最近「同調圧力」という言葉が気になっています。
意味を調べると、「特定の集団において、少数意見を持つものに暗黙のうちに多数派意見を強制すること」とあります。簡単に言えば、「みんなと同じように感じて、同じ価値観で動けという強制」ということになるでしょう。私個人としては一番嫌っていることです。
「同調圧力」が強い組織の典型として、よく挙げられるのは昔の軍隊ですが、他にも学校や田舎の集落、古い体質の部活などが、その例として挙げられています。
企業の場合は、このところダイバーシティ(多様性)が言われるようになり、「同調圧力」は以前よりも軽減されつつありますが、それでも歴史が古い会社などでは、今でもそういう体質をひきずっているところがあります。
スポーツの競技団体などで起こるパワハラ問題、ブラック校則といわれる理不尽な学校の規則、都会では少ないかもしれませんが地域内での嫌がらせなどは、多かれ少なかれこの「同調圧力」が悪い作用をしている例といえます。「同調圧力」が強まると、“同じでない人”の差別や排除が始まるということになり、決して好ましくはありません。
その一方、良い組織や強いチームは、必ず「まとまりがある」「一体感がある」と言われます。「チーム一丸」が悪い意味で使われることはまずありません。しかし、これらも“同調”といってしまえばその通りです。「圧力をかけたり強制したりしていない」というかもしれませんが、リーダーの立場では、チームをまとめるにメンバーたちに何らかの働きかけをするはずで、その内容次第では、“圧力”や“強制”となることもあり得ます。
「同調圧力」と言われるものと、良い意味での「一体感」と言われるものの間には、何かしらの違いがあるはずですが、例えば「納得感の有無」などだったとしても、中には圧力によって思考停止に追い込まれているような場合もあります。
この「働きかけ」と「強制」の境界線は難しく、明確に説明できる違いが見つかりません。
そんな中であえて思ったのは、次の二つのことです。
一つは、良いチームの場合では、「一体感」のよりどころであるチームの目的が一貫していますが、それに対して「同調圧力」の組織では、目的がいつの間にか他の違う何かに置き換わっています。例えば、試合に勝つための練習が、いつの間にかつらい経験をすること自体が目的になっているような話です。
そしてもう一つは、「一体感」で共有しているのはチームの目的や目標だけであるのに対し、「同調圧力」の組織は、その行動のしかたまで同じものを求めて強制していることです。試合に勝つこと以外に「相手をつぶせ」などと指示するのは、まさに行動の強制にあたるでしょう。
いろいろ考えたものの、はっきりした整理は未だできずにいますが、「一体感」と「同調圧力」の間には大きな違いがあると思う一方、実は紙一重なのかもしれないとも思います。
いずれにしても、「同調圧力」が強い日本社会では、この違いをしっかり意識しておかなければならないと強く思います。
このコラムの執筆専門家
- 小笠原 隆夫
- (東京都 / 経営コンサルタント)
- ユニティ・サポート 代表
組織に合ったモチベーション対策と現場力は、業績向上の鍵です。
組織が持っているムードは、社風、一体感など感覚的に表現されますが、その全ては人の気持ちに関わる事で、業績を左右する経営課題といえます。この視点から貴社の制度、採用、育成など人事の課題解決を専門的に支援し、強い組織作りと業績向上に貢献します。
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