親の所有地に子世帯が新築するケースがよくあります。このようなケースの場合、「ただ単に地代を払えば借地できる」と思っている方が多くいらっしゃいますが、実は相続税や贈与税の面ではいくつかの注意点がありますから簡単にご紹介します。
使用貸借と賃貸借の違い ■使用貸借 使用貸借とは、民法上は無償で使用収益する契約のことをいいますが、税務上では、固定資産税相当額以下の金銭の授受しかない場合をいいます。一方、地代の授受がない場合でも権利金や地代に変わる金銭の授受がある場合には、使用貸借に該当しないとされています。 ■賃貸借 ここでいう賃貸借とは土地の借地権に関わるものとなり、権利金や地代の授受が発生するものとなります。土地に一定の制限を加える契約となりますから、その対価として金銭の授受が必須となるわけです。 親子間でよくある使用貸借 ここでは「父親の所有地に建物を新築するケース」でご説明します。 このような場合、一定の賃料を支払わないと地代相当分が贈与になると思わっている方がおられますが、税務上は、無償もしくは固定資産税相当額以内の支払いであれば贈与を問われることはほとんどありません。 その代り借地権のように土地を継続的に利用する強い権利はなく、土地所有者や相続人から立ち退きを求められた場合は、即時返却する必要がある弱い立場になります。 また、相続時には借地としての評価ではなく、利用制限のない更地として評価されることも注意点のひとつで、相続税の節税対策には利用できなものといえます。 賃貸借にする場合の権利金と地代 もし、賃貸借契約を結び借地権を取得する場合は、権利金の授受の慣習がある地域であれば権利金、そして地代の支払いが必要となります。ちなみに、権利金の金額は下記の計算式で求めることができます。 例えば ・土地の更地価額(時価)2850万円 ・土地の自用地価格(相続税評価額)2000万円 ・自用地価格の過去3年間の平均額 1900万円 ・借地権割合 60% ・実際に払う地代 72万円 ・通常の地代 48万円(計算式は省略) ・相当の地代 114万円 ※権利金授受の慣習がある地域とする。 そこで地代のみを支払い、上記の権利金の授受がなかった場合は、この地代相当額(764万円)が地主から借り主に贈与があったものとして贈与税が課されることになります。税法上は、これを認定課税といいます。 単に、賃貸借契約を結び適切と思われる地代を支払っているだけでは、認定課税の対象となる場合がありますので注意が必要です。 相当の地代の支払いによる認定課税の免除 一方、認定課税を逃れる方法として相当の地代を支払う方法があります。 相当の地代の計算式は、自用地価格(相続税評価額)の過去3年間の平均額×6%となり高額なものですです。上記の事例では114万円となっていますので、月々に換算すると9万5,000円の支払が必要となります。 この方法は上記のように高額な地代になることが多く、個人間の賃貸借ではほとんど利用価値がないといえます。 ※上記の計算は、個人が認定課税される場合の計算方法です。法人が認定課税される場合は相続税評価額の平均値ではなく、時価により計算することになりますからより高額な認定課税額になります。 まとめ 個人間では、法人税の節税を目的とするような積極的な要素が少ないことから、権利金の授受や認定課税の心配がない使用貸借を選択することが多くなるという訳です。 以上 |
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