遺留分の減殺請求とその後の相続税の申告 - 遺産分割 - 専門家プロファイル

近江 清秀
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遺留分の減殺請求とその後の相続税の申告

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相続税

<事例>
 Aさんは妻を10年前に亡くし、相続人は長女B次女C長男Dの3人が
相続人となっている。
 BとCは、Aの近所に住んでいたこともあって妻亡き後のAの
日常生活を支えていた。一方でDは、就職もせずAの財産をあてに
生活を続けていた。
 そのため、Aは自宅及び預貯金のすべての財産をBCに半分づつ
相続させる旨の遺言書を作成していた。

 Aの死後、BCは遺言書に基づき不動産の名義変更を行いました。
預貯金については、解約及び名義変更に当たってDの実印も必要と
なることから、名義変更手続きは仕掛中です。 
 相続税の申告については、遺言書の内容に基づいてBC二人で
申告・納税ともに済ませました。

 そのことを知ったDは、遺留分の減殺請求の訴えを起こしました。
その結果Dは、「遺産総額の1/6に相当する金銭をBCから受取る」
という内容で和解しました。

 この場合、BC、Dの税務上の対応はどのようにすればいいでしょうか。

<解説>
 今回の事例は、実務では非常によくあるパターンですので
基本事項の確認も含めて解説をいたします

 まず、Dの合意なくBCが不動産の相続登記を行うことができるのか
という問題です。 

 これは過去の最高裁判例で「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」
趣旨の遺言は、特段の事情のない限り、何らの行為を要せずに、被相続人
死亡の時に直ちに当該遺産当該相続人に相続により承継される」
(最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁参照)という考え方
が明示されています。

 従いまして不動産の相続登記自体に問題はありません。
しかしDは、遺留分(つまり法定相続割合の半分なので1/6)の主張を
当然に行うことができます。

 そこで、今回の和解のように遺留分相当額の金銭を支払うことで
BCvsDは、合意することになります。

 実務上の留意点としては、法的に有効な遺言書が存在しても
法定相続人全員の合意がなければ、金融機関は被相続人の口座の名義
変更は行ってくれません。 

 したがって、今回の事例の場合もBCがDの訴えに応じて和解しない限り、
A名義の預金口座は凍結されたままになってしまうという問題が発生します。

 さて、この場合の相続税上の対応ですが、当初は遺言書に基づいて
Aの全財産を半分づつ相続していたBCですが、Dの訴えにより
和解することにより、相続財産が1/12づつ減ることになりました。

 そこで、和解の翌日から4ヵ月以内に更正の請求(税金の還付手続)
をすることができます(相続税法32条3項)
 また、Dは相続による財産を取得したわけですから、相続税の申告
をすることができます

 ただし、BCDいずれも更正の請求や相続税の申告をすることが
できるという規定になっていますから、何もしなくても税務上
問題はありません。 

 しかし、実務上はBCが払い過ぎの相続税を還付する手続きを
するのが一般的です。 その場合、Dは相続税の申告納税を
しなければ、税務署から相続税額の決定をされてしまいます。


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