梅雨とはいえ7月に入り、日増しに暑さが厳しくなっております。
薄着をし、汗をかき、毎日風呂に入りと暑さ対策を怠らない人間ですらげんなりする暑さ、ほとんど汗をかくことができないイヌにとってはさぞかし辛いシーズンだろうと思います。
こんな時期夜間救急診療でよくやってくるのが熱中症。
熱中症というと、体育の時間に暑さに負け、木陰で横になって涼んでいる小学生を思い起こしますが、ワンちゃんでは結構命取り。
イヌにとっては本当に死に直結しうる病気なのです。
現に、熱中症が原因で深夜に担ぎ込まれてきて、命を落としていった子を何度も見てきました。
先に書いた通りイヌは汗腺が未発達で、人間のように全身で汗をかき、これによって熱を放散するということはできません。
一度上がった体温を下げる方法は水をたくさん飲むか、呼吸を一生懸命して呼気から熱を放散するかです。
ですので、大して暑くない環境でも、水が自由に飲めない環境にいるとすぐに熱中症になってしまいます。
またパグやフレンチブルドッグなどの鼻が短く鼻の孔が狭い犬種にとっては、呼吸で熱を逃がすという行為も苦手ですので、人間にとってはたいしたことのない温度でも容易に熱中症になってしまいます。
ハスキーやシェルティーなどの寒い国原産の長毛種や肥満のイヌも非常に熱中症になりやすいです。
そのほか、高齢のイヌ、湿度が高いとき、激しい運動をしたとき、過度の興奮をしたとき(シャンプーやトリミング中などでも)も熱中症は起こりやすくなります。
うちの子はちょっとぽっちゃりしている程度で、そんなに肥満じゃ・・・と思われるかもしれませんが、たとえば本来6kgがベスト体重のダックスフンドが、ぽっちゃり気味で7kgになってしまったとします。
これは人間で言うと体重60kgの人が10kgのダウンジャケットを着て、汗もかけずに夏の盛りを過ごすということであり、思いのほか辛いはずです。
太った高齢のパグが車の中で水も飲めずに10分も放置されて、となるともうこれは熱中症にならないほうが不思議なシチュエーションです。
ワンちゃんとともに生活、行動する際は、ご自身だけでなく、ワンちゃんにとっても快適な環境であるかをよく考えなければいけません。
熱中症になったときの対応を考えるよりも、まずは熱中症にならない環境づくりを。
当たり前かもしれませんが、人間同様予防が大事ということかもしれません。
と はいえ、熱中症になったときの対応も、知っておいて損はありませんので、次回は
「ひょっとして、うちのワンちゃんが熱中症になってしまったかも!?」という時の対応を書かせていただきます。
このコラムの執筆専門家
- 沖田 将人
- (富山県 / 獣医)
- アレス動物医療センター センター長
地域に密着したワンランク上のホームドクターを
アレス(Alles)とはドイツ語で「あらゆること」を意味します。インフォームドコンセントの充実、年中無休、CTスキャナ導入など動物たちの幸せにつながることなら、飼い主様のあらゆる要望にお応えしたい。そんな願いを込めて診療に取り組んでいます。
「犬の病気」のコラム
熱中症の対処法(2010/08/09 12:08)
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