(注)内言=無音の心の中の言葉、エレンコス=反駁的な対話や問答
突然ですが、私たちの日常って「錯覚だらけである」ってこと、知っていますか?
あなたが「知っている」とか「分かっている」と思っていることは、実は「錯覚だ」ってこと知っていますか?
「下らない話しに付き合っている暇はない」などと思わないで下さい。
私は真剣かつ大真面目です。
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本当はあるのに、それが「見えない」ということがあります。
本来であれば「見える」ものがなぜ「見えなくなる」のか?
見えなくしている「何か」があるからです。
さて、その「何か」って何でしょう?
フランシス・ベーコンという哲学者は、この犯人を「イドラ」という名前で呼びました。
イドラとは偶像のことです。
「人間の知性をすでにとらえてしまって、そこにふかく根をおろしているイドラと誤った概念は、ただ、人びとの精神をとりかこんで、真理がはいってくることをむずかしくしているだけではなく、真理がはいってくることを許され認められるようになったのちも、人びとがあらかじめ用心して、できるだけ、それらのものに対して身を守らないかぎり、それらは、いざ、学問を革新しようとすると、ふたたびあらわれてじゃまをするであろう。
人間の精神をとりかこんでいるイドラには四種類ある。(説明の便宜のために)名をつけて、わたくしは、第一のものを種族のイドラ、第二のものを洞窟のイドラ、第三のものを市場のイドラ、第四のものを劇場のイドラとよぶことにした。」(F・ベーコン「ノヴム・オルガヌム」)
(出典)http://profile.ne.jp/pf/pensee-tsutomu-nakazawa/c/c-46799/
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ちょっと難しいですか?
では解説しましょう。
社会の様々なしがらみの中で生きざるを得ない私たちは、それを引きずり、時として歪んだものの見方をしてしまいます。
しがらみで変形してしまった認識・解釈を真実と錯覚してしまうわけです。
そこでベーコンは私たちの認識や解釈を歪める「先入観」や「心の構え」を4つのイドラとして示したのです。
1.種族のイドラ
・・・人類共通に見られる感覚による錯覚
2.洞窟のイドラ
・・・個人の好みや習慣、固有の経験に引きずられるなどから生まれる誤謬
3.市場のイドラ
・・・言葉が思考に及ぼす影響から生じる誤り
4.劇場のイドラ
・・・権威や伝統、思想家たちの学説などを鵜呑みにすることから生ずる思い違い
どれも私たちの日常で普通に見られますね。
えっ、
「能書きはいい、具体的に言ってみろ」ですって?
では、やってみましょう。
◆「いつか大地震がくると知っているのに、普段はそれを忘れ、用心せずに過ごしている」私たち。
◆「専門家の肩書きを見せられると『変だぞ?』と思っても、とりあえず信じてしまう」私たち。
◆「自分にとってあたりまえなことだからといって『他人にも(それが)普通/自然である」と都合よく解釈している」私たち。
◆「人気番組で健康に良いと紹介された食品をその真偽や効果の程を確認せず思わず買ってしまう」私たち。
・・・ほらね。
日常の中であなたが「感じて」いたり「思って」いたりすることは「大いなる錯覚」であることが多いのです。
内言によるエレンコス講座は、いわゆる「読み物」ではありません。
これは「思考の練習帳」です。
「自分に」問いかけ、「自分で」考えて下さい。
【ワーク1】
日常を振り返り、あなたの「種族のイドラ」を見つけて下さい。
【ワーク2】
日常を振り返り、あなたの「洞窟のイドラ」を見つけて下さい。
【ワーク3】
日常を振り返り、あなたの「市場のイドラ」を見つけて下さい。
【ワーク4】
日常を振り返り、あなたの「劇場のイドラ」を見つけて下さい。
【ワーク5】
これまでのあなたは「本当」を見て生きてきましたか?その逆ですか?
そしてその事実をあなたはどう考えますか?
(中沢努「<深く考える>序開き」から抜粋)
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