(続き)・・そのような平常心とバランスを保った取り組みと伴に、今ほど人間同士の「つながり」が重要視される時期は他にありません。被災地では今、見知らぬ人同士の間で強い連帯感が生まれています。一緒に支え合い、この難局を乗り越えていこうという熱い思いです。日本人はこの連帯感を持つことによって様々な大災害や国難を克服してきた歴史があります。関東大震災や阪神大震災、第2次大戦などからの復興を支えたのは「一緒に頑張ろう!」と皆の心が一つになった団結力でした。
被災地でそのような絆が生まれているのですから、それを支える一般国民も互いにつながりを深めたいものです。例えば悩みやストレスがあれば一人で考え込まず、身近な人に何でも話す、反対に相手の話を聴いてあげる、といった支え合いはとても大切です。また「被災者のために何かしてあげたい」と考えるならば、仲間が集まってアイデアを出し合う、またその熱い気持ちを称え合う、というつながりが重要です。仲間が集まって被災地を支援し復興を手助けする、という姿勢が求められているのです。
さらに復興にあたっての「ビジョン」がとても重要です。今の被災地や社会に漂う閉塞感というものは一つには、どのように復興したらよいか、またどのように社会を立て直したらよいかという道筋が見えないことに起因しています。そのようなお先真っ暗な状況では、なかなか前向きな発想や気分になることができず、前述のような心身の不調を招きやすくなります。従って特に社会や組織のリーダー層は、被災地をどのように復興させ、どのような社会にしていくのかのビジョンを早く具体的に示すべきです。
例えば被災地の街並みを単に元通りに復旧するのではなく、これを機に防災や環境、福祉などの点で最先端の技術を駆使して魅力ある街づくりにする、などはとても魅力ある復興ビジョンです。また企業レベルでも、突発的な災害やトラブルに強いシステムを構築する、あるいは防災に役立つ商品やサービスを開発する、などのビジョンが挙げられます。社会や組織のリーダーが魅力的なビジョンを打ち出せば、住民や社員は防災も含めた活動に喜んで協力し、前向きに毎日を生きられることでしょう。
ところで心身の健康を維持、向上させるためには、食事など「ライフスタイル」の充実がたいへん重要です。実際に震災後であっても、心身の不調を訴えて病院に駆けつける方々に共通している傾向として、食生活や栄養バランスの破綻、低体温、運動不足といったライフスタイルの乱れがあります。例えば甘い飲食物や加工食品の摂取が多い、ビタミンやミネラル、アミノ酸の摂取量が少ない、体温が36℃以下である、運動を殆んどしない、といった状態では、災害時の不調が現れやすいものです。
従って、今のような震災後の混乱を乗り切るためにも、さらには次に来る災害や社会混乱などの事態に備えるためにも、体質改善や体力向上を目的としたライフスタイルの充実が欠かせません。具体的には、野菜や果物、全粒穀物等を中心としたナチュラルな食生活を目指し、お風呂などで体を温め、運動によって筋肉と体力を鍛え、充分な睡眠と休養を取ることなどが大切です。このような取り組みは災害時だけでなく、日常的な「平時」にもたいへん役立つ基本的な健康法なのです・・(続く)
このコラムの執筆専門家
- 吉野 真人
- (東京都 / 医師)
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病気を治したり予防するにあたり、いちばん大切なのは、ご本人の自然治癒力です。メンタルヘルスを軸に、食生活の改善、体温の維持・細胞活性化などのアプローチを複合的に組み合わせて自然治癒力を向上させ、心と身体の両方の健康状態を回復へと導きます。
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