中国におけるソフトウェア/ビジネス関連発明の保護適格性(1)(第1回) - 特許・商標・著作権全般 - 専門家プロファイル

河野 英仁
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対象:特許・商標・著作権

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中国におけるソフトウェア/ビジネス関連発明の保護適格性(1)(第1回)

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中国特許判例・審決紹介:中国におけるソフトウェア/ビジネス関連発明の保護適格性(1)(第1回)

~コンピュータ・ソフトウェア発明の保護適格性と審査~

河野特許事務所 2011年8月5日 執筆者:弁理士 河野 英仁

復審請求人 マイクロソフト公司

1.概要

 中国においては特許を受けることができない発明の一つとして、「知的活動の法則および方法」が挙げられている(専利法第25条第1項第(二)[1])。コンピュータ・ソフトウェア関連発明(以下、CS関連発明という)は中国においても発明特許による保護を受けることができるが、請求項の記載の如何によっては、「知的活動の法則および方法」に該当するとして拒絶を受けることがある。

 

 具体的には審査指南第2部分第1章および第2部分第9章に詳細が規定されており、これらの規定に従って明細書および請求項を記載する必要がある。本事件ではXML[2]ドキュメントを編集するアプリケーション上で実行される処理方法の保護適格性が問題となった。

 

 審査官は専利法第25条第1項第(二)に規定する「知的活動の法則および方法」に該当するとして拒絶査定をなした。出願人はこれを不服として復審委員会[3]に復審請求を行った。復審委員会は請求項に係る発明は全体的に見れば、必ずしも知的活動の法則と方法とはいえず,専利法第25条第1項第(二)に該当するとした審査官の判断を取り消した。

 

 保護適格性の判断は理解に困難を伴うことが多く、具体的な事例を通じて理解度を高めていくしかない。本稿では復審において審査官の判断が覆り、特許成立が認められた事例を、次回紹介するビジネス関連発明と共にシリーズで解説する。


[1]専利法第25条(特許を受けることができない発明)

 次に掲げるものに対しては、特許権を付与しない。

(1)科学的発見。

(2)知的活動の法則及び方法。

(3)疾病の診断及び治療方法。

(4)動物及び植物の品種。

(5)原子核変換の方法により得られる物質。

(6)平面印刷品の模様、色彩又は両者の組合せについて主に標識として用いられるデザイン。

 前項第(4)号の製品の生産方法に対しては、本法の規定に基づいて特許権を付与することができる。

[2] XML(Extensible Markup Language):文書やデータの意味や構造を記述するためのマークアップ言語の一つ。マークアップ言語とは、「タグ」と呼ばれる特定の文字列で地の文に情報の意味や構造、装飾などを埋め込んでいく言語のことで、XMLはユーザが独自のタグを指定できることから、マークアップ言語を作成するためのメタ言語とも言われる。

XMLにより統一的な記法を用いながら独自の意味や構造を持ったマークアップ言語を作成することができるため、ソフトウェア間の通信・情報交換に用いるデータ形式や、様々な種類のデータを保存するためのファイルフォーマットなどの定義に使われている。IT用語辞典(http://e-words.jp/)

[3]復審委員会は日本国特許庁審判部に対応し、専利法第41条に規定する復審(日本の拒絶査定不服審判に相当)及び専利法第45条に規定する無効宣告請求(日本の無効審判に相当)事件を取り扱う。

専利法第41条

 国務院特許行政部門は特許復審委員会を設置する。特許出願人が国務院特許行政部門の拒絶査定に不服があるときは、通知を受領した日から3ヶ月以内に特許復審委員会に不服審判を請求することができる。特許復審委員会は審判後に決定をして特許出願人に通知する。

専利法第45条

 国務院特許行政部門が特許権を付与することを公告した日から、いかなる機関又は組織又は個人もその特許権の付与が本法の規定に適合しないと認めたときは、特許復審委員会に当該特許権の無効を宣告するよう請求することができる。

(第2回へ続く)

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