大澤 眞知子(カナダ留学・クリティカルシンキング専門家)- コラム「悪化するホームステイ事情ー留学生の窮状」 - 専門家プロファイル

大澤 眞知子
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悪化するホームステイ事情ー留学生の窮状

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留学 ホームステイ 2017-12-21 08:10

ホストファミリー事情についてのお問い合わせをいただきました。

ありゃ、やはり日本の留学生がカナダで(どこの国も同じかもっと悪いかも知れませんが)ホームステイして学校に通う状況は、加速度的に悪化しているようです。


(質問)

子どもがカナダで留学2年目になりますが。今度4軒目のホスト宅に引越すことになりました。1軒目は離婚、2軒目はホストが学区外へ引越し、3軒目は子供の習い事の遠征が多くなり家を留守にする事が増えたという理由です。頻繁な環境変化で落ち着いて勉強できないのではと心配になります。

エージェントを使っていないのですが、教育委員会と強いコネクションのあるエージェントを使っている生徒に良い家庭がきまるのでしょうか?


(回答)

教育委員会は留学生がエージェントを使っていようがいまいが、差別することはありません。

むしろ、エージェントを使うと授業料の15〜25%をリベートとしてエージェントに払わなければいけませんので、個人でやって来た生徒の方を大切にすると思います。

また、ホームステイ担当者はどの生徒がどのエージェントで。。。などには関与していませんので、差別をすることはまずあり得ません。


ただし、これは私の経験から一般的にお答えしているだけですので、カナダの中でもどのスクールボードのどの担当者がどんな役割を持っているのか、スクールボードがどんな方針を持っているのかにもよります。

それでも、エージェントを使う使わないでの差別は、まずカナダではあり得ません。


お子さんがの頻繁なホストチェンジの一番大きな理由は、ホストファミリーの悲観的不足だと思います。


カナダのスクールボードが公立高校に日本からの留学生を受け入れ始めたのが1990年代の最初です。

当時は、カナダの人たちも遠い国からやって来る留学生を受け容れることに大きな興味を示してくれていました。

毎月入ってきて、収入として申告の必要ないホームステイ費も魅力ですが、それよりも留学生自体に興味を示してくれる人が多かった黄金時代です。

お金に困っているわけでもない、裕福で大きな家に住む年配の夫婦なども積極的に受け入れをしてくれていました。


ところが、トラブル続出。

エージェントが誰でも構わず送ってくる留学生の質が悪すぎて、ホスト側が「もう今後いっさい受け入れはしない!」と言い始めたのが1998年くらいからですね。

英語の準備も全くなし、精神的にも子どものまま送られてくる留学生と、ホスト側との信じられないほどの誤解も原因のひとつです。

周りの文化を尊重する姿勢もなく、日本の親から過保護にされていたまま、受け身の生活態度の日本人留学生に疲れ果てたホストもずいぶん見てきました。


困ったスクールボードはステイ費を高くし、ホストの機嫌を取り、トラブルはすべて生徒側の問題とし、ホストをよいしょし始めました。

それでもどんどん良い人たちが抜けていったホストファミリー予備軍を、今度はスクリーニングなしで採用し始めたところもあります。


最終的に残ったのは、ホームステイ費目当てのお金に困っている人たちです。

住宅ローンにあえぐ家庭。

小さい子どもがいて仕事に行けない分をホームステイ費で賄う家庭。

お金も必要で、英語の不自由な移民家庭など。

びっくりする話なのですが、実はカナダの3分の1に当たる人たちは、1日でも給料が遅れると毎月の支払いにも困る状況だそうです。

国としては日本よりはるかにお金持ちのはずですが、とにかく物をクレジットで買いまくり、支払いに青くなっている人が多いのを感じます。

そのような人たちに取り、ホームステイ費は大きなプレゼントでしょうね。


それでも足りないので「ほんの1ヶ月だけでいいから」とか「次が決まるまでの期間だけ」とか無理に知り合いに頼み込むスクールボード担当者。

アルバータ州のあるスクールボードの教育長は、ホスト探しに困り果てて、親類めぐりをするんだそうです。

「頼むよ、生徒をおいてくれないかな?」

「僕の顔をみただけでドアを閉められそうになるんだよ」とぼやいていました。


ということで、解決方法のないホームステイ事情が現状です。

最近では疲れ果てたスクールボードはホームステイ部門を廃止し、外部のホームステイ斡旋団体に丸投げするのが傾向です。

もっと信頼出来ない事態に陥る残念な傾向です。


留学の現実は決して甘いものではないと、ずっと発信し続けていますが、今だに甘い思い込みでやって来る生徒が多いことに心が痛みます。


子どもさんには、日本からの大きな支えが必要だと思います。

良いカナダ人に出会えますように。

 

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