「子供は家庭で育てるべき」という思い込み

「子供は家庭で母親が育てるものだ」という思い込みを、未だ頑なに持っている人が多いことに驚きました。　　ずいぶん前から科学的な研究が否定し続けて来たこんなことを、未だに念仏のように唱えているのは、もはや思い込みを通り越して根深い偏見だと思います。

外枠と規則だけを決めることを、自分の仕事だと思い込んでいる日本の政治家たちが、こども園云々でもめてます。　
どの政治家の意見にも食傷気味ですが、自民党が反対している理由に驚きました。

「子供は家庭で育てるものだ。」ですか。
「子供を母親の手から引き離す」ことになり、「家族を全面否定する」ことになるとの主張らしいです。

正に、Critical Thinking のタブー　“Avoid Emotional Reasoning.”　です。　　証拠も何もない、論理的な理由づけも何もない、自分の持つ強い拒否反応感情で反対しているようです。

Critical Thinking の”Examine your evidence” （科学的に証明された証拠を調べること）で、論理的・科学的・客観的に分析してみましょう。

１． 就学前の子供のケアについて

親が面倒を見る場合でも、こども園で（幼稚園・保育園であろうが）、親ではなく、集団で専門家が面倒を見る場合でも、最も重要なのは、その質です。 誰が面倒みるかではありません。

園の専門家の質が悪い場合は、子供の知的能力、社会性の発達はうまく進みません。　親のケアが悪い場合も同じです。　(Howes & James, 2002; Lamb & ahnert, 2006)

それに反して、もちろん、質の高いケアは、子供の知的能力、言語能力、社会性を最大に伸ばすことが証明されています。　注目すべきは、経済的社会的に低い階層の子供たちほどこの恩恵を受けるということです。(Lamb & Ahnert, 2006; NICHID Early Child Care Research Network, 2006; Peisner-Feinberg et al., 2001)

現在の日本のように、毎日の暮らしにせいいっぱいで、十分な子育て環境を作れない若い親たちには朗報です。

しかも、その効果は小学校に上がっても続き、その後も子供の能力を最大限に伸ばす効果となることもわかっています。

日本の将来を担う大切な子供たちを、どう育てるかを議論するならば、保育専門家の質をどう高めるかを先決問題として考えることの方が、はるかに大切だと思います。

「家庭」だ「こども園」と内容のないことでもめている場合ではないですね。

２．「働く母親は子供にマイナス？」

　　いえいえ、まったく逆です。

母親が外で働くことを楽しみ、うまく子育てと両立している場合には、子供に良い影響があることが証明されています。　子供は環境への適応性が高く、高い自己評価を持ち、家族や友達とも良い関係を築き、性別による差別的な思い込みも少なく、学校の成績も良い傾向がかなり強いと多くの研究が証明しています。　(Hoffman, 2000; Berk, 2006)

母親が、「日本社会が決めつける女性の役割」から飛び出して、人間として自分の意志を持ち、能力を発揮出来るのを見て育つ子供には、将来に向けて非常に良い影響があるということです。

これもまた、「母親は外で働くより家にいて子供を育てるべきだ。」などと化石頭でが～が～言うより、女性が平等の立場で働ける社会環境作りに精を出すのが、政治家の仕事だと思いますけどね。

あ、「家族を全面否定する」という言い分に至っては、「家族」の定義に戻らないとといけないようですよ。
やれやれ。

Critical Thinking Step 2 “Define your terms.”

「家族」とは？