しかし、これにはいくつかのルールがあります。
まず、計算式の分子に当たる、計算の基礎にとして参入しなければならない賃金ですが、基本給を初め、原則としてすべての手当が対象とされます。
しかし、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金については除外することができます。
次に、分母に当たる1箇月の平均所定労働時間は、1年間の総労働時間を12で割って算出した時間です。
また、一般的に残業手当は、通常の給与に25%以上上乗せした「割増賃金」としなければなりませんが、これはあくまでも法定労働時間を超えてから初めて生じるものです。
したがって、就業規則などで会社が定めた所定労働時間とは必ずしもリンクはしないことになります。例えば、会社の所定労働時間が7時間であった場合、法定労働時間である8時間に達するまでの1時間については、特に割増賃金とする必要はなく、通常の給与を支払えば事足りるわけです。
こうして残業手当が計算される一方で、管理監督者、機密事務取扱者、監視・断続的労働従事者のように、労働時間自体の適用が除外され、必然的に残業時間という概念がなく残業手当の支払い義務もない労働者も労働基準法では認められています。
また、外勤営業者のように、事業場外で労働に従事するもので労働時間の算定が困難なものについては、所定労働時間働いたものとみなすことができたり、業務の進め方や時間管理などを労働者に委ねて、実際の労働時間にかかわらず労使間で締結した協定で定めた時間働いたものとみなすことができる「裁量労働制」といった手法があります。