対象:事業再生と承継・M&A
中小企業における事業継承の手段としては、株式譲渡が最も頻繁に用いられる手段であると聞きました。株式譲渡による事業継承は、ほかの方法と比較してどんな違いがあるのでしょうか?
※この質問は、ユーザーの方から事前にいただいたものを、専門家プロファイル が編集して掲載しています。
All About ProFileさん
回答:1件

後藤 義弘
社会保険労務士
2
ご質問ありがとうございます
*''■ 回答''
''「経営」と「財産」の承継を一気に済ませることができる。 (全部譲渡の場合)''
''【解説】''
ここでは、発行済株式の100%をオーナーが所有する株式会社の事業承継を想定します。
一般に、このような中小企業における事業承継は
(1) 「経営」の承継
(2) 「財産」の承継
を合わせたものと考えられています。
これは、「所有」と「経営」が一致している中小企業においては、会社の財産のほとんどがオーナーの財産であるケースが多いことから、相続対策と経営のバトンタッチ、2つのイベントを考慮する必要があることによるものです。
そして、シンプルに「株式」を後継者に譲ることにより、この2つのテーマを一挙に解決できるのが、お話の「株式譲渡」という事業承継スキームです。
ただ、このスキームの採用には、後継者がオーナー所有の株式を買い取れるだけの資金が必要です。 株価が低ければ用意する資金は少なくてすみますが、逆に高ければよりたくさんの資金が必要になります。 実際、この資金確保がネックとなり、事業承継がうまく進まないケースも多く見られます。
このような場合は、上の(1)(2)を分けて考える必要があります。 オーナーに万一のことが起こっても、会社の「経営」が揺らぐことがないよう、まずは後継者に確実に経営権が渡る手当を施さなければなりません。
もちろん、(2)のオーナー個人の財産の承継・相続・税の問題も重要ですが、やはり「経営」の後継者への確実な引き継ぎと存続・安定化が何よりの優先課題です。
では、お話の「ほかの方法」にはどのようなものがあるかですが、例えば、後継者候補にいくらか株式を譲り保有させ、株主であるオーナーと後継者候補の株式の権利を組み換える (''株式カスタマイズ'' )ことで、ひとまず経営権だけを承継するという手法が考えられます。
補足
例えば、オーナーの所有する株式を100株とし、そのうち10株を後継者候補が譲り受けたとしましょう。
この場合、株式譲渡後の議決権は9:1となりますが、経営権は依然オーナーに残ったままで、経営権移譲の目的は達成できません。(通常、会社の実質的な支配には議決権の ''2/3以上'' が必要)
そこで、オーナー保有の90株分の議決権を減らす、あるいは全部をなくしてしまうカスタマイズを施します。 そうすると、10%しか持たない後継者が経営の実権を握ることができます。
また、経営の承継が時期尚早ということであれば、実力が備わった時点、オーナーの死亡時など、経営権を委譲したい、あるいはすべきタイミングでカスタマイズの効果が出るようアレンジすることも可能です。
''【参考事例】'' ''「株式カスタマイズ」と「新株予約権」を組み合わせた株主対策で株主相続時の経営の混乱を回避した事例''
もっとも実際の「経営の承継」シーンでは、親族以外の株主がいたり、株主が多数いたりなど、権利調整が複雑なケースも多く、この例のように単純にはいきませんが、非公開会社では、こうした株式(定款)カスタマイズをうまく活用した「経営」の承継策が考えられます。
なお、この「株式カスタマイズ」は、株式の価値そのものを移転させる、すなわちオーナーの「財産の承継」を可能とするツールではないため、別途「贈与」「譲渡」などの方法により、権利移転を図っていく必要があります。
なお、目下事業承継税制の改正が審議されており、オーナー個人の会社財産の後継者への承継について、このあたりの動向を見ながら、適切な承継方法を検討していくことになります。
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