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対象:特許・商標・著作権
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米国特許判例紹介:ソフトウェア特許に対する権利侵害(第6回)
~ソフトウェアモジュールがロックされている場合に侵害が成立するか~
河野特許事務所 2011年3月29日 執筆者:弁理士 河野 英仁
Finjan, Inc.,
Plaintiff-Cross Appellant,
v.
Secure Computing Corporation, et al.,
Defendants Appellants.
争点2:現実の実施がなければ方法クレームの直接侵害は成立しない
CAFCは米国内において事前スキャンモジュールを動作させた事実が存在しないことから、方法クレームに対する直接侵害は成立しないと判断した。
方法クレームについての直接侵害は、人がクレームされた方法の全てのステップを実行した場合に成立する[1]。原告は技術者がテストのために被告製品を動作させていることから、直接侵害が成立すると主張した。
これに対しCAFCは、当該テストは一度だけドイツで行われたものであり、米国特許法第271条(a)にいう直接侵害は成立しないと判断した。その理由として米国特許法第271条(a)は「特許発明を合衆国において・・生産,使用」と規定しており、ドイツでのテスト行為では直接侵害が成立しないからである。
5.結論
CAFCは、システムクレーム及び記録媒体クレームについて直接侵害が成立するとした地裁の判断を支持した。その一方で、方法クレームについても直接侵害が成立するとした地裁の判断を無効とした。
6.コメント
被告製品が侵害モードと非侵害モードとを有する場合、方法クレームに関しては侵害モードでの実際の使用・動作があった場合にのみ、直接侵害が成立する。ソフトウェア関連発明についても同様であり、ロックの解除により非侵害モードから侵害モードとなるソフトウェア製品を販売したからといって方法クレームに対する直接侵害は成立しない。
なお、ドイツでテストを行った被告製品を米国に輸入する行為に対しては、米国特許法第271条(g)[2]の問題が発生するが、本事件において原告は同条(g)に基づいた主張を行わなかった。
一方、システムクレーム、装置クレーム及び記録媒体クレームについては、クレームされた発明の内容によって、結論が相違する。ACCO事件で示されたように、侵害モードの構成とするには特殊な配置、操作、変更等が必要とされる場合、たとえ被告製品が侵害モードを有する場合でも直接侵害は成立しない。これに対して本事件及びFantasy事件の如く、侵害モードに関連するコード自体を変更する必要はなく、単にロックの解除またはオプション設定により非侵害モードから侵害モードへ変更可能である場合、直接侵害が成立する。
判決 2010年11月4日
以上
【関連事項】
判決の全文は連邦巡回控訴裁判所のホームページから閲覧することができる[PDFファイル]。
http://www.cafc.uscourts.gov/images/stories/opinions-orders/09-1576.pdf
[1] Lucent Techs. v. Gateway, Inc., 580 F.3d 1301, 1317 (Fed. Cir. 2009).
[2] 米国特許法第271条(g)の規定は以下のとおり。
何人かが権限を有することなく,合衆国において特許を受けている方法によって製造された製品を合衆国に輸入する又は合衆国において販売の申出,販売若しくは使用した場合において,その製品に係る輸入,販売の申出,販売又は使用が当該方法特許の存続期間中に生じていたときは,当該人は侵害者としての責めを負うものとする。
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