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小松 和弘 専門家

小松 和弘
経営コンサルタント

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計画的に、そして迅速に対応することがポイントです

2016/02/06 20:30

自社株の相続対策と事業承継に関する相談ですね。
では、早速、自社株の相続対策の方から順番に回答します。

1.自社株の相続対策の必要性
オーナーさんに相続が発生した場合、自社株を保有していると相続人への相続財産となりますが、自社株は「取引相場のない株式」として評価され、業績の良い会社や資産がたくさんある会社は、多額の相続税となる可能性があります。
 相続税は相続人が現金で納める必要がありますが、自社株は売却してお金に変えることができない財産であるため、自社株の評価が高額だと納税資金が不足します。
その相続人(後継者)が相続株式を会社に買い取ってもらった場合には、資金繰りの悪化、利益の低下、信用力の低下、相続人の経営意欲の低下など、会社経営にまで影響を及ぼす可能性があります。
 
2.自社株に関する相続税
では、次に自社株に関する相続税について説明します。相続税は、相続する遺産総額が一定額を超過する場合に申告して納税することになります。
その一定額は、遺産にかかる基礎控除額といい、「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で算出されます。
次に自社株の評価方法ですが、非上場で取引相場のない株式は、税法上の規定によって評価されますが、実務上は、「類似業種比準価額方式」「純資産価額方式」、「配当還元方式」が使われるのが一般的です。
類似業種比準方式とは、類似業種の平均株価並びに1株当たりの配当金額、年利益金額及び純資産価額の3つの要素を類似業種と比準して計算する方法、純資産価額方式は、課税時期において、評価会社が持つ資産と負債を国の通達に従って評価した価額に基づき1株当たりの株価を算出する方法、配当還元方式は、同族株主等以外の株主及び同族株主等のうち少数株主所有者が取得した株式の評価の際に用いられる方法です。

3.自社株の相続対策
 自社株の相続対策には、大きく以下の3つの手法があります。
(1)相続発生前に保有株式数を減らす
(2)自社株の評価の仕組みを利用し、評価をなるべく低くする
(3)経営承継円滑化法の活用
以下に、その対策例を示します。

(1)保有株式数を減らす
 自社株は「1株あたりの株価×株数」で評価されますので、相続発生までに株式数を減らしておくことは、相続財産を減らすうえで最も有効です。
1)自社株の生前贈与
 これは、贈与税の基礎控除の活用する手法です。贈与税の基礎控除は、受贈者が何人いても、何年でも年間110万円まで非課税のため、長期にわたって計画的に実施すれば相続財産を大幅に減らすことができます。ただ、この方法だと株価が多額の場合には期間が長期化する可能性があることに注意が必要です。

2)従業員持ち株会の設立
これは、従業員持株会を設立する方法です。従業員の持株会を設立して、自社株を買ってもらえば、オーナーさんの持ち分を減らすことが出来ます。
この方法では、従業員はこういう組織の立ち上げに不慣れでしょうから、まず、オーナーさんが主導して、持株会を設立し、さらに従業員の中から理事長や理事、監事を選任、入会資格や議決権、譲渡価額などを定めた規約も作成してあげて下さい。
手順を踏んで持株会を作った後、オーナーさんは「持株会」に対して、株式を売却します。
この従業員特殊会の設立には、業績により配当を出せば従業員のモチベーションを引き出す効果が期待できる一方で、配当金が会社にとって負担になるほか、従業員が経営に参加することで、会社経営にとって無用の混乱を招くリスクがあります。
これらリスクを避けるため、持株会の持株比率は10%程度に抑えたり、持株会の株式は無議決権株式としたり、従業員の退職時には会社が株を買い戻すようにするなどの対策は講じた方が良いでしょう。

(2)非上場株式の評価を低くする
 株式の評価を低くするには、従業員数を増やして会社規模を変える方法など様々な方法がありますが、ここでは、利益を下げる方法の一例をご紹介します。
1)役員退職金の支給
 株価の引き下げには会社の利益削減が有効で、そのひとつに役員退職金の支給があります。
退職金を支給すれば、その事業年度の利益を減らせるだけでなく、会社の純資産も減少するので、二重の意味での株価引き下げに寄与します。
ただし、この役員退職金には支給する裏付けが必要で、以下の式に基づき考えることになります。
役員退職金=最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率 + 功労加算金
このうち、 功績倍率は社長で3倍程度となっており、功労加算金は退職金の3割程度が上限と規定されておりますが、上記の式が示す通り、役員退職金を増額しようと考えるなら、最終報酬月額を高くすることが最も効果的です。ただし、退職の直前の月だけ報酬があげるのではなく、あくまで自然な増額の結果、最終報酬月額が意図していた金額になるよう、計画的に報酬を増やしていくのがおすすめです。
さらに、役員退職金の額については、定款に盛り込んでおくか、 役員退職金規程を定めておきましょう。

(3)経営承継円滑化法の活用
 平成20年に中小企業の事業承継にかかる様々な課題に対応するため、中小企業経営承継円滑化法が施行されました。そのなかで、自社株式等にかかる多額の相続税・贈与税負担の軽減を図るため、後継者が経済産業大臣の認定を受けた非上場会社の株式等を先代経営者から相続又は贈与により取得した場合、一定の要件を満たすと相続税・贈与税の納税が猶予される特例制度が創設されました。知っておくと良い制度です。

4.事業承継とは
事業承継とは、会社の経営者が後継者に経営者としての地位や株式、事業用不動産を引き継ぐことをいいますが、その本質は、単なる財産の移転ではなく、後継者に対して、会社経営をしていくための基盤となる株式や会社経営のために必要な事業用資産を引き継ぐ財産承継の側面のほか、経営者としての立場や権限、責任といった経営者としての地位を引き継ぐ経営承継の側面があり、この2つの側面を検討する必要があります。

5.事業承継の具体例
事業承継は、大きく3つの方法があります。一つ目は、オーナーさんの御子息、御兄弟等の親族に対して事業を承継させる親族内承継による事業承継、二つ目は、役員が株式を買い受けて経営権を承継するMBOなどによる役員・従業員等への承継、三つ目は、M&Aを活用した事業承継です。事業承継方法の選択に際し、どの選択肢を選択するのが良いか判断するための判断要素として、
(1) 後継者の有無、(2) 承継する企業の規模・業績、(3) 後継者の年齢・意思の3つがあり、オーナーさんのご事情をこれらの要素ごとに検討していくことで、どの事業承継方法を用いるか選択することになります。

6.まとめ
 中小企業の事業承継対策を考える場合、自社株式・事業用資産の承継だけでなく、経営者として必要な業務知識や経験、人脈、リーダーシップなどのノウハウの承継も重要です。
いずれも、短期間で承継処理することは難しく、通常5~10年かかります。自社株の相続税対策の例をいくつか挙げましたが、いずれも予め準備を進めておかないといけないことばかりです。
承継準備計画を作成するなど計画的に、そして迅速に対応されるするが必要です。

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小松 和弘
( 東京都 / 経営コンサルタント )
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この回答の相談

自社株の相続対策について

法人・ビジネス 事業再生と承継・M&A 2006/09/15 03:08

金属加工メーカーのオーナーです。そろそろ引退のことを考えて、自社株の相続対策を模索しています。どのような方法がありますか?そのほかにも、事業をスムーズに引き継ぐために必要なことなどがあったら教… [続きを読む]

All About ProFileさん

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