住宅販売の広告で、老後が安心というキャッチコピーが目につきます。本当にそうなのでしょうか?
その際に、老後賃貸住宅を借りることが出来ないような説明が載っています。
確かに家賃を支払わずに住めますので、その分家計の住居費は安く為ります。ただ、住居費が無いわけではありません。従って下記の費用を賄える貯蓄が有ればという条件が必要です。
戸建て住宅の場合には、修繕・メンテナンス費用が掛ります。図にありますように、修繕費がかかり、積算すると40年で約980万円~約1200万円掛りますから、年間20~30万円かかる事になります。また、エアコン等の住宅に纏わる設備も必要です。
これらを考えますと、賃貸の管理料よりは高くなることが有ります。また、高齢になるとバリアフリー等の模様替えも必要になります。この費用も100万円単位で蓄えから出ていきます。そして固定資産税も必要です。
分譲マンションの場合には、管理料は必須です。また、老朽化してくれば修繕のための追加費用が必要になります。そして、マンションの竣工時からの期間によっては大規模修繕の費用が掛ります。
借りることが出来ないと云う件は、現時点ではまだ有ろうかと思いますが、今後は解消に向かうと考えています。
理由は、空き室です。
国土交通省の住宅・土地統計調査によれば,全国的な空室率は年々上昇していますが、依然として着工件数も増加しています。
H20年度住宅・土地統計調査によれば,全国で総住宅数の増加とともに総空家数も増加しています.2008年時点で住宅数と世帯数の差は約760万に達し,空家率は13.1%と過去最高の値が推計されています。内半分が賃貸住宅と推計されています。少子高齢化社会ですから、今後ますます空室が増えると思われます。
東京の人口と世帯数の推計
東京23区別のアパート・マンションの空室率
賃貸業で空室率の上昇は致命的です。従って高齢者用のマンションに転換しているオーナーが増えていますし。国もそれらのオーナーを支援しています。従って高齢者であっても借りて頂きたいと云うオーナーが増えるものと考えます。
高齢者に貸すリスクは、火事などの事故や脱糞・片付けが出来ない等から部屋が汚れる、孤独死によるリスク、家賃の滞納等が有ります。ただ、これらの多くは、身元引受人(多くは子供)が居れば解消します。
また、貸し手として困るのは親族のいない方です、これも後見人が付くことで解消されると考えています。
借家人が責任を取れない場合に代わりになって交渉に応じて頂ける方の不在が問題ではと考えています。また、孤独死などへのリスクに備えた保険が昨年初めて導入されています。今後このような保険が増えれば、高齢者に貸すオーナーも増えると思います。
住宅を購入する際の購入者の年齢はとても重要です。何故ならば、人生100年時代です多くの方が90歳で祖存命されています。一方建て替えの平均20年から30年です。もし、30代で購入された場合には、その後60年近くその住宅に住む事になります。従いまして、60歳を過ぎたあたりで建て替えが必要になります。
私は終の棲家として高齢になっても住むことができる、バリアフリー対応の住宅を50代で購入されるのが、ベストのタイミングと考えます。また、定年後に住宅ローンの返済が無いように、頭金の金額と退職金で完済できる計画を作成されるようお勧めします。
マンションの購入は、いまだ建替えリスクから疑問を抱いています。ご承知の通り、我々が今見るようなマンションは、大衆化が進んだ1960年代後半から1970年代から始まりました。現在これらマンション群の建替えが進んでおりません。
理由の大きなものは、建替費用の問題です。定年後にマンションに住んでいらっしゃる方の家計で、建替費用が負担できる方は少ないためです。
今後多くのマンションで建替が必要になりますから、事例が多くなり課題や解決策も増えてくると思いますが、現状ではお客様にお薦めしていません。
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文責
ファイナンシャル・プランナー:日本FP協会認定CFP(R)
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独立系顧問料制ファイナンシャル・アドバイザー
吉 野 充 巨
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