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中沢 努
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閲覧数順 2018年12月09日更新

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放射能汚染牛乳を出荷する人間の心理

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中沢努 「<深く考える>序開き」 抜粋

放射能汚染牛乳(放射性物質で汚染された牛乳)が出荷され、市場に出回っているという話しがあります。

「基準値以内、規制値を超えていないから」というのが汚染された牛乳を出荷する側の言い分でしょう。
法治国家ですから、その意味においてはやむを得ないという見方はできます。
(これは牛乳に限らず、放射能で汚染されている可能性がある全ての食品に言えることでしょう)

では、それを実際に出荷する人間の心理はどうなっているのか?

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皆さん、倫理とは何でしょうか?
「社会で『やってはならない』とされていることをやらないこと」だと漠然と思っている人は多いと思います。

では「社会規範の通りに生きていれば倫理的か」と問われるとどうか?

倫理学の中に「慣習倫理」ということばがあります。
善悪の尺度を社会の慣習に求め「社会が正しい(正しくない)というから正しい(正しくない)」という論法で善悪を決めるという倫理のあり方です。

集団で生活するためには秩序が必要です。
秩序を守るためには世の中一般に「悪い」とされていることをやってはならないことは言うまでもありません。

その意味において、「やってはならない」と言われていることをやらないことは確かに倫理的だといってもいいと判断できます。
社会的規範を逸脱した企業を「倫理的でない」と非難しても間違いではないでしょう。

しかし、社会の規範通りに経営している企業が即倫理的な企業となるのでしょうか?
或いは、昔からよいとされているお手本通りに生活することが本当の意味で倫理的に生きることになるのでしょうか?

(中略)

デュウイ=タフツはこうも言っています。
(D)慣習的道徳と反省的道徳との区別は、知的には明瞭に区切りをつけることができる。
(E)前者は、行動の尺度と規則のありかを、祖先伝来の習慣におく。
(F)後者は、良心、理性に訴えるか、あるいは思想をふくむ何らかの原理をよりどころにする。

おや、「反省的道徳」という言葉が出てきましたね。
この“道徳”という言葉を“倫理”に置き換え、もう一度読んでみて下さい。

デュウイ=タフツはさらにこう言いました。
(G)何が正しく何が不正であるかについて既成信念が支配しているかぎり、道徳理論は生まれでることができない。
(H)なぜなら、そうした場合、反省を行ういかなる機会もめぐまれないからである。

http://profile.ne.jp/pf/pensee-tsutomu-nakazawa/c/c-46800/
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◆放射能で汚染されている牛乳を出荷する人の心理は
(A)やらずに済むのであればやりたくない。
(B)でも規制値は超えていないのだからやむを得ない。
(C)戸惑いの中で行為が現実のものとなり、既成事実化され、大丈夫だと自分で自分に思い込ませ、
(D)やがて順応していく。
ということなのかもしれません。

◆また、上の引用に沿って言うと
「規制値を超えていないから出荷する」というのは「慣習倫理的な立場」で「ことの良し悪しを判断」していることになるのかもしれません。

でも本当にそれでいいのでしょうか?

デュウイ=タフツも言っているように、倫理(道徳)には2種類の立場があります。
それを読んで、私は次のように思いました。

◆本当の倫理とは「慣習倫理」よりも「反省倫理」にある。
◆本当の倫理は「他人に頼らない、すなわち、既存の倫理を『本当にそれでいいのだろうか』と前向きに疑い、自分で納得のいく答えを求めていく」という精神的態度から出てくる。

汚染牛乳を安全な牛乳に混入したり、それを出荷している現場を見たわけではないので真偽のほどは分かりません。
しかし、過去の食品製造/販売にまつわる法令違反(コンプライアンス違反)を考えれば、このようなことが実際に起こっても不思議はありません。

今の日本に欠けているのは「自分の良心や思想に従った自律的な生き方から出てくる反省的な倫理(或いは道徳)」だと私は考えます。

◆放射性物質で汚染された牛乳を出荷している人がいたとしたら、伝えたい。
 「本当にそれでいいのですか?」
◆汚染食品が市場に出回っていることを知っている人がいたとしたら、伝えたい。
 「本当にそれでいいのですか?」

(無断転載や無断複製禁止)
 中沢努  「人間としてのコンプライアンス原論」の内容をコラム用に書き換え

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