財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターが発表した、2008年度までの統計にもとづく「相談統計年報・2009」を、すこし時間があったので読んでいました。
相談内容には 瑕疵担保履行法 に関する制度に対する質問や相談もあれば、不具合に関する相談などもあり、対応している範囲は多岐にわたっていることがわかります。
その中で、不具合の内容について見てみますと、多いものとしては「雨漏れ」「ひび割れ」といった事象です。
10年保証が定着してからも「雨漏れ」が相談項目にあがるというのは、実際の現場では施工会社に対応してもらえないという実状が浮かんできます。
引き渡し後10年以内は、施工会社として不具合修補の義務があり、第三者機関である 紛争処理支援センター に相談することはあまり無いだろうと思っていましたが、実態はそうでは無いようです。
では、何故 紛争処理支援センター に相談することになってしまうのかを考えてみたいと思います。
ハウスメーカーや住宅会社にありがちなのが『様子をみてください』という対応です。
そして、いつのまにかアフター担当が忘れてしまって、放ったらかしになってしまう・・・・・こんなことがあるのではと思います。
建て主さんとしては『きちんと対応してくれる』ものと思っていますので、いつまでたっても不具合が解消しないと、だんだんと不信感が強くなってきます。
気になって、担当者に電話をしても外出中で連絡がとれません。
『電話を下さい』と伝言してもなしのつぶてです。
やむなく「紛争処理支援センター」に相談をしてみる・・・・・推測ですが、こんな事例もたぶんあるのだろうと思います。
建て主さんとしては失望が大きくなります。
『信頼して契約したのに・・・・・』
ところが、立場を変えて住宅会社の担当者の言い分を考えてみます。
不具合の事象の中には、原因の特定ができないものがあります。
『風が吹くと変な音がする』とか『洗面化粧台や浴室の排水口から臭いがする』などは、実際にあった例ですが・・・・・
たびたび起こることではなくごく稀にあったり、原因と考えられるものを除去して様子をみることが必要な事象もあります。
また、生活に大きな支障がなく緊急でないようなものもあったりして、アフター部門の担当者としては、たくさん抱えている案件のうち、緊急性のあるものや重要度が高いものを優先しがちです。
そのため、担当者にとって『優先度が低い案件』は、時には忘れてしまったりすることもあります。
建て主さんが頼りにするのは、ひとりの担当者ですが、担当者にとっては『あるお客さんは、たくさんいるお客さんのうちの一人』でしかないという意識のギャップがあります。
そのギャップが『放っておかれた』という精神的なクレームに発展していきます。
では、引渡しを受けた建て主さんは、どのようにするとアフターに不満のない状態を作ることができるのでしょう?
キーワードは
『アフター担当者との人間関係』です。
契約に至った経緯をふり返ってみると、営業担当者との信頼関係が大きく影響していることがよく言われます。
『この担当者なら安心だ』というものですが、アフター担当者とも同様の人間関係を作ってみてはと思います。
担当者が『あの建て主さんのところへいくと、いいことがあったりして、訪問するのが楽しみだ』と思うような関係です。
逆に『あの建て主さんのところだけは行きたくない』というケースを考えてみると、その違いはかなり大きいものだと思います。
担当者との人間関係がしっかり出来ているのに、さっぱりアフターの案件は処理されない!
こんな場合は、会社そのものの体制とか体質の問題です。
そんな事情でトラブルが解決しないようであれば、「紛争処理支援センター」に相談をするのがベターなのですが、ハウスメーカーなどに問題が無ければ、担当者との人間関係によって解決されることが多いものです。
引渡しを受けてしばらくたち、トラブルが現実におきている場合には、人間関係の修復といっても難しいものがありますが、これから引き渡しを受ける建て主さんには・・・・・こんな考え方もあります。是非、参考にしてほしいと思います。
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