東京リーガルマインド事件決定(東京地決平成7年10月16日)が2年間、新大阪貿易事件(大阪地判平成3年10月15日)が3年間の競業避止規定の有効性を認めています。
ご相談の案件では「同業の開業にあたっては提携企業や顧客が一部重なります」とのことですので、退職後3年間の競業避止規定は有効とされる可能性があります(正確に判断するには具体的事実関係をうかがう必要があります)。
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