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河野 英仁
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中国特許判例紹介:中国における均等論侵害と間接侵害(第1回)

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中国特許判例紹介:中国における均等論侵害と間接侵害(第1回)

~中国企業が日本企業を間接侵害で訴えた事件~

河野特許事務所 2012年12月14日 執筆者:弁理士 河野 英仁

 

                              愛国者電子科技有限公司

                                                            原告

                                      v.

                               東芝(中国)有限公司、

                        東芝パソコンネットワーク(上海)有限公司、

                              百脳滙(西安)実業有限公司

                                                           被告

 

1.概要

 中国企業による特許出願の増加に伴い、アップル等の外国企業が中国の人民法院にて提訴される事件が増加している。

 

 本事件ではパソコンに接続する連接ケーブルに発明特許権が付与されていた。特許権者である中国企業は、連接ケーブル及びパソコンを販売する中国の販売業者と、パソコンを製造する日本企業とを提訴した。

 

 中級人民法院は被告の販売する連接ケーブルが均等論上特許権を侵害すると判断し、またパソコンを販売する日本企業に対し間接侵害を認める判決をなした[1]。

 

 

2.背景

(1)特許の内容

 Aigo社(以下、原告)はSATA(Serial Advanced Technology Attachment)連接器と称する発明特許出願(200610079222.2)を2006年4月17日に出願し、2010年2月3日に権利化した。SATAはコンピュータとハードディスクまたは光学ドライブ等の記憶装置とを接続するための規格の一つである。

 

 本発明がなされる以前は、SATA連接器と電源連接器とはそれぞれ分離しており、回路基板上に2つのインターフェースが必要であるほか、ユーザも2つのケーブルを用意しなければならないという問題があった。

 

 この問題を解消すべく、両者を一体化し省スペース、コスト低減を実現したのが本発明である。参考図1はSATA連接器の構造を示す説明図である。参考図2は外付HD及びパソコン間に連接ケーブルを接続した状態を示す説明図[2]である。

 

 参考図1 SATA連接器の構造

 

 参考図2 外付HD及びパソコン間に連接ケーブルを接続した状態を示す説明図

 

 プラグ10の本体11は一方から端子搭載部12が突出しており、内部に絶縁本体14が形成されている。絶縁本体14内部には電源用の端子13が15個並列に設けられている。そして、端子搭載部12の上側外面には4つのデータ端子15が設けられている。これにより、一つのプラグでデータの入出力及び電源の確保を可能とするものである。

 

 争点となった請求項1は以下のとおりである[3]。

 

1.本体11及び本体11両端からそれぞれ延びる端子部及びケーブル部16を含み,

端子部は端子搭載部12及び複数の端子を含み,

前記ケーブル部16は端子と電性接続されるケーブルを含み,

前記端子はデータ端子15及び電源端子13を含み,両者は電気特性上隔離されており,かつ同一の端子搭載部12上に分布しているSATA連接器プラグ10において,

 前記端子搭載部12は一つの絶縁本体14と,絶縁本体14を囲む一つの収容空間141とを備え,

  前記データ端子15は絶縁本体14の外壁上側面にあり,前記電源端子13は絶縁本体14の内壁下側面に設けられていることを特徴とするSATA連接器プラグ10。

 

 

(2)訴訟の経緯

 東芝中国公司(被告A)はL536、L600D-09B、TECRA、Satellite、Qosmioシリーズのパソコンを製造しており、東芝パソコンネットワーク(上海)有限公司(被告B)はそのうちTECRAM10-1,QosmioF50シリーズ(501を含む)、SateliteM500シリーズの販売を行っている。百脳滙公司(被告C)は西安市において、これらのパソコンを販売している。

 

 2010年4月,原告は西安市場において、被告CがSATA連接器発明特許(以下、222特許という)を侵害するパソコンを販売しているのを発見した。原告は被告Aが製造し、被告Cが西安市にて販売した連接ケーブル及びパソコンの差し止め及び損害賠償を求め陝西省西安市中級人民法院(以下、中級人民法院という)に提訴した。

 



[1] 2011年9月陝西省西安市中級人民法院判決 (2010)西民四初字第00154号

[2]中国ネットワーク電視台HPより 2012年11月18日

http://news.cntv.cn/china/20111011/108129.shtml

[3] 請求項中の符合は筆者において付した。

 

(第2回へ続く)

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