設計者・施工者が建物を購入した第三者に対する不法行為の成否 - 欠陥工事・建築紛争 - 専門家プロファイル

村田 英幸
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東京都
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設計者・施工者が建物を購入した第三者に対する不法行為の成否

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設計者・施工者が建物を購入した第三者に対する不法行為の成否

 

 最判平成15年11月14日・民集 第57101561

 1 建築士は,その業務を行うに当たり,建築物を購入しようとする者に対する関係において,建築士法3条から3条の3まで及び建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2の各規定等による規制の潜脱を容易にする行為等,その規制の実効性を失わせるような行為をしてはならない法的義務があり,故意又は過失によりこれに違反する行為をした場合には,その行為により損害を被った建築物の購入者に対し,不法行為に基づく賠償責任を負う。
2 一級建築士又は二級建築士による設計及び工事監理が必要とされる建物の建築につき一級建築士が建築確認申請手続を代行した場合において,建築主との間で工事監理契約が締結されておらず,将来締結されるか否かも未定であるにもかかわらず,当該一級建築士が,建築主の求めに応じて建築確認申請書に自己が工事監理を行う旨の実体に沿わない記載をし,工事監理を行わないことが明確になった段階でも,建築主に工事監理者の変更の届出をさせる等の適切な措置を執らずに放置したこと,そのため,実質上,工事監理者がいない状態で建築された当該建物が重大な瑕疵のある建築物となったことなど判示の事情の下においては,当該一級建築士の上記行為は,建築士法3条の2及び建築基準法(平成10年法律第100号による改正前のもの)5条の2の各規定等による規制の実効性を失わせる行為をしたものとして当該建物を購入した者に対する不法行為となる。

 

最判 平成1976日・民集第6151769頁(第1次上告審)、ジュリスト平成19年度重要判例解説90頁

事案は、瑕疵ある建物を、建物の注文者から買い受けたXが、設計者、施工者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をした。なお、Xは、第1審係属中に、第三者に転売されている。

[判旨]

建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,これを怠ったために建築された建物に上記安全性を損なう瑕疵があり,それにより居住者等の生命,身体又は財産が侵害された場合には,設計者等は,不法行為の成立を主張する者が上記瑕疵の存在を知りながらこれを前提として当該建物を買い受けていたなど特段の事情がない限り,これによって生じた損害について不法行為による賠償責任を負う。建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、不法行為責任が成立すると解すべきであって、違法性が強度である場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由はない。

[解説]

建物の建築に携わる設計者,施工者及び工事監理者は,建物の建築に当たり,契約関係にない居住者を含む建物利用者,隣人,通行人等に対する関係でも,当該建物に建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い、不法行為責任を負うとの見解を明言した初めての最高裁判決である。

また、従前の下級審裁判例でみられた違法性が強度である場合に限って不法行為責任を負うことが有り得るとの見解を否定し、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には、不法行為責任が成立すると解すべきであって、違法性が強度である場合に限って不法行為責任が認められると解すべき理由はないと明言した初めての最高裁判決である。

 

 最判平成23・7・21判時2129号36頁,判タ1357号81頁,ジュリスト平成23年度重要判解84頁、裁判集民事 第237293頁(差し戻し後第2次上告審)

[判旨]

 最高裁平成17年(受)第702号同19年7月6日第二小法廷判決・民集61巻5号1769頁(上記第1次上告審)にいう「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは,居住者等の生命,身体又は財産を危険にさらすような瑕疵をいい,建物の瑕疵が,居住者等の生命,身体又は財産に対する現実的な危険をもたらしている場合に限らず,当該瑕疵の性質に鑑み,これを放置すると、いずれは居住者等の生命,身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には,当該瑕疵は,建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当し、瑕疵修補相当額の損害賠償を請求できる。

瑕疵修補費用相当額の補填を受けたなど特段の事情がない限り(Xが瑕疵を知っているから転売代金の決定に際して瑕疵修補費用相当額を差し引いて転売するのが通常であるから。)、設計者・施工者に損害賠償請求をしうるのは、建物の転得者ではなく、Xである。

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