(続き)・・そのように全身の健康に影響を及ぼす腸管機能ですが、なぜ現代人の腸内環境が悪化しているのでしょうか。それは一つには毎日の「食事」に原因を求めることができます。大腸ガンをはじめ各種のガン、糖尿病などの生活習慣病、花粉症などのアレルギー疾患、うつ病などの精神疾患が急増しているのは、現代人の食生活が腸内環境の悪化を通して様々な病気を引き起こす下地となっているためと指摘されています。
さて現代人の食生活は、いかなる理由で腸内環境を悪化させているのでしょうか。それを考える上でキーワードとなるものに「腸内細菌叢」が挙げられます。腸内細菌というと乳酸菌が有名ですが、この乳酸菌やビフィズス菌などは人体にとって有益な働きをするため「善玉菌」と呼ばれます。一方で大腸菌やウェルシュ菌などは有害な作用をするため「悪玉菌」と呼ばれます。さらにどちらでもない「日和見菌」も存在します。
健康的な食生活を送っている人の場合、この善玉菌の割合が約2割を占めており、日和見菌は善玉菌の働きを邪魔しません。そして悪玉菌の活動は抑え込まれています。これに対して不健康な食生活を送っている人の場合にはこのバランスが崩れ、善玉菌が著明に減少する一方で悪玉菌が増殖し、また日和見菌が悪玉菌に加担するような活動をします。その結果、悪玉菌の働きによる腸内環境の悪化がもたらされるのです。
それでは善玉菌が減って悪玉菌が増えてしまうような食事や生活とは、どのようなものでしょうか。最大の要因は、野菜や果物、海藻類、キノコ類など自然な植物性食品の摂取不足です。野菜や果物などにはビタミンやミネラル、食物繊維などがたっぷりと含まれており、これらの栄養素が少ないと栄養バランスが悪くなる他、便のカサが減って腸管の蠕動運動が弱くなり、便秘傾向となるなど腸内環境が悪化します。
主食である米や小麦粉などの炭水化物に関してはどうでしょうか。玄米や全粒小麦などはビタミンやミネラルなどの微量栄養素、それに食物繊維が豊富ですが、これを精製してしまうと話が違ってきます。白米や精製小麦には微量栄養素や食物繊維が極めて少ないため、これ単独では栄養バランスがたいへん悪いほか、食物のカスが腸内に残りやすくなってしまい、便秘その他の腸内環境の悪化を引き起こしてしまいます。
さらに食生活の「欧米化」も主要な原因となっています。砂糖や植物油脂の多用、肉類や加工食品の多食は腸内に於ける消化の負担を増し、コレステロールや血糖値などの問題だけでなく、便秘をはじめ腸内環境の悪化を促進しています。また運動不足や睡眠不足、過大なストレス、低体温など現代特有の事情も、様々な経路を通じて腸内環境の悪化をもたらし、我々の健康を脅かしているのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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