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米国改正特許法逐条解説(第3回)
~第1回 先発明主義から先願主義へ~
河野特許事務所 2011年11月28日 執筆者:弁理士 河野 英仁
(2)非自明性に関する規定 米国特許法第103条
非自明性の判断基準も発明時から、有効出願日へと改正された。
改正前 |
改正後 |
第103 条 特許要件;自明でない主題 (a) 発明が,同一のものとしては第102 条に規定した開示又は記載がされていない場合であっても,特許を受けようとするその主題と先行技術との間の差異が,発明が行われた時点でその主題が全体として,当該主題が属する技術の分野において通常の知識を有する者にとって自明であるような差異であるときは,特許を受けることができない。特許性は,発明の行われ方によっては否定されないものとする。 |
第103 条 特許要件;自明でない主題 (a) 発明が,同一のものとしては第102 条に規定した開示又は記載がされていない場合であっても,特許を受けようとするその主題と先行技術との間の差異が,クレーム発明の有効出願日前にその主題が全体として,当該主題が属する技術の分野において通常の知識を有する者にとって自明であるような差異であるときは,特許を受けることができない。特許性は,発明の行われ方によっては否定されないものとする。 |
以上のとおり新規性、拡大先願の地位、及び非自明性に関する規定は、非常に理解しやすく、先願主義を採用する諸外国の規定と実質的に同様のものとなった。
(3)施行時期
先願主義への移行は、2011年9月16日から18ヶ月後(2013年3月16日)の有効出願日を有する全ての出願に適用される。2013年3月16日以前に優先日を有する特許出願は先発明主義に基づく旧法が適用される。
3.ベストモード要件の緩和
(1)ベストモード要件違反と無効理由
ベストモード要件とは、明細書の実施例には発明者が最善と考える実施の形態を記載しなければならないとする明細書の記載要件の一つである。米国特許法第112条パラグラフ1にベストモード要件が規定されている。
米国特許法第112条パラグラフ1
明細書は,その発明の属する技術分野又はその発明と非常に近い関係にある技術分野において知識を有する者がその発明を製造し,使用することができるような完全,明瞭,簡潔かつ正確な用語によって,発明並びにその発明を製造し,使用する手法及び方法を記載した説明を含んでいなければならず,また,発明者が考える発明実施のベストモードを記載していなければならない。
ベストモード要件は審査の段階で依然として課されるが、法改正により、民事訴訟における無効の抗弁としてベストモード要件違反を主張することができなくなった。なお、付与後レビュー制度においても、申し立て理由は米国特許法第282条(2)及び(3)の理由に限定されており、同様にベストモード要件違反を主張することができない(米国特許法第321条(b)[1])。
改正前 |
改正後 |
第282 条 有効性の推定;抗弁 特許は,有効であると推定されるものとする。特許の個々のクレーム(独立,従属又は多項従属形式の何れであるかを問わない。)は,他のクレームの有効性から独立して有効であると推定されるものとする。従属又は多項従属クレームは,無効なクレームに従属している場合であっても有効であると推定されるものとする。前文に拘らず,組成物に関するクレームが無効と判定され,かつ,当該クレームが第103 条(b)(1)に基づく非自明性の決定の根拠であった場合は,それに係る方法は,第103 条(b)(1)のみを根拠として非自明であるとはみなされないものとする。特許又はそれに係るクレームの無効を立証する責任は無効を主張する当事者が負うものとする。 特許の有効性又は侵害に関する訴訟においては,次に掲げる事項は抗弁であるものとし,また,申立をしなければならない。 (1) 非侵害,侵害に対する責任の不存在又は強制不能性 (2) 特許要件として第II 部に規定されている理由を基にする訴訟において,特許又は何れかのクレームの無効 (3) 第112 条又は第251 条の要件に従っていないことを理由とする訴訟において,特許又は何れかのクレームの無効
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第282 条 有効性の推定;抗弁 特許は,有効であると推定されるものとする。特許の個々のクレーム(独立,従属又は多項従属形式の何れであるかを問わない。)は,他のクレームの有効性から独立して有効であると推定されるものとする。従属又は多項従属クレームは,無効なクレームに従属している場合であっても有効であると推定されるものとする。前文に拘らず,組成物に関するクレームが無効と判定され,かつ,当該クレームが第103 条(b)(1)に基づく非自明性の決定の根拠であった場合は,それに係る方法は,第103 条(b)(1)のみを根拠として非自明であるとはみなされないものとする。特許又はそれに係るクレームの無効を立証する責任は無効を主張する当事者が負うものとする。 特許の有効性又は侵害に関する訴訟においては,次に掲げる事項は抗弁であるものとし,また,申立をしなければならない。 (1) 非侵害,侵害に対する責任の不存在又は強制不能性 (2) 特許要件として第II 部に規定されている理由を基にする訴訟において,特許又は何れかのクレームの無効 (3)以下の要件に従っていないことを理由とする訴訟において,特許又は何れかのクレームの無効 (A)米国特許法第112条の要件、ただしベストモードを開示していないことは、特許がキャンセル、無効または権利行使できないとの主張の基礎とすることはできない。または (B) 米国特許法第251条(瑕疵ある特許の再発行)の要件 |
[1] 米国特許法第321条(b) Scope- A petitioner in a post-grant review may request to cancel as unpatentable 1 or more claims of a patent on any ground that could be raised under paragraph (2) or (3) of section 282(b) (relating to invalidity of the patent or any claim).
(第4回へ続く)
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