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早わかり中国特許
~中国特許の基礎と中国特許最新情報~
第6回 実用新型特許の保護対象と外観設計特許の保護対象(第2回)
河野特許事務所 2012年2月22日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(月刊ザ・ローヤーズ2011年10月号掲載)
2.外観設計特許の保護対象
(1)専利法上の定義
専利法第2条第4項は以下のとおり規定している。
外観設計とは、製品の形状、模様またはそれらの組合せ、及び色彩と形状、模様の組合せについて出された、美感に富み、工業的応用に適した新しいデザインをいう。
(2)「製品」
外観設計は製品のデザインであるため、その担体は製品でなければならない。従って、手細工の品、農産物、畜産物、自然物等は繰り返し生産することができる製品に該当しないため、デザインの担体とすることができず、保護を受けることができない[1]。
(3)「形状、模様またはそれらの組合せ」、「色彩と形状、模様との組合せ」
(i)外観設計の構成要素
製品の外観設計要素または当該要素の組合せにより、法上の「外観設計」が構成される。この要素には、「形状、模様またはそれらの組合せ」、並びに、「色彩と形状、模様との組合せ」が含まれる。
製品の「色彩」そのものは単独で外観設計の要素を構成しない。ただし、製品の色彩の変化そのものが模様となる場合は、外観設計を構成する。
外観設計を構成する組み合わせは以下のとおりである。
製品の形状、
製品の模様、
製品の形状と模様、
製品の形状と色彩、
製品の模様と色彩、
製品の形状と模様と色彩
(ii)形状
「形状」とは、製品の造型についてのデザインをいう。つまり、製品外部の点、線、面の移動、変化、組合せによって表現する外部輪郭である。
(iii)模様
「模様」とは、あらゆる線、文字、符号、カラーブロックの配列または組合せにより、製品の表面に形成された図形をいう。製品の模様は固定的であり、かつ、目に見えるものでなければならず、あるときには存在し、あるときには存在せず、或いは、特定条件下に限って見えるものであってはならない。
(iv)色彩
「色彩」とは、製品に使われる色または色の組合せをいう。当該製品の製造に用いられる材料の元の色(例えば生地の色)は外観設計上の色彩に当たらない。
なお、外観設計の要素、即ち形状、模様、色彩は相互に依存し合い、明確に境界を定義することが困難な場合がある。例えば、多数の種類の色の塊を組み合わせた場合、模様となり、外観設計を構成する。
(4) 美感に富み、工業的応用に適した新しいデザイン
「美観に富み」とは、外観設計特許権の保護適格性判断時に、製品の機能上の特性・技術的効果に注目するのではなく、外観により与えられる視覚的印象に注目することをいう。
「工業的応用」とは、外観設計が産業上応用することができ、かつ、大量生産することができることをいう。
3.保護適格性を有さないもの
以下は専利法第2条第4項の規定により保護を受けることができない。
(1)特定の地理的条件により定まるものであって、繰り返して再現することのできない固定された建物または橋等は保護を受けることができない。例えば、特定の山、河川を含む山水別荘等である。
(2)気体、液体及び粉末状等、非固定形状物質を含んでいるが故に、形状、模様、色彩等が固定されない製品は保護を受けることができない。
(3)分割することができない、または、単独では販売することができない、しかも、単独で使用することができない製品の局部デザインは保護を受けることができない。例えば、靴下のかかと、帽子のつば、コップの取手等が該当する。
(4)相互に異なる特定形状または模様を有する複数部材の組み合わせに係る製品であって、当該部材そのものが単独で販売することができず、かつ、単独で使用することができない場合、当該部材については保護を受けることができない。例えば、嵌め絵に用いられる形状の異なる嵌め込み部材については、保護を受けることができない。ただし、嵌め絵を構成する全ての嵌め込み部材を、一つの外観設計特許とする場合は、保護を受けることができる。
(5)視覚に働かず、または、肉眼では確認することが困難であり、特定の器具を使用しなければ、形状、模様、色彩を識別することができない製品は保護を受けることができない。例えば、紫外線ランプで照射しなければ、模様が現れない製品等が該当する。
(6)保護を求める製品の外観設計が、当該製品そのものの通常形態でない場合、保護を受けることができない。例えばハンカチを折りたたみ動物の形にした外観設計は保護を受けることができない。
(7)自然物そのものの形状、模様、色彩を主体とするデザインは保護適格性を有さない。自然物そのものの他、自然物を疑似したデザインも保護を受けることができない。
(8)単なる美術、書道、撮影等のカテゴリーに属する作品。
(9)製品の属する分野でありふれた幾何形状及び模様からなる意匠。
(10)文字、数字の発音、字義は保護を受けることができない。
(11)製品に通電後表示される模様も保護を受けることができない。例えば、デジタル時計のディスプレイに表示される模様、携帯電話のディスプレイに表示される模様、ソフトウェアのインターフェース等は保護を受けることができない。
その他、平面印刷品の模様、色彩または両者の組合せについて主に標識として用いられるデザインは専利法第25条第1項(6)の規定により保護を受けることができない。
当該規定は第3次法改正時に追加されたものである。瓶のラベルまたは平面包装袋等、主に標識の作用を有する平面模様は商標権及び著作権との間の重複・抵触を増大させることから、保護対象外としたものである。
コラム
中国から日本、米国、欧州、韓国への特許出願数が増加
日本国特許庁、米国特許商標庁、欧州特許庁及び韓国特許庁は、中国から日本、米国、欧州及び韓国へ本年度上半期に出願された件数を発表した。表1は中国から各国への出願状況を示す表である。表2は2010年度における各国の出願受理件数の増減を示す表である[2]。
出願国 |
件数 |
前年比 |
中国→日本 |
530 |
+4.5% |
中国→米国 |
3025 |
+2.9% |
中国→欧州 |
1014 |
-0.9% |
中国→韓国 |
287 |
+11.7% |
表1 中国から各国への出願状況
国 |
前年比 |
日本 |
-2.0% |
米国 |
-2.2% |
欧州 |
-2.1% |
韓国 |
+0.6% |
中国 |
+24.3% |
表2 2010年度における各国の出願受理件数の増減
表1及び表2から明らかなように、各国での出願件数が減少する中、中国企業が各国で積極的に権利化を進めていることが分かる。中国企業が、中国版新幹線に関する技術を米国に申請したとする報道があったように、今後は諸外国での中国企業による特許にも注意する必要があるといえる。
表3は諸外国から中国へ本年度上半期に出願された件数を示す表である。
出願国 |
件数 |
前年比 |
日本→中国 |
1万8840 |
+13.6% |
米国→中国 |
1万3725 |
+7.2% |
欧州→中国 |
1万4940 |
+4.7% |
韓国→中国 |
3595 |
+10.6% |
表3 諸外国から中国へ本年度上半期に出願された件数
表3に示すとおり、日本を含めた諸外国企業も中国への出願を増加させている。特に日本及び韓国から中国への出願の伸びが著しい。
(次号に続く)
以上
[1] 審査指南第1部分第3章7
[2] 中国国家知識産権局HP
http://www.sipo.gov.cn/yw/2011/201108/t20110826_617767.html
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