「ショートセール」という言葉、お聞きになったことはありますか?
アメリカでは2000年代に入って不動産バブルが起こり、2007年頃から次第に市場が下落し始め、売値が買値を下回るようになり、その余波で「サブプライムローン」問題や「リーマンショック」が発生し、深刻な不景気でローンの返済ができなくなる人が増えてきました。
結果的に抵当流れ(フォークロージャーセール)の不動産が増えることになりましたが、この手続きには時間が掛る上、中古販売として販売するとレンダーに入る収入が少ないため、「ショートセール」という手法で不動産が売却されるようになったのです。
つまり、ローンの残っている不動産を、ローン残高より安い金額で売却した上で、売却金額全額を金融機関に支払い、残高をレンダーに免除してもらうという方法です。
ですから、「ショートセール」の「ショート」は、「短い」という意味ではなく、「(ローンの残高に)足りない」という意味なのです。
例をあげてみましょう。
Aさんは10年前に30万ドルでワイキキに物件を購入しました。頭金を20%、つまり6万ドル払い、レンダーから24万ドル、6%の利率で30年ローンを設定しました。10年経った現在、ローンは22万2千ドル残っています。この期間、元金、利子、税金、保険を月々2,200ドルずつ払って来ました。ところが、最近、不景気のために仕事を失い、月々のローン返済が苦しくなってきました。このままでいくとレンダーから支払い遅延の手紙が来て、やがては「不動産の差押え」ということになるのは目に見えています。不動産市場も現在、住宅価格が下がっていて、到底買った当時の価格で売れそうもありません。
その時、不動産エージェントを通じて「20万ドルでこの家を買いたい」というオファーがありました。ローンは22万2千ドル残っていますが、売値とローン残額との差額2万2千ドルをレンダーに払う余裕などは全くないので、レンダーに掛けあって交渉した結果、レンダーがこの差額を免除するという話がまとまり、この不動産を20万ドルで売却し、売買が成立しました。
これが「ショートセール」の一例です。
通常、レンダーが差額を免除するなどということはまずないのですが、抵当流れ(フォークロージャー)の不良在庫、つまり売れない物件をレンダーとしても抱えたくなく、一刻も早く売却した方が得策との考えから生み出された苦肉の策なのでしょう。
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